8. スラバの村の青年
文字数 2,544文字
事件から数か月が経った。
さすがにいろいろと上の機関に怪しまれはしたものの、家族の中で死亡したのは結局ファトラ一人であったため、上手く
アレン・バルトは、その後まもなくリディバの町を出たという。
そして例の首輪は、バルトも一度
「儀式は行いましたが、なぜか首輪は砕けずこの通り・・・。私が持つべきものではありませんので、お返しに上がりました。外せるようにはなりましたから、浄化はされているはずです。もう妖魔が現れることはないでしょう。ですが、これには何か特別な意味があるのかもしれません。何も問題が起きなければ、こちらで大切に保管なさってください。」
そう言われてしまうと気味が悪くても処分できず、置き場に困ったダリアは、最もふさわしいと思われた場所として、とりあえず、今は亡き末娘の部屋のドレッサーにそれをしまった。そして、その両方の記憶を
赤い三角屋根の建物が
そして今、迷い子のように、疲れきったため息をついた彼もまた旅人。その若者は、まだ青々とした葉を茂らせている街路樹の下へ向かうと、そこに大きな荷物を二つ並べた。それから、お尻に敷いても問題のない方に腰を下ろした。
本来は、
その通りで、彼は二十五歳の
実は、リアンはたった今、店から出てきたばかり。なので、店の正面にある街路樹の
入るだけ無駄だと思ってしまうような店、つまり、商品が全て話にならないほど高級高額に違いないという雰囲気の所は敬遠して、それ以外の頑張れそうな店舗を全て回った。ここが、最後の店だったというわけである。リアンが、その窓越しに見える店内を眺めながらため息を止めることができないのは、予算内で気に入ったものが結局見つからなかったからだ。
しかし手ぶらでは帰れない理由があった。
悩みすぎたリアンは、クシャクシャッと片手で髪を掻き回し、ふうっと息を吐いて気持ちを切り替える。そして、目に焼き付けてきた何品かをよくよく思い出しながら、頭の中でそれらを激しく競い合わせた。デッドヒートが、その後、二十分以上も続いた。
「あなた、何かお困りのようね。もしかして宝石がご入り用かしら。」
不意にそんな声をかけられて、リアンは驚いたように首を向けた。あまりに真剣に考え込んでいたため、通り過ぎる人の気配を感じることが全く無かった。自分が今どこにいるのかも忘れかけていたリアンを、その声は一瞬で引き戻したのである。リアンの耳に街の音が
そこには、いかにも裕福そうな貴婦人がいた。ネックレスと指輪に付いている、透き通って輝く大きな石が、そうはっきりと証明していた。それはまさしく、
リアンは一応周りに目を向けてから、またその人を見た。
「僕・・・ですか。」
「ええ、突然ごめんなさいね。宝石店の前であんまり深刻な顔をしているものだから。あなた、どこから来たの?旅の人でしょう?」
「はい。東の森の岩山にあるスラバという村からです。」
「少し遠いわね。」
「そうですね。徒歩だと何日もかかってしまいます。でもこの近くまでなら、たまに仕事で来ますよ。」
リアンがそう答えると、彼女はなぜか思案しだしたような顔になり、沈黙した。何か不可解なことでも口にしただろうかと、リアンはその様子を
だがすぐ、彼女はまた笑顔に戻って、自然に会話を続けた。
「それで、気に入る宝石が見つからないのかしら?」
「ああいえ、宝石なんて高級なもの、僕には買えませんよ。」
そう
そうでしょうね・・・と、彼女は心で答えて、青年には
「ただ、見た目に高価そうな首飾りが欲しくて・・・。実は近々結婚を控えていまして、彼女に綺麗な首飾りを着けさせてあげたかったんですが・・・天然石でも、思った以上に高いですね。」
「それなら、ちょうどいいものがあるわ。みな
初対面だというのに、リアンは疑いもなく喜んだ。
そして、誘われるままに、彼女が
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