koshiabura   5

文字数 623文字

 電話の着信音は鳴り響く。
 幸人はスマホを取り上げると着信を切った。
「出ないのですか?」
 マサミチが言った。
「出ない」
「どうして?」
「だって、知らない番号だし、それにいたずら電話だから」
「どうしていたずらだって思うのですか?」
 幸人は嫌な気分になった。
 何だか今日はおかしい。みんながおかしい。質問攻めじゃないか。
 普段は俺になんか構わないで好きにしゃべっているのに・・。どうしたんだ?
 いや、変なのは俺なのか? 俺もこの所ちょっと変だ。何か変だ。
 頭がぼんやりとして、思考がまとまらない。
 てか、今日って何日だっけ? 何月の何日? 今って季節は・・・初夏?
 幸人は暗い窓の外を見る。

「ユキさん。大丈夫ですか?」
 マサミチが言った。
 幸人はふと苛ついた。
「知らねーよ。俺が知るかよ。向こうは警察とか何とかだとか言って・・」
 幸人は黙った。スマホを見ている。
「警察が? 警察が何だって?」
マサミチが聞き返す。
「君には関係無いよ。詐欺だよ。詐欺の電話だ」
 幸人はぽつりとそう言った。

 ノックの音が聞こえた。
「はい」
 マサミチが返事をした。
「失礼します。お待たせいたしました。ジェリーさんをお連れしました」
 アカネが入って来た。相変わらず一分の隙も無いゴスロリで固めてある。人形みたいに整った顔がにこりともせずにそう言うと自分の後ろに控えた女性を先に通した。
 部屋に来た女を見て幸人は思わず立ち上がった。
「博美・・・」
 そう言ったまま茫然と立ち竦んだ。
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