第2話 絵に描いたパン

文字数 658文字

彼は彼女の描く絵のタッチがとても好きだった。シャガールや棟方志功が好きな彼は、写真のような絵は好きではなく、所謂、絵らしい絵というのが趣向に合っていた。彼女の描いたパンの絵は見事で、本物のパンより美味しそうに見えた。
一方、彼女は彼の文章表現の細かい一部分を見つけて褒めてくれた。とても嬉しかった。多分、お互いに。
彼女が絵を見せにパン屋さんに持って行くと、店主さんは絵を欲しがったらしく、彼女が謹呈すると沢山の美味しいパンをくれたという。彼はそれを聴くととても喜んだ。何故か、とても嬉しく感じる。
彼は当てずっぽうで、彼女に「魚座の生まれ」かと聞いた。彼女は幾分、吃驚して、彼の生まれ星座を尋ねた。彼は希望的観測で彼女の星座を特定したに過ぎない。
彼のSNSを見てみるように示唆された彼女は、彼が同じ「水の星座」であることを知った。
そして彼は自身がM星人で、彼女は何星人かと尋ねたら、「K星人」だという。以上の2つの質問で彼女の生年月日を特定できた。だが、彼女の誕生日はSNSなどでは明かされていない。彼女の勘違いなどでなければ彼の推論は正しいはずだ。まあ、このことはコミュニケイト出来るようになったらはっきりとわかるだろう。
兎に角、彼女の話すことは普通では得られない知見だ。彼はその話に飽くことはなかった。普通の人には見えないものが見える女となんでもありだと考え感ずる男。
両者は生まれてから自身がこれほど肯定され、互いの観点を否定することなく、尊重し合い、弾むような対話を交わし、とても楽しく、心明るく、魂は喜んでいた。
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彼女

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