ハラグロ

文字数 1,622文字

参加者№2 
ハラグロ。
ハラグロは昨年K工業大学の院を卒業して、某メーカーに勤めている。 
「業種はなんスか?」と尋ねたら「繊維」と答えた。オフ会メンバーは「グロさん」と呼んでいる。大学、大学院時代にはサイトをブイブイ言わせていたらしい。
「もう、ホントに忙しくてさ。最近はたまに見るだけ」
ハラグロは言った。
「ハラグロさん。新しい女の子を呼ぶからって言ったら、来るって言ったんです」
マサミチが言った。
「お前、本当にそいつは女なんだろうな」
ハラグロが言う。
「多分女だと思いますよ。年齢は、大体、21,2ってとこですね」
マサミチが答える。
「キターーーー! いい! それいい! だが、何を根拠に?」
「作品を見て」
「はあ?」
ハラグロのテンションは半減する。
「女子ならいるでしょう。ウチにだって。アカネと深海魚さん」
「あのヒト達、あんまし女って感じがしない。悪いけれど・・・アカネなんて人間に見えない時もある」
「ああ、確かに。マネキンの真似をさせたらピカ一ですよね」
「あんなんでホラー書いてんだから余計に怖いわ」
「彼女の書くホラーはじわじわと怖くなるタイプですね。心の奥底の不安や恐怖を呼び起こす様な・・・残酷なシーンもあるのでR15です。」
「やめようぜ。この話は。俺、怖くなってきた」
ハラグロはぶるりと震えた。
因みに愛想が良くてにこやかに微笑む高校生「須恵器」の作品はサイコパスVS半グレ詐欺師集団。
それがなかなかの人気だそうだ。堂に入ったサイコパス振りで、もしかしたらこの作者は実はサイコパスなのではないのかと密かに噂されているそうだ。こちらもR15。
深海魚さんは実はシステムエンジニアで、その小説はAIとアラフォー女のどろどろの不倫劇だそうだ。これは勿論R18。
「マサミチ、18になって無いじゃん」
幸人が言う。
「今更、何を言ってんすか?」
そう言ったマサミチに「それは世の中のルールに反するな。良くない事だ」とハラグロが取って付けた様な神妙な顔で返す。

ハラグロはマサミチを追求する。
「ところでお前、自分の年は幾つって言ったの?」
「俺、21って言いました」
「お前、俺ん時も21って言ったよな。ホント、嘘付きヤローだよな」
「良いじゃ無いすか。もう、そんな古い話。ねえ、ユキさん」
マサミチが幸人に話を振る。
「マサミチ、俺には18って言った」
幸人が言った。

「その人、すげえ、SF書いているんすよ」
マサミチは話題を変えた。
「ふうん」
「めちゃくちゃ筋の通った本格SF。マニアック過ぎてあまり人気は無いのですけれどね。
でも、表現がなんとも綺麗でうっとりする感じです。あの感性は女性ならではですね。
只モノじゃないですよ。その人。ニックネームは『セリ』。これ、やっぱ女ですよね?」
「セリ? あの宮城らへんで食されているセリの事? マサミチ、電話はしていないの?」
「していない。メールだけ」
「お前なあ・・・。電話ぐらいしろよ。すげえおっさんだったらどうすんの? お前、責任取れんの?」
ハラグロが言う。
「何の責任だよ・・・しかし、セリっつうおっさんか・・・」
幸人が口を挟む。
「別に俺はそれでもいいっすよ」
マサミチが返す。
「いいのはお前だけだよ!」
ハラグロが言う。

マサミチのスマホの着信音が鳴った。彼はスマホを確認する。

「あ、ちょっと、アカネさん、遅れるそうです。先にやっていてくれって。深海魚さんと須恵器さんは今日は欠席です」
「ふうん」
「じゃあ、お言葉に甘えて、セリさんが見えたら先にやっていましょう」
マサミチが言った。
幸人は椅子をひとつ指差して言った。
「もう一人は?」
「ああ。アカネさんが一人連れて来るのです。えっと、ニックネームは「トム&ジェリー」さんです。彼らはユーチューバーです」
「トム&ジェリー? 二人組?」
「普段はペアで活動しているみたいですよ。今日来るのはジェリーさんですね。最近、うちらのサイトに出没しているのです。この方は9割がた女性ですね」
マサミチは言った。

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