第4話 クエスト禁止の通達
文字数 2,938文字
街を出た。出たといっても数歩だけ・・・。ある者達に呼び止められた。
「また、旅に出るのか?」
振り向くとそこにジェンイーがポロイと一緒に仁王立ち。
「俺達も連れていけ。そこのウサギより、役に立つだろう」
「ありがとう。でも、ポロイはいいのかい?」
「あぁ、陛下から許可はおりている」
「では、一緒に行こう」
心強い二人に守られて再び、出発。となりの街を目指した。
特に、となりの街に用事があるわけではない。クエストでもしながら、ノンビリと旅をしようと考えていた。こちらの世界で三年間。時間はたくさんあるように思えた。現実はそうではなかった。
街へ到着。クエストボードを早速、確認。
(当面の資金を稼ぐぞ)
手当たり次第、クエストをこなすことにした。逃げたニワトリを探して頭をつつかれたり、迷子の犬を追いかけたら、刀をくわえた犬に逆に追いかけまわされたり、ひどい目にあった。他にもイロイロとあったが、すべてクエストをこなした。こなしたのは、ジェンイー、ポロイ、アズリエルのおかげだった。ただジャマをしていた気がする。骨三郎と一緒にギャアギャアとワメいていただけだった。ラニとウサギちゃん達はマイペース。いつも私と骨三郎は笑い者にされていた。
「今日はお疲れ様でした。明日の朝、この街を出発するからゆっくり休んでください」
軽めの食事を済ませ、この日は終了。
(疲れた)
次の日、別の街をめざし、出発。
昨日の犬が勝負を挑んできた。この挑戦を受けることにした。猫対犬。ヒューと風が落ち葉をまきあげる。軽い小石がコロコロと転がる。犬が刀をくわえた。私の装着した爪をカチンとならし、それを合図にお互い、間合いをとった。
犬が走る。
(速い)
後手をふんだ。刀の攻撃を盾で、のがれる。ガチンと音。火花が散る。
再び間合いをとろうと離れるが、犬が追いかけてくる。目の前の木を跳びげり。犬の突進をかわし、背中を飛び越え、向かい合う。
(やるな。犬)
全力疾走の犬。ジグザグに動き、的をしぼらせない。地面を爪でかきあげ、めくらましを放った。ひるむ犬。それと同時に飛び上がる。
「カムイ無双流・震槍」
犬を蹴り飛ばした。グッタリする犬。勝負あり。
「ありがとう。大丈夫かい?」
犬を起こしてやった。水を与えると嬉しそうにゴクゴクと飲んだ。
(さて、行くか)
犬をその場に残し、旅立とうとした。
「オテロ。ちょっと待て。犬が何か言っているぞ」
骨三郎が呼び止めた。通訳してもらった。
「私の名前は八房。旅をしている忍犬だ。たまたま同族の犬を追いかけているのをみて、助けてやろうと思ったのだが、アイツは飼い犬だったのだな。勘違いをして申し訳なかった。この勝負を受けてくれてありがとう。今の実力が分かった気がする。まだまだ、私は未熟者だ。冒険者にかなわないなんて、今までの修行はダメだったのだな。よくわかったよ。よかったら旅に同行させてもらえないだろうか?」
長々と通訳した骨三郎。ぐったりしていた。
「いいよ。一緒に行こう」
八房を仲間にくわえ、次の街をめざした。この判断が正解だった。未然に危機をのがれることができたのは八房によるものだった。耳で足音を聞き分け、臭いで察知する。知らない足音には、いち早く対応した。野営をした時に分かった。
「ありがとう、八房。今日も頼んだよ」
頭と背中をなでてやった。尻尾を振っている。
焚き火にあたり、夜が明けるのを待った。
夜明けと同時に出発。寝坊助のラニとアズリエルを両脇に抱え込むジェンイー。ウサギ達を背中にのせる八房。私とポロイで見張りをしながら街に無事到着。ジェンイーには宿で休んでもらった。
(さて、クエストだな)
ボードを確認した。今日も片っ端から案件をこなした。
迷子探しでは八房が大活躍。見事に探しあてた。蜂の巣を取り除くクエストはポロイが活躍。私と骨三郎は蜂に襲われて、そこらじゅうが、はれ上がっている。おとりのハズが、なぜかすべての蜂が向かってきた。どうすることもできなかった。今から思えば噴水のプールに飛び込めばよかった。そうすれば被害は少なくなっていたハズだ。・・・反省。
その後はイロイロなクエストを達成。この街の依頼も無くなった。明日は別の街へ旅立とう。ジェンイーを起こさないように静かに寝た。
(おやすみ)
次の日、めずらしくラニとアズリエルの寝坊助組が早く起きていた。目を疑った。
(何かの前ぶれなのかな?)
一抹の不安を朝から感じていた。
(今日は何も起こりませんように)
不安が早くも的中。
街を出る前に一応、クエストボードを確認した。
驚いた。怒りが込み上げてきた。
紙切れが一枚張りつけられていた。
クエスト荒しの黒猫一味。リーダーの名前はオテロ。依頼を出さないようにしましょう。・・・天軍。
(ふざけるなー)
「どうなっている。一体、何をしたんだ」
ジェンイーが怒鳴った。
理由が分からなかった。普通にクエストをクリアしただけのハズ・・・。
「クエストをまとめてやり過ぎたのかもしれないな。それにしてもクエスト禁止なんてやりすぎだろう。何様なんだ。天軍め」
骨三郎が怒りだす。
「オテロ。これからどうするんだ」
ポロイが心配そうにしていた。
「もちろん、天軍のいる場所に行くよ。クエスト禁止を解除してもらわないとね」
しゃべり方はおだやかだが、内心は怒りの炎がゴウゴウと荒れ狂っていた。ファイアドレイクなら、辺り一面を火の海にしているだろう。悲しいかな私は猫だ。当然、火は吐けない。
それでも文句の一つでも言わないと気がすまない。なんでクエスト禁止なんだ。ただ依頼をまとめてクリアしただけじゃないか。どこに文句を言われる筋合いがある。一体、誰だ。そのようなバカげた通達を出したヤツ。腹が立つ。絶対に許さない。出てこい。
次の街に着いて、クエストボードをみた。やはり、同じ紙切れが張りつけてあった。
(ヤッパリね)
一応、確認しただけだ。その日は自由行動とした。日課の修行を終えて、ノンビリと日向ぼっこを楽しんだ。広場の芝生の上。身体がポカポカする。
(気持ちいい)
いつしか、本当に寝てしまっていた。
気づいたときには夕暮れ時だった。そのまま酒場へ向かう。酒場のマスターは白髪まじりの老人。グラスをみがいていた。壁よりの席に座る。
「いらっしゃい。何にします?」
「そうだね。とりあえず麦酒をください」
「かしこまりました」
サーバーからジョッキにそそがれる。白い泡と黄金色の麦酒。ショワワと音をたてる炭酸の泡がおいしさをそそる。それをトンと置いて、スーッと目の前へ差し出された。
(こんなの絶対に美味しいよね)
「どうぞ」
「ありがとう」
一口、飲んだ。それはキンキンに冷えていた。乾いていた、のどを潤した。
「プハー」
至福のひととき。ゴクゴクと飲み干す。これで止めておけばよかったのだが・・・。
(うん? 何か言った?)
「また、旅に出るのか?」
振り向くとそこにジェンイーがポロイと一緒に仁王立ち。
「俺達も連れていけ。そこのウサギより、役に立つだろう」
「ありがとう。でも、ポロイはいいのかい?」
「あぁ、陛下から許可はおりている」
「では、一緒に行こう」
心強い二人に守られて再び、出発。となりの街を目指した。
特に、となりの街に用事があるわけではない。クエストでもしながら、ノンビリと旅をしようと考えていた。こちらの世界で三年間。時間はたくさんあるように思えた。現実はそうではなかった。
街へ到着。クエストボードを早速、確認。
(当面の資金を稼ぐぞ)
手当たり次第、クエストをこなすことにした。逃げたニワトリを探して頭をつつかれたり、迷子の犬を追いかけたら、刀をくわえた犬に逆に追いかけまわされたり、ひどい目にあった。他にもイロイロとあったが、すべてクエストをこなした。こなしたのは、ジェンイー、ポロイ、アズリエルのおかげだった。ただジャマをしていた気がする。骨三郎と一緒にギャアギャアとワメいていただけだった。ラニとウサギちゃん達はマイペース。いつも私と骨三郎は笑い者にされていた。
「今日はお疲れ様でした。明日の朝、この街を出発するからゆっくり休んでください」
軽めの食事を済ませ、この日は終了。
(疲れた)
次の日、別の街をめざし、出発。
昨日の犬が勝負を挑んできた。この挑戦を受けることにした。猫対犬。ヒューと風が落ち葉をまきあげる。軽い小石がコロコロと転がる。犬が刀をくわえた。私の装着した爪をカチンとならし、それを合図にお互い、間合いをとった。
犬が走る。
(速い)
後手をふんだ。刀の攻撃を盾で、のがれる。ガチンと音。火花が散る。
再び間合いをとろうと離れるが、犬が追いかけてくる。目の前の木を跳びげり。犬の突進をかわし、背中を飛び越え、向かい合う。
(やるな。犬)
全力疾走の犬。ジグザグに動き、的をしぼらせない。地面を爪でかきあげ、めくらましを放った。ひるむ犬。それと同時に飛び上がる。
「カムイ無双流・震槍」
犬を蹴り飛ばした。グッタリする犬。勝負あり。
「ありがとう。大丈夫かい?」
犬を起こしてやった。水を与えると嬉しそうにゴクゴクと飲んだ。
(さて、行くか)
犬をその場に残し、旅立とうとした。
「オテロ。ちょっと待て。犬が何か言っているぞ」
骨三郎が呼び止めた。通訳してもらった。
「私の名前は八房。旅をしている忍犬だ。たまたま同族の犬を追いかけているのをみて、助けてやろうと思ったのだが、アイツは飼い犬だったのだな。勘違いをして申し訳なかった。この勝負を受けてくれてありがとう。今の実力が分かった気がする。まだまだ、私は未熟者だ。冒険者にかなわないなんて、今までの修行はダメだったのだな。よくわかったよ。よかったら旅に同行させてもらえないだろうか?」
長々と通訳した骨三郎。ぐったりしていた。
「いいよ。一緒に行こう」
八房を仲間にくわえ、次の街をめざした。この判断が正解だった。未然に危機をのがれることができたのは八房によるものだった。耳で足音を聞き分け、臭いで察知する。知らない足音には、いち早く対応した。野営をした時に分かった。
「ありがとう、八房。今日も頼んだよ」
頭と背中をなでてやった。尻尾を振っている。
焚き火にあたり、夜が明けるのを待った。
夜明けと同時に出発。寝坊助のラニとアズリエルを両脇に抱え込むジェンイー。ウサギ達を背中にのせる八房。私とポロイで見張りをしながら街に無事到着。ジェンイーには宿で休んでもらった。
(さて、クエストだな)
ボードを確認した。今日も片っ端から案件をこなした。
迷子探しでは八房が大活躍。見事に探しあてた。蜂の巣を取り除くクエストはポロイが活躍。私と骨三郎は蜂に襲われて、そこらじゅうが、はれ上がっている。おとりのハズが、なぜかすべての蜂が向かってきた。どうすることもできなかった。今から思えば噴水のプールに飛び込めばよかった。そうすれば被害は少なくなっていたハズだ。・・・反省。
その後はイロイロなクエストを達成。この街の依頼も無くなった。明日は別の街へ旅立とう。ジェンイーを起こさないように静かに寝た。
(おやすみ)
次の日、めずらしくラニとアズリエルの寝坊助組が早く起きていた。目を疑った。
(何かの前ぶれなのかな?)
一抹の不安を朝から感じていた。
(今日は何も起こりませんように)
不安が早くも的中。
街を出る前に一応、クエストボードを確認した。
驚いた。怒りが込み上げてきた。
紙切れが一枚張りつけられていた。
クエスト荒しの黒猫一味。リーダーの名前はオテロ。依頼を出さないようにしましょう。・・・天軍。
(ふざけるなー)
「どうなっている。一体、何をしたんだ」
ジェンイーが怒鳴った。
理由が分からなかった。普通にクエストをクリアしただけのハズ・・・。
「クエストをまとめてやり過ぎたのかもしれないな。それにしてもクエスト禁止なんてやりすぎだろう。何様なんだ。天軍め」
骨三郎が怒りだす。
「オテロ。これからどうするんだ」
ポロイが心配そうにしていた。
「もちろん、天軍のいる場所に行くよ。クエスト禁止を解除してもらわないとね」
しゃべり方はおだやかだが、内心は怒りの炎がゴウゴウと荒れ狂っていた。ファイアドレイクなら、辺り一面を火の海にしているだろう。悲しいかな私は猫だ。当然、火は吐けない。
それでも文句の一つでも言わないと気がすまない。なんでクエスト禁止なんだ。ただ依頼をまとめてクリアしただけじゃないか。どこに文句を言われる筋合いがある。一体、誰だ。そのようなバカげた通達を出したヤツ。腹が立つ。絶対に許さない。出てこい。
次の街に着いて、クエストボードをみた。やはり、同じ紙切れが張りつけてあった。
(ヤッパリね)
一応、確認しただけだ。その日は自由行動とした。日課の修行を終えて、ノンビリと日向ぼっこを楽しんだ。広場の芝生の上。身体がポカポカする。
(気持ちいい)
いつしか、本当に寝てしまっていた。
気づいたときには夕暮れ時だった。そのまま酒場へ向かう。酒場のマスターは白髪まじりの老人。グラスをみがいていた。壁よりの席に座る。
「いらっしゃい。何にします?」
「そうだね。とりあえず麦酒をください」
「かしこまりました」
サーバーからジョッキにそそがれる。白い泡と黄金色の麦酒。ショワワと音をたてる炭酸の泡がおいしさをそそる。それをトンと置いて、スーッと目の前へ差し出された。
(こんなの絶対に美味しいよね)
「どうぞ」
「ありがとう」
一口、飲んだ。それはキンキンに冷えていた。乾いていた、のどを潤した。
「プハー」
至福のひととき。ゴクゴクと飲み干す。これで止めておけばよかったのだが・・・。
(うん? 何か言った?)