第11話 エスポワールの戦い3

文字数 3,158文字

 白の大地に魔界の全軍が到着。
 ここで隊を三つに分けた。
 「サタン、ベルゼブブ頼んだぞ。お前達の働きにこの一戦の勝敗が、かかっている。他の魔王と共に天軍をひきつけておいてくれ」
 「私は大丈夫よぅ。そっちはいいのかしら、ベルゼブブ」
 「当たり前だ。天界の奴らにルシファー様のジャマはさせん」
 「頼もしいな。・・・それでは行こう」
 三方向から進行開始。
 ルシファー、アズリエルと一緒に行動。天軍に気づかれないように、迂回して天界を目指した。ルシファーの背中にチョコンと座る。

 ― ラファエル率いる天軍八千。
 当初、出陣した時には七千だったが、ファヌエルの敗残兵をくわえていた。
 白の大地の中央。そこに陣営をかまえた。天界へは絶対に通さないと意思が陣営にあらわれていた。背水の陣。自ら、退路をたった。その上でファヌエルにもう一度、汚名返上のチャンスを与えた。

 「本来なら、敵前逃亡の罪に問われるが、次でオテロを捕らえれば見なかったことにしてあげるよ」
 「はっ、ありがとうございます。ラファエル様。次こそはオテロを捕らえてまいります。行きますよ。エスペランサ」
 「まて、避雷針と水の精霊達の用意はできているのか?」
 「もちろんです。同じ手はくらいません」
 「そうか。ならいいよ」
 「失礼します」
 一礼するとエスポワールめがけ、飛び立った。エスペランサ達は避雷針をもち、水の精霊達はその後を追いかけた。
 静かに第二次エスポワールの戦いが開戦した。

 その頃、エスポワールには物資が届けられていた。その護衛に景光、雷葉、ベルーガ、ノイレをスー商会は派遣してくれた。
 「なぁ、クロリス。ここにいれば強いヤツと戦えるのか?」
 ノイレは強いヤツと戦えないなら返るとクロリスに言った。

 ノーブルホーンという青角をもつ武竜娘。自分より強い者は、なかなか現れないのだろう。強い者との戦いに飢えていた。ノーブルホーンを青く光らせるほどの戦いを望んで、ここにやってきた。
 「うーん、困ったな。どうしよう?」
 クロリスはジェンイーに相談した。
 「この戦いでお互いが生き残ったら、俺が相手をしてやろう。それならいいだろう、ノイレどうだ?」
 「オジサンは強そうだ。ちゃっちゃとこの戦いを終わらせよう。今から楽しみだな」
 ワクワク感がおさえられないノイレ。ノーブルホーンが青く光る。

 「みんな、聞いてくれ。次はおそらく相手は四大天使だ。この前のようには、いかないだろう。自分の身を第一に考えて行動してくれ」
 ざわざわと声。
 「ジェンイーよ、わらわ達は最期の一兵になってもこの街を守るつもりだ。士気をさげるようなことを言うな!」
 「陛下のいう通りだぞ、ジェンイー。オテロが帰ってくるまで、ここは守り抜くつもりだ」
 アンクイーネとポロイはジェンイーに怒った。
 「お前達・・・」
 お、おっ、おっと大きい泣き声がする。
 「蟻のくせに泣かせるわい。ワシも戦うぞ。老兵じゃが、まだまだ若い者には負けてられん。ジェンイー、お前はなんとしても生き延びろ。ワシと蟻達の骨をひろってくれ」
 ヒルデブラントはジェンイーの肩を叩いた。
 「・・・困った奴らだ。どうなってもしらんからな。俺を恨むなよ。・・・では作戦を伝える。おそらく敵は水の壁を作りながら進軍するだろう。俺はブリッツドラゴンを召喚して雷撃を放つ。敵はその前に避雷針を設置するだろう。それを破壊しなければならない。当然、敵は全力で阻止するだろうな。そこでだ。景光、雷葉、ベルーガの三人はそこを破壊し、破壊できたらこの街へ撤収してくれ。急がないと感電する。頼んだぞ」
 城壁の上から空をみあげ、天軍を待つジェンイー。

 予想通り、水の壁を張り巡らしたファヌエルが現れた。
 「この前のようにはいきませんよ」
 「学習能力はあるようだな。だが、それでふせいだつもりか? 現れろ、ブリッツドラゴン」
 ジェンイーは駒を投げた。大砲の横にブリッツドラゴン。
 「それもお見通しです。エスペランサ達、今です」
 ドスンと避雷針を設置し、それを複数の天使と一緒に守っていた。
 「今だ」
 「今です」
 お互いに戦術を繰り出す。ジェンイーは作戦通り、景光達を走らせた。ファヌエルは盾をもつ天使を自分の前に配置した。蟻の兵士はバリスタで矢を飛ばす。だが、盾をもつ天使に通用しなかった。盾で弾かれる。魔法で強化されている。

 この天使とファヌエルの数回にわたる突撃により、バリスタは破壊。蟻の兵士も死傷者が突撃の度に増える。それでもアンクイーネとポロイは指揮をとりつづけた。負傷者を城壁の下にさがらせ、サルースの治療を受けさせていた。

 景光達は、それぞれ避雷針の前にいた。
 「我が名は景光。お前達に恨みはない、そこをどけ。さもないと斬る」
 「なんだと。やれるもんならやってみろ。この数を倒せるならな」
 「・・・やはり、言ってもムダか。覚悟しろ!」
 避雷針めがけて突進。刀を抜刀。刀が光ると同時に避雷針が切断。目の前の天使も胴体と下半身が分かれて地面に倒れていた。
 「バカな。お前はいったい?」
 そう話す天使は次の瞬間、その場で命を失なった。景光はその場にいた天使を一瞬で片づけ、街へ走った。
 「申し訳ありません。ファヌエル様」
 エスペランサは息をひきとった。

 ベルーガの前には盾をかまえる天使。
 「そこをどけ。ジャマだ」
 「ここは絶対に守り抜く」
 ベルーガは盾ごと天使を切り裂いた。
 「なんだと、まずい。一斉にかかれ」
 ベルーガをめがけて天使が飛び込む。ベルーガは剣を振り、一回転。倒れる天使。ふきだす血しぶき。大地を紅くそめる。その場の天使は怯えて動かない。戦意を失くしていた。避雷針を切断して街へ走った。

 雷葉は薙刀を一閃。天使ごと避雷針を切断。すでに水をあびている天使は雷葉の敵では無かった。斬られる前に意識は無かっただろう。その場は赤い大地と化した。急いで街へ向かった。

 エスポワールが陥落するのも時間の問題かと思われた。城壁のバリスタは破壊されて、矢を射つことができない。かろうじてジェンイーが城壁の上で斬撃を放ち、天軍と戦っていた。
 「しぶといですね。敵ながら天晴れです。しかし、これで終わりです。おいきなさい」
 ファヌエルの号令で天使が一斉に襲いかかる。

 その時、緑色の流星が天使達をつらぬいていった。その流星は弧をえがくように空を舞い、城壁の上に着地。
 「来てくれたか、エルツドラッヘ」
 「なんとか間に合ったようだね。久しぶり、ジェンイー。僕達がきたからには天軍には好き勝手なことはさせないよ。後は任せてよ。いくよ、忍竜」
 「やれやれ、骨がおれるのう。仕方がない、やるか。エルツドラッヘ。ジェンイーよ、援護してくれ」
 「あぁ、わかった」
 「いくぞ、天軍。仲間を傷つけた分をキッチリ精算してやる。奥義・水竜の舞い」
 忍竜の口から水の竜が勢いよく飛び出す。それは渦をまき、水の竜巻となる。速度をあげ、天使達をのみ込んだ。この竜巻で水の壁は消えた。溺れる天使達。

 その隙に景光達が帰ってきた。
 「今だ。ブリッツドラゴン。雷撃を喰らわせろ!」
 口と上空からの雷撃。さきほどの竜巻で濡れていない天使はいなかった。次々と感電する天使。形勢逆転かと思われた。

 しかし、そうはいかなかった。ラファエルが軍勢を率いて現れた。
 「やはり、ファヌエルでは勝てなかったか。情けない」
 四大天使が現れたことにより、天軍の士気があがる。
 次々と天使が襲いかかろうとしていた。
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登場人物紹介

白猫のデズデモナ。十六夜家の飼い猫。

特異点であるデスデーモナの魂が宿る。

月の部屋で普段は過ごしている。

黒猫のオテロ。野良猫達から「将軍」と恐れられている。現在、富士見家の飼い猫。特異点であるオセロの魂を宿す。

灰色のヤーゴ。土門に拾われる。

特異点であるイヤーゴの魂を宿す。

デスデーモナとオセロを恨んでいる。

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