父さんが出張でいなかった日。

文字数 1,219文字

「父さんが出張でいなかった日の事を覚えている?」
幸人が言った。

「幸人の家で一緒に映画を観たよね」
未耶が返した。
「そうそう」
「古い映画だったよね。覚えている。すごく長くてすごく良い映画だったよね。あれ、泣けたなあ」
未耶が言って、幸人は笑った。
「嘘ばっかり」
「何で? 嘘じゃ無いよ」
「最後まで観ていないじゃん。未耶も俺も。まあ俺は前に一度観ているけれどね」
「何を言っているの。あの後で途中からもう一度見直したでしょう」
「あれ? そうだった?」
幸人は首を傾げた。

「父さんの部屋には古い映画のDVDが一杯あって、俺は時々それをこっそりと盗み見したんだ。マジで凄い場面が一杯あって、俺はどきどきしながら見たんだ。あれで俺は大人の世界の事を色々と学んだな」

「あれ、狙っていたよね。幸人」
「未耶だって狙っていた」
そう言って幸人は未耶の首筋に顔を寄せた。

未耶と一緒にソファに座って映画を観た。
未耶は腰が隠れるゆったりとした白いシャツに黒のタイトなロングスカート姿。後ろにスリットが入っていた。光沢のある黒のストッキングを履いていた。シャツからちらりと見えるインナーも黒だ。
薄いストッキングから透けて見える赤いペディキュアが色っぽくて幸人はそれから目が離せなかった。
初めは離れて座っていたが、次第にその距離が縮まり、いつの間にか未耶の太腿が幸人に密接した。幸人はドキドキしながら視線は映画に向ける。もう内容なんか入って来ない。未耶が幸人にもたれかかる。幸人は未耶の体に腕を回して口付けをする。

「ねえ、幸人。さっきの映画を真似してみようか」
未耶がそう言って立ち上がった。
未耶は幸人の前でゆっくりとスカートを脱いだ。シャツのボタンをはずして黒のタンクトップ姿になった。
「それも脱いで」
幸人が言った。

黒くて刺繍の付いたブラとそれに包まれた白い胸が見えた。黒いパンティトッキングに包まれた下半身の黒くて小さなパンティ。未耶はその上から白いシャツをふわりと羽織るとちょっとポーズを取って言った。
「これでハイヒールを履いたら、さっきの映画の主人公みたいでしょう?」
「すげえ・・・。それじゃ、うんとエロく俺を誘って」
幸人がそう言うと、未耶は「あら?」と言って、足を開いて幸人の膝の上に座り、体を寄せて首に腕を回した。幸人の腕が未耶の腰を引き寄せた。

 ベッドに潜った幸人は昨夜の事を思い出す。昨夜は未耶と性交をして、そしてそんな話をしながら眠った。裸のままで未耶を抱いて眠った。夜中に目覚めてシャワーを浴びて仕事をした。未耶が起きて来た。シャワーを浴びて、少し起きていたが先に布団に入った。
明け方近くに未耶の隣に潜り込んで少し眠った気がする。

最近、昔の事が良く頭に浮かぶ。うんと小さい頃の事や亡くなった母親との事。まだ高校生で未耶と付き合っていた頃の事。そんな事が取り留めも無く頭に浮かんで来る。
未耶はそのまま朝まで眠っていた。
あの映画をまた未耶と一緒に観たいと思った。
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