海 4
文字数 515文字
二人の足跡は転々と砂浜に残る。それを波が消して行く。
魚釣りの親子が通り過ぎる。バケツと釣り竿。バケツの中では魚が跳ねている。
彼等は陽気に笑いかける。
幸人は立ち止ってその後ろ姿を見送る。
「あれもAI?」
「そう」
未耶が答える。
「ねえ。未耶。72色の色鉛筆を持ってスケッチ旅行をした事を覚えている?」
「覚えているよ。私は幸人の記憶で出来ているの。だから幸人の記憶にある物は全部私の記憶でもあるのよ」
「ふうん・・・。そうか。あれは結婚して3年目だったかな・・・。春先だったね。伊豆半島の爪木崎で。水仙が咲いていた」
「海が綺麗だったね」
未耶が思い出す様に言った。
「あの時に未耶がスケッチした絵、まだ向こう側の家に飾ってあるよ」
「何でそんな事を思い出したの?」
「あの絵、こっちの家には無かったなって今、気が付いてさ」
幸人はそう言って笑った。
二人の姿は遠くなる。空は明るく風は爽やかだ。砂地に淡いピンクのハマヒルガオが蔦を伸ばして咲いていた。緑の葉が風で揺れる。
海に白波が立つ。ざざん・・・、ざざん・・とそれは繰り返す。
全てはアルゴリズムで記述されている。
完璧な世界。
そして。
永遠に時が止まった場所。幸人はそう呟いた。
魚釣りの親子が通り過ぎる。バケツと釣り竿。バケツの中では魚が跳ねている。
彼等は陽気に笑いかける。
幸人は立ち止ってその後ろ姿を見送る。
「あれもAI?」
「そう」
未耶が答える。
「ねえ。未耶。72色の色鉛筆を持ってスケッチ旅行をした事を覚えている?」
「覚えているよ。私は幸人の記憶で出来ているの。だから幸人の記憶にある物は全部私の記憶でもあるのよ」
「ふうん・・・。そうか。あれは結婚して3年目だったかな・・・。春先だったね。伊豆半島の爪木崎で。水仙が咲いていた」
「海が綺麗だったね」
未耶が思い出す様に言った。
「あの時に未耶がスケッチした絵、まだ向こう側の家に飾ってあるよ」
「何でそんな事を思い出したの?」
「あの絵、こっちの家には無かったなって今、気が付いてさ」
幸人はそう言って笑った。
二人の姿は遠くなる。空は明るく風は爽やかだ。砂地に淡いピンクのハマヒルガオが蔦を伸ばして咲いていた。緑の葉が風で揺れる。
海に白波が立つ。ざざん・・・、ざざん・・とそれは繰り返す。
全てはアルゴリズムで記述されている。
完璧な世界。
そして。
永遠に時が止まった場所。幸人はそう呟いた。