第3話 ニンジン争奪戦
文字数 3,120文字
ヴェッテとの激戦を制してから、公園のベンチの上。
(眠いけど旅に出るか?)
横にいるアズリエル達に聞いてみた。
「徹夜だったんだろう。今日は、ゆっくりとしたらどうだ」
「オテロ。寝た方がいい」
二人に言われたので、旅に出るのは明日とした。
たしかに眠かった。日向ぼっこをしながら、昼寝でもしようと考えた。
パン屋でサンドイッチ。ケーキ屋で野菜のシフォンケーキを購入。水筒に紅茶を入れてもらった。紳士の店主、ガエタノのサービス。この街の近くに小高い丘があった。三人で、そこを目指して出発。すぐに到着した。心地よい風が通りぬける。青々とした草がサワサワと鳴く。大の字になり、空をながめた。快晴。気持ちがよかったので目をとじた。草の音をノンビリと聴いていたハズだったが、そのまま寝てしまった。お腹をまくらがわりにアズリエルも寝たようだ。骨三郎は辺りを警戒中。フワフワと頭の上を浮遊中。太陽が真上にきた頃。四匹のウサギに、たたき起こされた。
「やっちゃおう、ウサギちゃん達」
「起きろ、アズ。オテロ、ウサギが襲ってくるぞ」
(うー、めんどくさい。いい気持ちだったのに。何だよ)
眠けまなこを擦った。ウサギ耳の少女と三匹の剣をかまえるウサギ達。
(可愛いんですが・・・)
ギュルルとお腹の虫が鳴く。その少女からだ。
「そこにニンジンがあるでしょう。それをいただくわ。ウサギちゃん達。やっちゃって」
まだ寝ぼけているアズリエル。ウサギの剣が襲う。左手の盾でかばった。
「大丈夫? アズリエル」
「うん。もう起きた」
「しっかりしろ、アズ。オテロの母ちゃんに約束しただろう。思い出せ」
「わかっている。骨三郎」
死神の鎌をかまえる。ウサギちゃん達が攻撃してくる。意外と速い。だが、死の天使には通用しない。サクッと三匹のウサギちゃん達を倒してしまった。
(えっ、アズリエル。こんなに強かったの)
「えーん。ウサギちゃん達、いじめちゃダメなのー」
プンプン怒る姿も、可愛いウサギ耳の少女。
一瞬で、この少女に近づくアズリエル。
驚いた。ウサギの親玉である少女に死神の鎌を首元にあてた。泣くウサギ耳の少女。少しかわいそうに思えたが、襲ってきたのだ。おきゅうをすえなくては、いけない。
「なんでいきなり襲ってきたの? ダメじゃないか」
「・・・ニンジンの美味しい匂いがしたから。・・・えーん、ごめんなさい」
ギュルルとまた少女のお腹が鳴る。
「なんだ。お腹が空いていたのか。それならそうと、言ってくれたらいいのに。戦う必要は無かったんだよ。お昼の時間にしよう。一緒に食べるだろう」
「・・・いいの」
「遠慮しなくてもいいよ。たくさんあるから、いっぱい食べるといいよ」
「ありがとう」
「アズリエルと骨三郎も一緒に食べよう」
アズリエルはウサギちゃん達を拾い、集めてきた。どうやら気絶させただけのようだった。
(さすがだよ、アズリエル)
「よかった、ウサギちゃん達。生きていたのね」
また少女は泣いた。
バスケットの中にはニンジンのシフォンケーキが入っていた。
(これが欲しかったのか)
「私の名前はオテロ。天使がアズリエル。骸骨が骨三郎。よろしく」
「私の名前はラニ。本当にごめんなさい」
反省している様子。ニンジンのシフォンケーキを渡してあげた。
「ありがとう。いい匂い。ニンジンの香り。ウサギちゃん達も一緒に食べよう」
「まだあるからたくさん食べてよ」
ピクニックという和気あいあいの時間。
(たまにはこんな日もあっていいよな)
戦いのない一日。心がなごむ。楽しい時間を過ごした。時がたつのを忘れ、夕方までそこで会話を楽しんだ。ラニは住むところを失くしたようなので、街につれていくことになった。
(クロリスに頼むか)
街へ帰り、二人のことを頼んだ。女性には女性の悩みがある。だから、こころよく引き受けてくれたクロリスに感謝。明日の朝、広場に集合。骨三郎と一緒にヒルデブラントの工房へ向かった。ハンマーの音が気になったが、いつの間にか寝てしまった。
「もう寝たか『お天道様』」
「オテロか。何かあったのかい?」
「いや、なんということはない。ただ、会話がしたかっただけだ」
「少しだけならいいよ。話とは何だい?」
「あぁ、すまない。人間と語れる日がくるとは思わなかったからな。なんせ、ニャーンとしか聴こえていなかっただろう。本当は自分の意見だったり、ちゃんとしゃべっていたんだがな。だから今、会話ができて、すごく嬉しいんだ」
「そうだったんだね。実は、私もなんだ。骨三郎を通さなくっても会話ができるからね」
「そうか、それではたまに会話をするか」
「そうだね。また今度、会話をしよう。ふぁあ、それではおやすみ」
「あぁ、おやすみ」
オセロニアの世界へやってきた副産物。二心一体ならではの会話。むにゃむにゃいっていたらしい。骨三郎がねぼけながら聞いていた。
「オテロ、そろそろ起きろ。朝だぞ」
骨三郎の朝は早い。まだ、朝日が昇る前。当然、まだ眠い。
「うーん、もうちょっとだけ・・・」
もう一度、寝ようとしたのだが、ギャアギャアとうるさい。仕方がなく起床。トボトボと顔を洗いに行った。
(いつもこのような感じでアズリエルを起こしているのだろうな)
そう思えた。まるで母親のようだ。ギャアギャアと朝からうるさいのはニワトリ並。せめて、自分のタイミングで起きたかった。
(どうせ、アズリエルもラニも寝坊するよね)
そんな予感がした。
現実はあまくなかった。想像以上だった。
クロリスが商人なのをスッカリ忘れていた。商人の朝は早い。仕入れがある。起こす気は無くてもガサガサしていたら、普通なら起きるだろう。ここまでは想像通り。一度は眠けまなこをこすったらしい。クロリスが家から出ると静かになったので、また寝た様子。
広場で骨三郎と待っていた。
「遅いよね」
「そうだな。俺が起こしてきてやるよ」
「ありがとう。そうしてくれると助かるよ」
フワフワとクロリスの家へ向けて飛んで行った。
(さて、もう一度寝るか)
ベンチの上で横になった。それから二時間ほど寝たと思う。
(しまった。寝すぎた)
ガバッと起きたが、骨三郎の姿がみあたらない。
(骨三郎は手こずっているのかな?)
クロリスの家へ急いで向かった。・・・到着。
骨三郎が困っていた。
「オテロ。アイツどうにかしてくれよ」
「どうしたの? ラニが起きないの」
「そうなんだ」
「ウサギちゃん達に頼んだらどうだろう」
申し訳ないが、家の中にズカズカと入って行った。
「ウサギちゃん達。起きて、ラニを起こしてよ」
猫がウサギに頼む。骸骨はフワフワと浮かぶ。もう一人の天使を起こす。
「アズリエル。起きろー」
「うーん、オテロ。おはよー」
「ふぁあ、ウサギちゃん達。おはよー」
「さぁ。ちょっとだけ出発が遅れたけど、旅に出よう」
バカだった。アズリエル達をこの世界へ戻して、そのまま元の世界へ帰ればよかった。ちょっとだけ冷静に考えたら、実行できたハズなのに・・・。
また、この世界を冒険しようとワクワクしている気持ちを押さえることができなかった。この判断の違いが、後にこの世界を震撼させる事件につながるとは夢にも思わなかった。
商売繁盛のクロリスに声をかけて、旅立った。
(さて、どこへ行こうかな?)
(眠いけど旅に出るか?)
横にいるアズリエル達に聞いてみた。
「徹夜だったんだろう。今日は、ゆっくりとしたらどうだ」
「オテロ。寝た方がいい」
二人に言われたので、旅に出るのは明日とした。
たしかに眠かった。日向ぼっこをしながら、昼寝でもしようと考えた。
パン屋でサンドイッチ。ケーキ屋で野菜のシフォンケーキを購入。水筒に紅茶を入れてもらった。紳士の店主、ガエタノのサービス。この街の近くに小高い丘があった。三人で、そこを目指して出発。すぐに到着した。心地よい風が通りぬける。青々とした草がサワサワと鳴く。大の字になり、空をながめた。快晴。気持ちがよかったので目をとじた。草の音をノンビリと聴いていたハズだったが、そのまま寝てしまった。お腹をまくらがわりにアズリエルも寝たようだ。骨三郎は辺りを警戒中。フワフワと頭の上を浮遊中。太陽が真上にきた頃。四匹のウサギに、たたき起こされた。
「やっちゃおう、ウサギちゃん達」
「起きろ、アズ。オテロ、ウサギが襲ってくるぞ」
(うー、めんどくさい。いい気持ちだったのに。何だよ)
眠けまなこを擦った。ウサギ耳の少女と三匹の剣をかまえるウサギ達。
(可愛いんですが・・・)
ギュルルとお腹の虫が鳴く。その少女からだ。
「そこにニンジンがあるでしょう。それをいただくわ。ウサギちゃん達。やっちゃって」
まだ寝ぼけているアズリエル。ウサギの剣が襲う。左手の盾でかばった。
「大丈夫? アズリエル」
「うん。もう起きた」
「しっかりしろ、アズ。オテロの母ちゃんに約束しただろう。思い出せ」
「わかっている。骨三郎」
死神の鎌をかまえる。ウサギちゃん達が攻撃してくる。意外と速い。だが、死の天使には通用しない。サクッと三匹のウサギちゃん達を倒してしまった。
(えっ、アズリエル。こんなに強かったの)
「えーん。ウサギちゃん達、いじめちゃダメなのー」
プンプン怒る姿も、可愛いウサギ耳の少女。
一瞬で、この少女に近づくアズリエル。
驚いた。ウサギの親玉である少女に死神の鎌を首元にあてた。泣くウサギ耳の少女。少しかわいそうに思えたが、襲ってきたのだ。おきゅうをすえなくては、いけない。
「なんでいきなり襲ってきたの? ダメじゃないか」
「・・・ニンジンの美味しい匂いがしたから。・・・えーん、ごめんなさい」
ギュルルとまた少女のお腹が鳴る。
「なんだ。お腹が空いていたのか。それならそうと、言ってくれたらいいのに。戦う必要は無かったんだよ。お昼の時間にしよう。一緒に食べるだろう」
「・・・いいの」
「遠慮しなくてもいいよ。たくさんあるから、いっぱい食べるといいよ」
「ありがとう」
「アズリエルと骨三郎も一緒に食べよう」
アズリエルはウサギちゃん達を拾い、集めてきた。どうやら気絶させただけのようだった。
(さすがだよ、アズリエル)
「よかった、ウサギちゃん達。生きていたのね」
また少女は泣いた。
バスケットの中にはニンジンのシフォンケーキが入っていた。
(これが欲しかったのか)
「私の名前はオテロ。天使がアズリエル。骸骨が骨三郎。よろしく」
「私の名前はラニ。本当にごめんなさい」
反省している様子。ニンジンのシフォンケーキを渡してあげた。
「ありがとう。いい匂い。ニンジンの香り。ウサギちゃん達も一緒に食べよう」
「まだあるからたくさん食べてよ」
ピクニックという和気あいあいの時間。
(たまにはこんな日もあっていいよな)
戦いのない一日。心がなごむ。楽しい時間を過ごした。時がたつのを忘れ、夕方までそこで会話を楽しんだ。ラニは住むところを失くしたようなので、街につれていくことになった。
(クロリスに頼むか)
街へ帰り、二人のことを頼んだ。女性には女性の悩みがある。だから、こころよく引き受けてくれたクロリスに感謝。明日の朝、広場に集合。骨三郎と一緒にヒルデブラントの工房へ向かった。ハンマーの音が気になったが、いつの間にか寝てしまった。
「もう寝たか『お天道様』」
「オテロか。何かあったのかい?」
「いや、なんということはない。ただ、会話がしたかっただけだ」
「少しだけならいいよ。話とは何だい?」
「あぁ、すまない。人間と語れる日がくるとは思わなかったからな。なんせ、ニャーンとしか聴こえていなかっただろう。本当は自分の意見だったり、ちゃんとしゃべっていたんだがな。だから今、会話ができて、すごく嬉しいんだ」
「そうだったんだね。実は、私もなんだ。骨三郎を通さなくっても会話ができるからね」
「そうか、それではたまに会話をするか」
「そうだね。また今度、会話をしよう。ふぁあ、それではおやすみ」
「あぁ、おやすみ」
オセロニアの世界へやってきた副産物。二心一体ならではの会話。むにゃむにゃいっていたらしい。骨三郎がねぼけながら聞いていた。
「オテロ、そろそろ起きろ。朝だぞ」
骨三郎の朝は早い。まだ、朝日が昇る前。当然、まだ眠い。
「うーん、もうちょっとだけ・・・」
もう一度、寝ようとしたのだが、ギャアギャアとうるさい。仕方がなく起床。トボトボと顔を洗いに行った。
(いつもこのような感じでアズリエルを起こしているのだろうな)
そう思えた。まるで母親のようだ。ギャアギャアと朝からうるさいのはニワトリ並。せめて、自分のタイミングで起きたかった。
(どうせ、アズリエルもラニも寝坊するよね)
そんな予感がした。
現実はあまくなかった。想像以上だった。
クロリスが商人なのをスッカリ忘れていた。商人の朝は早い。仕入れがある。起こす気は無くてもガサガサしていたら、普通なら起きるだろう。ここまでは想像通り。一度は眠けまなこをこすったらしい。クロリスが家から出ると静かになったので、また寝た様子。
広場で骨三郎と待っていた。
「遅いよね」
「そうだな。俺が起こしてきてやるよ」
「ありがとう。そうしてくれると助かるよ」
フワフワとクロリスの家へ向けて飛んで行った。
(さて、もう一度寝るか)
ベンチの上で横になった。それから二時間ほど寝たと思う。
(しまった。寝すぎた)
ガバッと起きたが、骨三郎の姿がみあたらない。
(骨三郎は手こずっているのかな?)
クロリスの家へ急いで向かった。・・・到着。
骨三郎が困っていた。
「オテロ。アイツどうにかしてくれよ」
「どうしたの? ラニが起きないの」
「そうなんだ」
「ウサギちゃん達に頼んだらどうだろう」
申し訳ないが、家の中にズカズカと入って行った。
「ウサギちゃん達。起きて、ラニを起こしてよ」
猫がウサギに頼む。骸骨はフワフワと浮かぶ。もう一人の天使を起こす。
「アズリエル。起きろー」
「うーん、オテロ。おはよー」
「ふぁあ、ウサギちゃん達。おはよー」
「さぁ。ちょっとだけ出発が遅れたけど、旅に出よう」
バカだった。アズリエル達をこの世界へ戻して、そのまま元の世界へ帰ればよかった。ちょっとだけ冷静に考えたら、実行できたハズなのに・・・。
また、この世界を冒険しようとワクワクしている気持ちを押さえることができなかった。この判断の違いが、後にこの世界を震撼させる事件につながるとは夢にも思わなかった。
商売繁盛のクロリスに声をかけて、旅立った。
(さて、どこへ行こうかな?)