第15話 最凶の怪物テュポーン
文字数 4,213文字
地下から現れた怪物は、まだ封印の効果が切れていなかったのだろか? それとも未成熟なのか? ギリシャ神話に出てくるテュポーンより、小さい姿。その姿は上半身が人間、下半身は蛇。とぐろを巻いている。肩には百の蛇の頭が動いていた。
「今のうちに倒すか、封印するんだ。そうでなければ、この世界が終わるぞ」
ルシファーは誰よりも速くこの怪物に攻撃をくりだした。
「くらえ、ネオ・ミアズマ・ゴッデス」
生命力吸収・攻撃力低下・魔法特殊ダメージを一度に、くりだした。
デュポーンはグオォォと悲鳴に似た声を発した。
「フレア・ディヴィニティ・クリュートス」
ミカエルが続けて攻撃。神々しい黄金炎が襲いかかる。テュポーンは怒りを露にして、目から炎を辺りにまき散らした。それにより、神殿は溶解。
(うかつに近づけないな)
この怪物と戦えるのはこの兄妹だけと思えた。その時、竜の軍勢が現れた。
「オテロ、待たせたな」
一体の赤い竜が私に話しかけてきた。
(まさか・・・)
「君はアルンなのか?」
「そうだ。よくわかったな」
「その声とその石だよ。ラピスラズリ」
首もとに光る石。青い色の中で、黄鉄鉱がまるで夜空に輝く星のように彩られている。以前、私がプレゼントした石。
「その姿が本当のアルンなんだね」
「あぁ、そうだ。オテロ、一緒に戦うぞ、背中に乗れ」
「うん。ありがとう」
背中に飛び乗るとアルンは上昇した。
「あれはなんだ」
「テュポーンと言う怪物だよ」
「あんな怪物がこの世界にいたとは・・・」
「まだ、封印が解けてなくて、この状態だからね。今のうちになんとかしなくてはいけないよ」
上空からテュポーンを眺めていた。ヤツは目から炎を放ち、辺りを溶解。その中をゆっくりと移動していた。
「オテロ、弱っている今のうちにヤツを叩くぞ。私に続け」
ファイアドレイクの背中に乗った師匠が横にきた。
「いやいや、姉さん。無茶をいわないでください。あんな怪物に向かっていけなんて俺にはムリですよ」
(ファイアドレイクが変だ)
弱気なファイアドレイクの姿を初めて見た。いつも一番最初に相手に向かっていくハズなのに・・・。
「強者は強者を知る」と言うことだろう。それだけテュポーンが想像以上に強いということが分かる。私は鳥肌が立った。
「何もお前に戦えとは、言ってないだろう。私をヤツの側に連れて行くだけでいいんだ。ヤツは私が倒す。たぶん、『この日のために修行してきた』と言えるのだからな。この絶望的な状況をひっくり返してやる。頼んだぞ」
ファイアドレイクの首に口づけをした。
ウオォォと叫び声。いつもの興奮したファイアドレイクに戻った。
「姉さん。いくぜ。そのかわり、俺が亡くなったら骨を拾ってくれよ」
「あぁ、拾ってやる。丁重にまつってやるさ。だから、気にせず突っ込め」
「私達も続こう、アルン」
「あぁ、オテロの骨は私が拾ってやるさ。いくぞ」
二体の竜は的を絞らせないように入れ替わりながら、目から放たれる炎をかわして近づいた。
「いくぞ、オテロ。カムイ無双流・震源」
「はい、師匠。カムイ無双流・砕拳」
私は頭を、師匠は胴体をそれぞれ攻撃。一撃離脱。それぞれの部位を蹴り、ジャンプした。アルンは私を、ファイアドレイクは師匠を背中で拾い、急上昇。炎をかわしながら、再び体勢をとる。テュポーンと向かい合う。
「やはり、一撃では倒せなかったか。ヤツは本当に怪物だな。おもしろい。ヤツが倒れるまで何度でも行くぞ」
「待て、俺達も行くぞ」
デカイ竜の肩に乗るレグスとアムルガル。
「フォーマルハウトのオッサン、頼んだぞ。俺達をアイツの前まで連れていってくれ」
「あぁ、心配するな小僧ども。しっかり捕まっておけよ」
フォーマルハウトは近くの大岩をテュポーンへめがけて投げた。テュポーンは目から炎を放ち、その大岩を溶解する。その瞬間に移動。フォーマルハウトはテュポーンの頭を叩く。レグス、アムルガルは肩の蛇頭を斬る。フォーマルハウトは二人を空中で拾い、上空へ飛び立った。
「後は我々、兄妹に任せてもらおう。いくぞ、ミカエル」
「あぁ、兄さん。行こう」
ミカエルがそう言った時、ゼルエルとアズリエルが上空から急襲。目を切りつけた。フォーマルハウトの一撃でテュポーンは脳しんとうを起こしていた。反撃ができなかったのだ。
「やるな」
「あなたこそ」
目を押さえるテュポーン。見境なく辺りを破壊していく。
「これ以上、この世界を破壊するな」
ルシファー、ミカエルの兄妹は下半身の毒蛇を攻撃。デュポーンは移動を止めて、子供が駄々をこねて暴れているように手をバタバタとしている。
「今だ、オテロ。行くぞ、我々の手で終わらせるんだ。ファイアドレイク、頼んだぞ」
「了解。姉さん、行くぜ」
「アルン、我々も行こう」
「あぁ、オテロ。頼んだぞ」
二体の竜はデュポーンの前まで急降下。
「カムイ無双流・砕拳」
「カムイ無双流・烈」
会心の一撃。手応えがあった。ドスンと倒れるテュポーン。
(やったのか?)
今度は離れて確認。
どうやら、気を失なった様子。
(いったい、どうしたらいいのだろうか?)
壺を持つ男が現れた。
「ほう、テュポーンを倒す人間が現れるとはな。驚きだ。だが、ちょうどいい」
その男は、壺に命じた。
「パンドラの壺よ、冥界の王ハデスが命令する。かの者をその身にとらえよ。かの者の名前はテュポーン」
壺が勢いよくテュポーンを吸い込む。テュポーンは最期の悪あがきをした。口から卵を吐き出した。身体をゴクンとのみ込む壺。ふたをして閉じこめ、封印の札が貼られた。
「ルシファーよ。我が兄弟達が迷惑をかけたようだな。テュポーンは冥界の奥地で封印することにするが、異論はあるか?」
「いいえ」
「それでは冥府軍は帰らせてもらう。ルシファーよ。これからが大変だぞ。この世界を復興してくれ。お前の健闘を冥界で祈っているからな」
ハデスはそう言い残すと封印したパンドラの壺を抱え、飛び立った。
(さて、この卵をどうしたものか?)
その場所に残された卵。皆で考えた。やはり、「破壊した方がいい」と意見はまとまった。攻撃をしようとかまえた。
(・・・ちょっと待てよ)
卵が動いた。
やがて、卵にヒビがはいって、現れた姿は先ほどと違い、女の子の姿だった。私は攻撃を止めた。この少女はルシファー預かりとなった。
(ルシファーはゼウスにならないよね)
この少女は相棒のチュプーと一緒に育ち、ルシファー家の問題で私と過ごすことになるのだが、それはまた後の話・・・。
その頃、冥界の女王は単独行動をしていた。
「それではお母様。いえ、デメテル様。私も冥界へ帰ります」
「フフフ、そんなにかしこまらなくてもいいのですよ。せっかく久しぶりに会えたというのにゆっくりと休んでいきなさい。私の愛しき娘、ペルセポネ」
「そうしたいのは私も同じですが、あまり冥界を留守にする訳にもいかないのです」
「冥界はハデスに任せておけばいいじゃない。たまにはゆっくり休みなさい。今日はあなたを離しませんからね」
「お母様・・・」
ペルセポネは泣いて、デメテルに抱きついた。
「立ち話はこれくらいにして、屋敷に入りましょう」
デメテルはペルセポネの手をとり、上機嫌で中に入って行った。
「ちょうど、新鮮なハーブが手に入ったの。お茶にしましょう」
「はい、お母様」
親子の会話はつきなかった。ペルセポネは子供の頃を思い出したかのようにデメテルに甘えた。デメテルは娘を冥界へ帰さないようにするには、どうしたらいいのかを微笑みながら考えていた。
「・・・ペルセポネのことだから、冥界へ帰ります」と言うでしょう。だから私が冥界へついていけばいいのよ。ハデスに私の可愛い娘を好き勝手にさせるものですか。そうよ。それでいきましょう。明日、天位議会で認めさせなくてはね。
デメテルは天位議会が崩壊したのを知らなかった。
ミカエルはゼルエル達を使者として派遣した。
一度、開かれてしまった。戦いを止めさせるために。
「しかし、あんな怪物を天位議会が育てていたなんて知らなかった。アズリエルとアルンは知っていたか?」
「私も、知らない」
「私もだ。きっと、秘密事項だったのだろうな」
「でも、ルシファーは気づいてしまったんだね。だから罠にかけられて追放されたのかな?」
「それはわからないな。後で本人に問い詰めなくてはな。でも、しゃべるだろうか?」
「なんとか聞いてみるよ。それより今は戦いを止めなくてはいけない」
「そうだな。急ごう」
猛烈なスピードで上空を移動。私はアルンにしがみついた。
やがて、天使と戦っているアドラメレクの姿が見えた。
「天使も悪魔も戦いを止めるんだ。もう戦う理由がなくなった。お互いに離れるんだ」
ゼルエルは天使と悪魔の間に割って入った。剣をかまえる。
「私はこの無駄な戦いを止めにきた。私の言葉はルシファー様、ミカエル様のものだと判断してほしい。剣をおさめてくれないか?」
「そこをどけ、ゼルエル。同胞の天使達の仇をとるんだ」
あくまでも戦いを続けようとするラファエル。
「私は四大天使にも遠慮はしない。ミカエル様には『力ずくでもいいから止めてこい』と言われているんだぞ。退かないなら我々が相手だ」
私、ゼルエル、アズリエル、アルンが身構える。
「オテロ、ルシファー様は事を成したのか?」
ベルゼブブが私に聞く。
「うん。天位議会は崩壊したよ」
「そうか。なら、我々の方が退こう。魔の軍勢よ、撤収だ。サタン、頼んだぞ。全軍を魔界へ連れて帰ってくれ。私はこれよりルシファー様を向かえに行く」
ベルゼブブは猛烈なスピードで天界へ向かった。
「ちょっと・・・。まー、仕方がないわねぇ。じゃあね、オテロ。また、魔界へいらっしゃい」
「うん。今度は魔界のことをイロイロと教えてよ」
「その時がきたらねぇ」
サタンは号令をかけて、黒の大地へ帰って行った。
「今のうちに倒すか、封印するんだ。そうでなければ、この世界が終わるぞ」
ルシファーは誰よりも速くこの怪物に攻撃をくりだした。
「くらえ、ネオ・ミアズマ・ゴッデス」
生命力吸収・攻撃力低下・魔法特殊ダメージを一度に、くりだした。
デュポーンはグオォォと悲鳴に似た声を発した。
「フレア・ディヴィニティ・クリュートス」
ミカエルが続けて攻撃。神々しい黄金炎が襲いかかる。テュポーンは怒りを露にして、目から炎を辺りにまき散らした。それにより、神殿は溶解。
(うかつに近づけないな)
この怪物と戦えるのはこの兄妹だけと思えた。その時、竜の軍勢が現れた。
「オテロ、待たせたな」
一体の赤い竜が私に話しかけてきた。
(まさか・・・)
「君はアルンなのか?」
「そうだ。よくわかったな」
「その声とその石だよ。ラピスラズリ」
首もとに光る石。青い色の中で、黄鉄鉱がまるで夜空に輝く星のように彩られている。以前、私がプレゼントした石。
「その姿が本当のアルンなんだね」
「あぁ、そうだ。オテロ、一緒に戦うぞ、背中に乗れ」
「うん。ありがとう」
背中に飛び乗るとアルンは上昇した。
「あれはなんだ」
「テュポーンと言う怪物だよ」
「あんな怪物がこの世界にいたとは・・・」
「まだ、封印が解けてなくて、この状態だからね。今のうちになんとかしなくてはいけないよ」
上空からテュポーンを眺めていた。ヤツは目から炎を放ち、辺りを溶解。その中をゆっくりと移動していた。
「オテロ、弱っている今のうちにヤツを叩くぞ。私に続け」
ファイアドレイクの背中に乗った師匠が横にきた。
「いやいや、姉さん。無茶をいわないでください。あんな怪物に向かっていけなんて俺にはムリですよ」
(ファイアドレイクが変だ)
弱気なファイアドレイクの姿を初めて見た。いつも一番最初に相手に向かっていくハズなのに・・・。
「強者は強者を知る」と言うことだろう。それだけテュポーンが想像以上に強いということが分かる。私は鳥肌が立った。
「何もお前に戦えとは、言ってないだろう。私をヤツの側に連れて行くだけでいいんだ。ヤツは私が倒す。たぶん、『この日のために修行してきた』と言えるのだからな。この絶望的な状況をひっくり返してやる。頼んだぞ」
ファイアドレイクの首に口づけをした。
ウオォォと叫び声。いつもの興奮したファイアドレイクに戻った。
「姉さん。いくぜ。そのかわり、俺が亡くなったら骨を拾ってくれよ」
「あぁ、拾ってやる。丁重にまつってやるさ。だから、気にせず突っ込め」
「私達も続こう、アルン」
「あぁ、オテロの骨は私が拾ってやるさ。いくぞ」
二体の竜は的を絞らせないように入れ替わりながら、目から放たれる炎をかわして近づいた。
「いくぞ、オテロ。カムイ無双流・震源」
「はい、師匠。カムイ無双流・砕拳」
私は頭を、師匠は胴体をそれぞれ攻撃。一撃離脱。それぞれの部位を蹴り、ジャンプした。アルンは私を、ファイアドレイクは師匠を背中で拾い、急上昇。炎をかわしながら、再び体勢をとる。テュポーンと向かい合う。
「やはり、一撃では倒せなかったか。ヤツは本当に怪物だな。おもしろい。ヤツが倒れるまで何度でも行くぞ」
「待て、俺達も行くぞ」
デカイ竜の肩に乗るレグスとアムルガル。
「フォーマルハウトのオッサン、頼んだぞ。俺達をアイツの前まで連れていってくれ」
「あぁ、心配するな小僧ども。しっかり捕まっておけよ」
フォーマルハウトは近くの大岩をテュポーンへめがけて投げた。テュポーンは目から炎を放ち、その大岩を溶解する。その瞬間に移動。フォーマルハウトはテュポーンの頭を叩く。レグス、アムルガルは肩の蛇頭を斬る。フォーマルハウトは二人を空中で拾い、上空へ飛び立った。
「後は我々、兄妹に任せてもらおう。いくぞ、ミカエル」
「あぁ、兄さん。行こう」
ミカエルがそう言った時、ゼルエルとアズリエルが上空から急襲。目を切りつけた。フォーマルハウトの一撃でテュポーンは脳しんとうを起こしていた。反撃ができなかったのだ。
「やるな」
「あなたこそ」
目を押さえるテュポーン。見境なく辺りを破壊していく。
「これ以上、この世界を破壊するな」
ルシファー、ミカエルの兄妹は下半身の毒蛇を攻撃。デュポーンは移動を止めて、子供が駄々をこねて暴れているように手をバタバタとしている。
「今だ、オテロ。行くぞ、我々の手で終わらせるんだ。ファイアドレイク、頼んだぞ」
「了解。姉さん、行くぜ」
「アルン、我々も行こう」
「あぁ、オテロ。頼んだぞ」
二体の竜はデュポーンの前まで急降下。
「カムイ無双流・砕拳」
「カムイ無双流・烈」
会心の一撃。手応えがあった。ドスンと倒れるテュポーン。
(やったのか?)
今度は離れて確認。
どうやら、気を失なった様子。
(いったい、どうしたらいいのだろうか?)
壺を持つ男が現れた。
「ほう、テュポーンを倒す人間が現れるとはな。驚きだ。だが、ちょうどいい」
その男は、壺に命じた。
「パンドラの壺よ、冥界の王ハデスが命令する。かの者をその身にとらえよ。かの者の名前はテュポーン」
壺が勢いよくテュポーンを吸い込む。テュポーンは最期の悪あがきをした。口から卵を吐き出した。身体をゴクンとのみ込む壺。ふたをして閉じこめ、封印の札が貼られた。
「ルシファーよ。我が兄弟達が迷惑をかけたようだな。テュポーンは冥界の奥地で封印することにするが、異論はあるか?」
「いいえ」
「それでは冥府軍は帰らせてもらう。ルシファーよ。これからが大変だぞ。この世界を復興してくれ。お前の健闘を冥界で祈っているからな」
ハデスはそう言い残すと封印したパンドラの壺を抱え、飛び立った。
(さて、この卵をどうしたものか?)
その場所に残された卵。皆で考えた。やはり、「破壊した方がいい」と意見はまとまった。攻撃をしようとかまえた。
(・・・ちょっと待てよ)
卵が動いた。
やがて、卵にヒビがはいって、現れた姿は先ほどと違い、女の子の姿だった。私は攻撃を止めた。この少女はルシファー預かりとなった。
(ルシファーはゼウスにならないよね)
この少女は相棒のチュプーと一緒に育ち、ルシファー家の問題で私と過ごすことになるのだが、それはまた後の話・・・。
その頃、冥界の女王は単独行動をしていた。
「それではお母様。いえ、デメテル様。私も冥界へ帰ります」
「フフフ、そんなにかしこまらなくてもいいのですよ。せっかく久しぶりに会えたというのにゆっくりと休んでいきなさい。私の愛しき娘、ペルセポネ」
「そうしたいのは私も同じですが、あまり冥界を留守にする訳にもいかないのです」
「冥界はハデスに任せておけばいいじゃない。たまにはゆっくり休みなさい。今日はあなたを離しませんからね」
「お母様・・・」
ペルセポネは泣いて、デメテルに抱きついた。
「立ち話はこれくらいにして、屋敷に入りましょう」
デメテルはペルセポネの手をとり、上機嫌で中に入って行った。
「ちょうど、新鮮なハーブが手に入ったの。お茶にしましょう」
「はい、お母様」
親子の会話はつきなかった。ペルセポネは子供の頃を思い出したかのようにデメテルに甘えた。デメテルは娘を冥界へ帰さないようにするには、どうしたらいいのかを微笑みながら考えていた。
「・・・ペルセポネのことだから、冥界へ帰ります」と言うでしょう。だから私が冥界へついていけばいいのよ。ハデスに私の可愛い娘を好き勝手にさせるものですか。そうよ。それでいきましょう。明日、天位議会で認めさせなくてはね。
デメテルは天位議会が崩壊したのを知らなかった。
ミカエルはゼルエル達を使者として派遣した。
一度、開かれてしまった。戦いを止めさせるために。
「しかし、あんな怪物を天位議会が育てていたなんて知らなかった。アズリエルとアルンは知っていたか?」
「私も、知らない」
「私もだ。きっと、秘密事項だったのだろうな」
「でも、ルシファーは気づいてしまったんだね。だから罠にかけられて追放されたのかな?」
「それはわからないな。後で本人に問い詰めなくてはな。でも、しゃべるだろうか?」
「なんとか聞いてみるよ。それより今は戦いを止めなくてはいけない」
「そうだな。急ごう」
猛烈なスピードで上空を移動。私はアルンにしがみついた。
やがて、天使と戦っているアドラメレクの姿が見えた。
「天使も悪魔も戦いを止めるんだ。もう戦う理由がなくなった。お互いに離れるんだ」
ゼルエルは天使と悪魔の間に割って入った。剣をかまえる。
「私はこの無駄な戦いを止めにきた。私の言葉はルシファー様、ミカエル様のものだと判断してほしい。剣をおさめてくれないか?」
「そこをどけ、ゼルエル。同胞の天使達の仇をとるんだ」
あくまでも戦いを続けようとするラファエル。
「私は四大天使にも遠慮はしない。ミカエル様には『力ずくでもいいから止めてこい』と言われているんだぞ。退かないなら我々が相手だ」
私、ゼルエル、アズリエル、アルンが身構える。
「オテロ、ルシファー様は事を成したのか?」
ベルゼブブが私に聞く。
「うん。天位議会は崩壊したよ」
「そうか。なら、我々の方が退こう。魔の軍勢よ、撤収だ。サタン、頼んだぞ。全軍を魔界へ連れて帰ってくれ。私はこれよりルシファー様を向かえに行く」
ベルゼブブは猛烈なスピードで天界へ向かった。
「ちょっと・・・。まー、仕方がないわねぇ。じゃあね、オテロ。また、魔界へいらっしゃい」
「うん。今度は魔界のことをイロイロと教えてよ」
「その時がきたらねぇ」
サタンは号令をかけて、黒の大地へ帰って行った。