マサミチ 2

文字数 803文字

マサミチの作品は幸人の表紙を載せたまま、中堅どころの出版社から出版された。きっと、出版社の誰かが気に入ってくれたのだろう。
で、売れた。ファンタジー好きの半オタ、全オタ,激オタ達に売れたらしい。何部売れたかは知らない。
今度は新作が出るのだが、その表紙を受注した。そこに龍を載せろと言って来たのである。

出版社はイラストレーターもウチで用意しますと言ったらしいが、マサミチは幸人を指名した。
「ユキさんだったら、無理もきくから」
それが理由だと言った。
ふざけんなと言ったが「俺はずっとユキさんのイラストで行くから」と言われ、心がじんとして目頭が熱くなり、思わず「俺、頑張って勉強するから」と言ってしまった。

 初めてマサミチに会った時は驚いた。
マサミチは小柄でまるで女の子みたいに色白で華奢だったから。
「でか」
幸人を最初に見たマサミチの発した言葉はそれだった。
「ユキさん。バスケでもやってんすか?」
「そんなのやっていたらこんな所になんか来ねえよ」
幸人はそう言って笑った。
その時、マサミチは中学3年生だった。あんな緻密でどでかい物語を書いたのが中学生と言うのにも驚いた。
「キミさ、俺に18って言ったよね?」
幸人はマサミチを見て言った。
「だって、中学生じゃ会ってくれないでしょう?」
マサミチはそう答えた。

マサミチのオフ会メンバーは通常彼を入れて5人である。
メンバーは。
ハラグロ・・・どこかの大学院の院生。おおらかでおっさんみたいな印象がある。
アカネ・・・・触ると刺さりそうなゴスロリの美少女。まるでお人形さんみたい。
須恵器・・・愛想が良くて人の良さそうな高校生。
深海魚・・・髪を無造作に結わえた黒縁眼鏡の年齢不詳のお姉さん。
「こんな中三のガキと話をして何が楽しいのか」と幸人は思った。
だが結局彼もこのオフ会メンバーに混ざる運命だった。

「みんな小説を書いてアップしているのです」
マサミチは言った。
 あれからもう2年が過ぎた。
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