第1話 人生初の‥‥

文字数 1,030文字

「結婚しよう」
そうメッセンジャーに記したのは2020年12月26日23時9分。
YouTubeで動画を見ると、「よくやった」というメッセージがオンパレードだった。
甲斐性のない彼は自身にプロポーズする権利はない、そう想いこんでいた。それに自分は
「いっくれえの年」である。そして、生まれて初めての求婚で、相手の彼女にはテレビ電話でのやり取りはあったが、実際に会った事もなく、一年と半年の間、一方的にメッセージを送るのみで、彼女からはなんの音沙汰もない。
それなのに何故、求婚が出来たのか。
年齢的には青春も朱夏もとうに過ぎ、白秋の頃と見られるであろうが、これと言った収穫も見られていない彼に青春小説の主人公がふさわしいだろうか。
だが、彼の心は純粋でやってることは5歳児と変わりない。彼には悪気というものは殆どなく、しかし、SNSなどでも悪ノリして顰蹙を買う事も往々にしてある。
だが、そんな時も、彼の親切な恋愛指南役は優しく諭してくれ、彼も子供のように素直に謝る、という構図が出来ていた。
彼の恋愛相手を彼女(Y)と呼ぶことにしよう。
彼と彼女が知り合ったのが3年前、2年前には確か彼は彼女に自分の「肖像画」を描いてくれるよう依頼し、その時、テレビ電話で話した。彼女には、オーラや神仏なども見えるらしかった。
だが、しばらく、交流はなく、2019年の4月頃から、メッセンジャーで親しく対話するようになり、彼女の仕事が忙しくなり始めた6月に彼が唐突に商談中の彼女に電話をかけたことを発端として、彼女からブロックを受け、以来、一方的なメッセージの送信が続いている。
オラクルでは「True Love」「Twin Ray」「Twin Flame」などの文言が頻発し、「真実の愛」の兆しは30回以上、目の当たりにした。
だが、彼女も彼も経済的に裕福ではなく、特に彼は借財があった。だから、幾ら、互いに心は定まっていたとしても、婚姻関係を申し出るのはまったく無理だと想定していた。
相手がそれを望んでいるのか、互いにわからなかった。だが、彼女はとても動きたいが動けない、いつまでも待っている、という神託を10回位受け、ついに彼は決意した。
「結婚」の意思を、打診・提案しようと。細かいことは後から話し合えばいい。
兎に角、自分自身の決意・コミットメントを彼女に伝えることが大切、そう判断した。
現在、2020年12月28日19時37分、彼女にことの顛末をメッセージし、この物語を公開することを告げた。
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登場人物紹介

彼女

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