第32話
文字数 496文字
道無き道、だった。空を様々な濃淡の灰白色が覆い、常に流れて移動しつつ或る場所では大きく膨れ上がったり、別の場所では崩れて散り去っていったりしていた。
とにかく、厚い雲に切れ目は、無かった。光が、白かった。
風は、強くなかったが冷たく、一行に丁度正面から、吹き付けていた。
辺境の地の、研ぎ澄まされた感覚。
陰鬱、と言われそうだが寧ろ清冽で、地平の先の山々の連なりは、厳しさと温かさと両方、感じられた。
「デアリア…」
ガルボックが、呟いた。
「これまで砦で、デアリアの方から何かしらやって来た事は、有ったのか?」
ガイアンが、バルキエールに尋ねた。
「いえ、一度も…もっとも、司令官はああいった性格ですから、何かしら有っても隠しているかもしれませんが」
「とはいえ、誰か死んだりしていたら、全く隠しておける筈は無い…というか何であれ、全く隠しておくなんて事は有り得ないし」
「そうですか?」
「秘密っていうのは、存在した瞬間から大抵、知れ渡っているんだ」
「判ります」
「それでいて、広めたいと思っても中々、広まらない」
「判ります…間もなくです」
「え?」
「間もなく、デアリア領界と呼ばれてる所に、入ります」
とにかく、厚い雲に切れ目は、無かった。光が、白かった。
風は、強くなかったが冷たく、一行に丁度正面から、吹き付けていた。
辺境の地の、研ぎ澄まされた感覚。
陰鬱、と言われそうだが寧ろ清冽で、地平の先の山々の連なりは、厳しさと温かさと両方、感じられた。
「デアリア…」
ガルボックが、呟いた。
「これまで砦で、デアリアの方から何かしらやって来た事は、有ったのか?」
ガイアンが、バルキエールに尋ねた。
「いえ、一度も…もっとも、司令官はああいった性格ですから、何かしら有っても隠しているかもしれませんが」
「とはいえ、誰か死んだりしていたら、全く隠しておける筈は無い…というか何であれ、全く隠しておくなんて事は有り得ないし」
「そうですか?」
「秘密っていうのは、存在した瞬間から大抵、知れ渡っているんだ」
「判ります」
「それでいて、広めたいと思っても中々、広まらない」
「判ります…間もなくです」
「え?」
「間もなく、デアリア領界と呼ばれてる所に、入ります」