第22話

文字数 2,839文字


ジョージの秘密



私の従者は初めてものを見出した
その「もの」が何かは永遠の謎だなと私は思った
「それ行けジョージ 突っ込むぞ
用意はいいか」
私はジョージに向かって叫んだ
あのラマンチャの男のように
今や私は自信に満ち溢れている
「さあ、ジョージよ 立ち上がれ」
ジョージは愛称だ
本当の名前はJYW832・・・・ウンニャカカンニャカ
という無理数
じゅげむじゅげむ よりも長い
唱え続けていると私は宇宙の果てへと運ばれて行ってしまう
つまり数字の中の最高の数字
誰も唱えはしないが
つまり魔法の呪文
ということではあるが
難点はいつまでたっても終わらないこと
で、そこが真の宇宙だという
たぶん終わらない事が
何かが生まれれば何かが滅びる
等価交換だ
「ジョージ、確か、魔法だと言っていたよな」
だったらそうなる
真の宇宙と私は等価交換可能か
心の中でだが可能だと言いたい
私は傲慢ではないが
で、私は滅びる定めを背負う
真の宇宙との交換で
私の犠牲?は、騎士道精神にのっとっている
ジョージにとっては騎士道もそれにひっついている精神も
それに思い煩う私も
交換の前にすでに滅んでいるという事ではあるらしいが
しかしそれには「解答はない」だ
そこで私は再び奮い立つ
ジョージ「何ですか」
私「人生だ
人生を取り戻すぞ」
ジョージ「どこからですか」
私「ついて来い 旅に出るぞ」
ジョージ「その姿で、ですか」
では、私はジョージに寝かしつけられていたのか?
私「私がパジャマ姿だろうが、お前には使命がある
私という」
ここはどこだ
変な所だ
不可解な事ばかりだ
私「解答はない、か」
まあいい ジョージは私の従者だ

というわけで、目覚めたら
どこかの森の中だった
私は大木に寄りかかって、正に眠ろうとしている
空は満天の星空だ
何もかもが透き通っている
ジョージに聞く
「本当か」
「何のことです
何がを言ってくれなくては私には答えられませんよ
もし、私にお聞きなら」
別に何が本当で何が本当ではないかと聞いているのではない
いや、ここにはお前が検索するものなど何もないな
「見るがいい あの純粋な夜空を」
「純粋?
意味が分かりません」
「大した従者じゃ
では 全面的に私に従うがいい」
そうして二人とも寝入った
私は久しぶりに気持ち良く熟睡した
ジョージの熟睡については?
「?」が三つか四つ、いやもっとつく
それは何とも難解なのだ
私の脳みその性能を超えている
ちなみにジョージと互いの眠りについて話し合ったことがある
「ジョージの眠り」
それは不思議なおとぎ話のように魅力的だ
しかし、それにも、解はなし、だ
だが私は「解はなしが気に入った」
しかし、目を覚ます時はさすがに心配だった
何かが違うという思いがよぎっては消え
よぎっては消えた
しかし、朝になった
「夜の次には朝」
それは変わっていなかった
そうして沢山の鳥たちの囀りが耳に飛び込んできた
途端に感動で胸が一杯になる
木々の香り 土の香りだ
深い本当の眠りに見合った深い森の中だった
この森に目覚めたことに感謝した
隣にジョージがいた
私の命令を待っている
と、同時にジョージは
まだあの不思議で神秘的な眠りの中だった
突然起こしたらどうなるのだろう
私の居場所まで変わるのか
「不安で心配」
どちらも同じか
ジョージは私の居場所を変えられるのではないか
考え出すと不信感に襲われる
ジョージが眠り込むと時々そうなる
何か命令はないか
だが差し迫ったことは何もない
「命令だ 命令だ 命令だ」
三度唱えてみる
だが私の手のひらには何も乗っていない
いや書かれていない
落ち着かなくなる
いや、ジョージは私の従者だ
「従者としてのジョージ」
思い出す、なぜ突然忘れたのだ
今や彼は忠実な従者であると気付かなかったのか
何の心配もなく眠っているように見える
まるで子供だな
「では、起こそう」
心は決まった
心を奮い立たせよう
私はもう一度あたりを見回す
するとどうだろう
広い台地が見える
何とそこから三人の巨人がこちらに向かって走って来る
何かに襲いかかろうと
手を振り上げ足を蹴り上げ
彼らもそれまで閉じていた巨大な目を見開く
突然目いっぱい見開く
ジョージはびくっとして
ジョージも又目を開く
大きく
うんと大きく
私は開いた目を再び閉じながら聞く
「巨人はもっと大きくなったのではないか
巨人はもっと沢山になったのではないか」
返事はない
私は又目を開ける
「何かが始まったようだ」

まるで映画の撮影現場
カメラもスタッフも配置についている
その場所は細心の注意をもって捜された場所
予報も上々
俳優のカメラテストも上々
「時間がきたのだ」
私は知っていた
なぜかあらかじめすべてのことを知っていた
時間
俳優
スタッフ
「俳優? 俳優はいつ到着したか」
マドンナの姿がなかなか見つからなかった
日程は?
「主役は病気か?」
「すべて乗り切りました」
「で、今日をむかえたのだな
私たちはやって来たぞ
この森へと
ここはこんなに深い所だったのか」
「私たちの眠りも深かったですね」とジョージ
ジョージはあの不思議な眠りから今やすっかりと目覚めて
私を見る
私「目覚めよう」
ジョージ「あの土地へ行きましょう
あの茶色の大地へ」
私「私の馬がいななく」
ジョージ「乾燥した赤い土が切り立ち天を目指す場所へ
砂の道を
あなたの馬を駆って
照り付ける太陽に挑むあなたを
真っ青な空が見下ろしている台地」
私「おお、見えるぞ
素晴らしい景色だ」
これが憧れの場所か
して、こちらに向かってくるのは巨人たちか
「ジョージ 用意はいいか」
私は立ち上がった
怒れる太陽の下に
何時から差していたのかさえ忘れる程長い間差していた剣を
抜き
ジョージを見る
彼もまた地面から剣らしきものを抜き
私の横で構える
「ジョージお前いつから人間になったのだ」
「人間ですか?
私が?
分かりません
そもそも人間などというものは知りません
私が知っているのは旦那さんだけ
そうでしょ?それでいいのでは」
「お前も私を諫めるのか」
「いえ、旦那さん
私は誰も夢から覚ましたりしませんよ
夢と私とは旦那さんの言う等価交換ですかね」
「それで いつから人間になったのだ?」
「あなたが私をジョージと名付けて
眠れ、よく眠れ、ジョージ
なんて言ったからでしょうかね
そしていい夢を見ろとかね」
「それでお前は眠れたのか」
「ええ、旦那さん」
「それは上々
それで、どんな夢を見たのだ」
「夢もただの等価交換システムですよ、旦那さん
私にはわかったのです」
「なんと、呆れた奴だ」
「これから夢を見ないようにしましょう
私が夢を見たら何と交換したものでしょうかね
旦那さんですかね
目覚めは気持ちいいですか」
「ああ、晴ればれした」
「やはり旦那さんではないでしょうね」
「何だ
何のことを言っているのだ」
「夢ですよ」
「まさか、お前は目覚めないのか」
「いえ、夢はもう見ないことにしました」
「そもそも夢とはなんだ
何だったのだ」
「もうどうだっていいでしょう」
「どうだっていいような気はしないが
まあいい
まずは目の前の巨人たちから片付けてしまうとしよう」
「はい、旦那さん」
「では ついて参れ」
「はい、行きましょう
私に行くことが出来る限り遠くまで
ついて行きます」










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