5. 見張るべきは・・・
文字数 2,403文字
カイルと、それにレッドとリューイの三人は、腕を骨折した少年の家にいた。少年を只で治療した恩人がいるので、これは当然、真っ先に決まった。夕食の席では、三人は、少年の家族と楽しいひと時を過ごした。
そして今は、これからしばらく、彼らの寝床となる客間にいる。この家の者たちがそろそろ眠りに
眠るのが
ここトラウの村には、広場にさえ街灯らしいものが何一つ無い。家々の
風が
「大丈夫かな・・・今夜。」
「そう思うなら、何で、今ここで
レッドが理解できないという顔で言った。
「だって・・・どこで何が起こるか分からない。」
「占えばいいだろう。」
カイルは、ひとつ派手なため息を返した。
「占ったよ。それで分かったことは、呪いによる何か良くないことが確かに起こったことと、今夜また起こるってこと。この村で。こんなに小さな村なんだから、これ以上は特定できないよ。」
知りたい結果をピンポイントで出せるなら、今日、村中を歩き回る必要も無かっただろう。なるほどそれは
「なら、やっぱりあの豚小屋か? だが、それらしい話は、夕食の時にも何も出てこなかったが。豚は関係なく、村人たちもまだ気づいてないってことか。」
「じゃあ、たいしたことないんじゃないか。」と、リューイ。
「たいしたことない呪いって・・・。」
カイルは
首輪の
「だけど、豚小屋が被害を受けたとして、リンの首輪の呪いがどう影響すれば、豚が血を流して死に至るんだろう。呪いをかけられた者は、
はっきり喋るもはや独り言に、レッドは待ったをかけるようにして口を挟んだ。
「だいたい、そんな事件が起これば、一人くらい誰か話題にする者がいるだろう。お前は今日、ここの多くの人と接していたんだから。」
リューイはいきなり、ソファーからすっくと立ち上がった。考えるのが面倒だと言わんばかりに。
「もう豚小屋を見張ろう。キースを呼んでくる。ヤバくなったら、いち早く何か気付いてくれるだろ。」
そしてリューイは、さっそくドアへ向かう。
レッドはあわてて、灯りをテーブルのキャンドルグラスに変えた。暗い夜道を、リューイは何の用意もなく出掛けようとするのである。
頭を掻きながらランタンを受け取ったリューイは、音を立てずに玄関から外へ出た。
綺麗だ・・・と、しばらく
村は岩山にありながら、その一軒一軒が無理なくゆったりと建っている。道も昔からのものか整備されていて歩きやすい。
キースを呼び戻しに
三歩戻って、その窓越しからそっと中を
リンの家だった。
向かいの
だが、キャンドルグラスのぼんやりした灯りの中に見えるそれは、異常だった。
リンは、両手を胸の上で縛られていて、次は両足というところを、リューイは目撃したのである。まるで
見たままを率直に受け止めるリューイは、感情的になって、急いで玄関へ回り込んだ。鍵はかかっていない。リューイは、かまわず中へ飛び込んで行った。
そして、見たものを間違いなく確認すると、あまりのことに一瞬言葉を失った。
突然のことに驚いた老人の方も、すごい
「何やってんだよ・・・。」
いくらか冷静になれた声で、リューイはやっと言った。
さらに不可解なことがあるからだ。それは最初に見た時も感じたことだったが、リンはまだ起きていて、おとなしくされるままなのである。
「お恥ずかしいところを・・・。」
視線を
「実は、夜中になると、この子は外へ飛び出していき、家畜を襲いだすのです。それで仕方なく・・・。」
「家畜って・・・あの豚小屋・・・。」
老人は黙って
リューイは信じられないというように、少しの間そのまま
見張るべきは豚小屋ではなく、リンだ。
本当かどうか確かめてやるという気持ちで、我に返ったリューイは、老人に目を向け直した。
「じゃあ、俺が見てるから
「え・・・。」
「俺が見ててやるから、外せって。そんなことさせねえから。」
言っている間にも、つかつかと部屋の中へ踏み込んで行ったリューイは、縛り固められているリンの荒縄をほどき始めた。
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