対極にあるもの 2

文字数 884文字

「幸人、霊には知性や理性は無くても感情は有るのかしら?」
「どうかな・・・? でも、あるんじゃないの。面白いとか、ムカつくとか。好き嫌いはあるんじゃないの? だから、祟られる人もいるんだよ。きっと」
「じゃあ、AIは?」
「そりゃ、学習すればAIだって感情を持つだろう? AIは底無しに学習するから、感情だって理性だって悪意だって、冷笑だって、何だって習得できると思う。でも、魂だけは、『霊』だけは得る事が出来ない」

「それって、ホモサピエンスとは違う、新しい人類って言えない事も無いわね」
「ヒューマノイドか・・・昔はSFだと思っていたけれど、実現するのかも知れないな」
「それで、人間は駆逐されてしまうのかしら? 遠い昔に新人類が旧人類を駆逐してしまった様に」
「AIと人間の戦いか? それは嫌だな。ターミネーターやマトリックスみたいな話だ」
「でもね。コロナウイルスだって、まるでパニック映画の中のパンデミックそのものだったでしょう? あんな事が本当に起こるなんて誰も思っていなかった」
「まあ・・・そうだけれどさ」

幸人は窓の向こうを見ながら呟いた。
「いい天気だな。今日は・・・土曜日か。何だか時間の過ぎるのが曖昧で・・・ずっと初夏の気候のままみたいに感じるのはどうしてだろう・・・」
 食事を終えた未耶は椅子から立ち上がって幸人の後ろに回った。幸人の肩や背中をマッサージする。
「ここの所、ずっと仕事に集中しているから、疲れたんじゃ無いの?」
 幸人の頭に両手を置いて指で頭をマッサージする。幸人は目を閉じて「うん。きっとそうだね」と答える。
「今度のゲームのキャラクターデザインが今一つ・・」

 未耶の指は本当に気持ちがいい。幸人は未耶に頭をマッサージしてもらうとそれだけで疲れが取れる気がする。癒されて瞼が重くなる。
「今度はいつみんなで会うの?」
未耶の声が遠くから聞こえる。
「みんな?」
「コシアブラ」
「ああ・・。そう言えば、ここの所連絡が無いな。そろそろ来るんだろうな」
「幸人。散歩に行こう。頭をすっきりさせて、それからまた考えればいいんじゃないの?」
 未耶がそう言って幸人は頷いた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み