第137話 飾らないワタシ 1 ~防衛本能~ Aパート

文字数 7,735文字


 嫌な汗をまとわりつかせたまま、一旦応接室を出る私。と同時に大きく息を吐き出す。しかしどうしてこんな事になってしまったのか。初めの話ではそれを見ている人と、当事者は関係なかったはずなのに「第三者」と言う言葉に乗せられた感が強い。それにあの鼎談の時の会話を、ああも鮮明に覚えている物なのか。そこからして既に怪しい。
 もういっそのこと何もかもが初めからそのつもりだった。そう言われた方がしっくりくるぐらいの会話運びだった。
 優珠希ちゃんにしても、優希君にしても、あの教頭先生も……いったいどこでそんな会話の勉強をしているのか。
 私が勝手に勢い込んで話を展開していたつもりになっていただけで、実際は完全に主導権を握られるだけでなく、会話まで誘導されている事にも気づけなかった。ここまで来ればもう滑稽と言っても差し支えないんじゃないのか。
 それにここまではっきりと言い切れるって言う事は、学校側はその全容を掴んでいるって事じゃないのか……まあ雪野さんに何の事情聴衆もない上に、五人の生徒に対しては処分を出しているのだから、知らないと言う事はないのか。
 とにかくこのまま立っていても仕方がないから、優希君が待ってくれている図書室へと向かう。
 優希君と言えば妹さんだ。今日の事は明日、可愛……さが無くなってきている後輩二人にみっちりとお説教をするとして、それを差し引いたとしても雪野さんと彩風さん、中条さんだけでも仲直りをさせるのに頭を相当痛めそうなのに、御国さんと、特に優珠希ちゃんと雪野さんを会わせるだけで……どうなるかすら分からない。
 しかもそれを一か月でどうにか出来るとは思えない。
 更に今回は得点無しか、満点しかないから、私からしたらごまかす事も出来ない。それであの腹黒の分は得点無しとか言う始末なのだから本当にあの腹黒には腹立つ他ない。どうしてそこまで私を目の敵にするのか。
 まあ逆に言うと教頭先生の方は満点でもあるのだろう……いや、これでも得点はおまけしていると言われた以上、そう言う訳でも無いのか。もう何から何まで向こうのペースで、実祝さんのテストの話すら何も出来なかった。
 ただ一つ分かったのは、教頭先生と話をするとものすごく気力と体力を使う事だけだ。これを平然とやってのける倉本君はやっぱりすごいのだと思う。
「……」
 疲れた体を引きずって図書室に入った時、優希君と実祝さんが明日のテスト対策なのだろう。一つの机で勉強している姿が目に入る。
 夏季講習の時から実祝さんの事をお願いしていたのは確かに私なのだけれど、どうしてこうも優希君の周りには女の子ばかり寄って来るのか……でもみんな私の友達でもあるのか。
 いやでもどっちにしても、彼女である私が姿を見せたのだから、普通は一番に彼女である私を労ってくれても良いんじゃないのか。まあ、そんな事は恥ずかしいから口にはしないけれど。
「お待たせ優希君。仲良く明日のテスト対策?」
 朝は彩風さんで、昼はあの女生徒A。そして放課後は実祝さん。
「愛美……」
 まあ、実祝さんのその表情で、実祝さんの方には全くその気がない事は伝わって来るから良いけれど。
「明日のテストも手、抜いたら怒るよ」
 それを別にしても、実祝さんのお姉さんから距離を取る事に対して釘を刺されているから、優希君もいる手前あまり露骨な態度を取る訳にもいかない。

 その間に優希君の方も私の隣に移動して来てくれている。本当なら優希君に相談と言うか、少し聞いてみたい事もあったのだけれど、まさかこの状態で実祝さん一人放っておく事なんて出来るわけもなく、テスト対策のため、一旦三人でノートを広げる。


「愛美さんそろそろ下校時刻だって」
「愛美。すごい集中力」
 さっきの教頭先生とのやり取りを忘れるために集中していたから、少しやり過ぎていたかもしれない。
「ごめん。すぐに準備するから」
 特に不都合なことは無いのだけれど、さっきの話からこっち、どうも本調子じゃない気がする。
「今日は先帰る。今度こそ二人の邪魔はしない」
 その間に短く一言断って、先に帰っていく実祝さん。明らかにあの日の朝の廊下での事を意識している事が分かってしまう。そんな姿を見てしまったらさっきまでの気持ちも合わせて消えて行ってしまう。
「ちょっと優希君?! ここ図書室だよ」
 実祝さんを見送った後、いくら下校時刻の図書室とは言っても、生徒が全くいない訳じゃ無い中、私の手を取っての恋人繋ぎ。
「でも愛美さん何だか元気ないし。ひょっとして教頭との話、あんまりうまく行かなかった?」
「そんな事はないよ。雪野さん交代の話はこのまま立ち消えになると思う」
 一度図書室から出て、そのまま昇降口へと向かう途中、さっきの私への課題以外の事は喋ってしまう。
「え? でもそれってすごい事なんじゃ」
 本当にその通りなら、私だって優希君に抱きついて喜びを表したい。ただ、教頭先生の課題の人物の内の一人が絶壁に近い。しかも課題の話は禁止だって言われたから、どう厳しいのかも何も具体的な事は言えない。
「……ねぇ。優珠希ちゃんと雪野さんって仲良くなれると思う?」
 でも協力を頼むのは良いのだから、聞くくらいは良い気がする。だからその絶壁の一ケ所を、他の誰でもない優希君に聞くも、
「そんな事をしようものなら、また浮気だとか言って僕が半殺しにされるか、家出したきり帰って来なくなるとか、何をしでかすか分からないからそれだけは無理。辞めて」
 家出とか半殺しとか……私の想像以上の絶壁っぽい。まあ、優希君絡みのトラブルには枚挙に暇がないのは間違いない。
「えっと……半殺しってすごく物騒なんだけれど、そんなに優珠希ちゃん雪野さんの事駄目なの?」
 いや駄目なんだろうけれど。
「もちろんだよ。だって僕と愛美さんを引き裂こうとした人って言う扱いない上に、僕が苦手な香水の匂いまでこすり付けたって思ってるし、更に僕が浮気する原因となった女だとか言って、毛嫌いって言うレベルじゃないし何より、雪野さんの名前を出すだけで物か手か足が出るのは間違いないよ」
 朱先輩の印象よりも悪そうにしか聞こえない。まああの口にするのも憚られるような言い方をするくらいなんだから今更ではあるのだけれど、
「もう一つ聞きたいんだけれど、何で妹さんってあんなに力が強いの?」
 私との時、放課後のトラブルの時、どう考えても並の男子よりも力自体強い気がする。 (26・53・91話)
「男の人と喧嘩するのに力が必要だったのと、園芸用品って重いのが多いから、本当にマメに真面目に活動すると、腕力も筋力も付くよ。それに、園芸部自体元々の活動者は少なかったから余計にね」
 さすがに前半部分はごまかしたくらいは分かったけれど、それでも後半部分の妹さんの事について教えてもらえたのは嬉しかった。ただ、どう考えても教頭の課題を達成できなさそうな実感が沸いた分だけマイナスになった気はする。
「さっきの教頭先生との話と、優珠に何か関係があるの?」
「ごめんね。これは私の課題だから協力をしてもらうのは良いけれど、話すのは駄目なんだって」
 あんな聞き方をしたら優希君じゃなくても気になるに決まっているか。
「……それって倉本も知らない?」
 あの週末の公園で、倉本君に対する優希君の嫉妬を聞いてからこっち、本当に倉本君に対しては気持ちが露骨だ。その気持ちは嬉しいけれど、私が倉本君に惹かれる事はまずないのに、ってそう言えば
「倉本君と言えば、今朝はまた随分と彩風さんと仲良さそうだったじゃない」
 昇降口で靴を履き替えた私たちは学校の外へ向かいながら、優希君と口付けまでしたのにまだ倉本君の事を気にしてくれる優希君に探りを入れる。
「いや仲良さそうにって言うか、普通に世間話をしてただけだって」
 思った以上に優希君が必死なのが怪しい。
「世間話だって言うなら、今ここで私が聞いても問題無いよね」
 私は一度立ち止まって優希君の胸に手を添える。
「でも他人との会話をあまり口軽く喋るって言うのは……」
 言いもって、ここが通学路の途中にもかかわらず、私の背中に手を回す優希君。
「優希君は私との間に、まだ秘密を作るの? ……ふぅん」
 だけれど、私が納得できるまでは優希君の希望は叶えてあげない。私は面倒くさいのだから私が一番でないとやっぱり嫌なのだ。しかもあの必死さなら絶対私の事か、私には言えない事か何かの話をしている気がする。
「秘密って……愛美さんを泣かせるような事はしないって僕はもう決めてるのに」
 なのに、優希君自身が私に拗ねて見せて来る。優希君の事を好きになるまで全く知らなかった優希君の素顔。
「……雪野さんの事?」
 それらを分かった上でも、私もまた優希君にも素直に聞いてあげない。
「それとも彩風さん自身の事?」
 少し反応してくれたけれど、何となく肩が落ちたのが気になる。
「じゃあ、私の話をしてくれていたの?」
 私の知らない所でも私が中心なら、そんなに悪い事ではないのかもしれない。もちろん好きな人から陰口を言われていたら寂しいけれど、優希君に限ってそれは無いと思うから、そこは安心している自分もいる。
「って言うか、愛美さんの中で倉本の事があまり気にならなくなってるって言う話をしたら、彩風さんが喜んでたよ」
 男の人の心境はイマイチ分からないけれど、喜んでくれている事だけは分かる。
「なのに、まだ私と倉本君の事が気になるの?」
 だったらそこは信じて欲しかったりするのもまた、女心なのだ。
「……だってさっき愛美さん、倉本に可愛い笑顔を向けたから。倉本とまた何かあった?」
 可愛い笑顔って……思わず笑いそうになる。確かに倉本君も、私の笑顔にびっくりしたような表情を浮かべていたっけ。男女で色々思う事や考え方は違うのに、そう言う好きな人の一挙動を見る所だけは変わらないみたいだ。
「倉本君とは何も無いよ。ただ彩風さんとの約束をちょっと考え直そうかと思って」
 それに、優希君が仲良くする事で、朝元気の無かった彩風さんの元気が少しでも戻った事は間違いなくて。彩風さんを気遣った事が分かった以上、私には何も言えない。
「彩風さんへの元気付けと、雪野さんの事に気付いてくれてありがとう」
 悔しいけれど実際の所、私には雪野さんの置かれている現状を見抜く事が出来なかった。その上、優希君だけが見抜けたと言う事が輪をかけて悔しい。
 だったら本当に今更感もあるのだけれど、私がより雪野さんを理解できるように、雪野さんとの時間を長くするしかない気がするの――
「――?! ちょっと優希君?! ここ通学路の往来だよ?!」
 今後私として、雪野さんとどう付き合っていくのかを考えていた最中(さいちゅう)に、まさかの優希君からの口づけ。いやまあ体勢だけを見たらそんな体勢に見えない事は無いのだろうけれど、
「今朝は仕方なく我慢したけど、放課後の統括会の時の事を考えたら愛美さんも感謝してくれてたし」
 何が感謝してくれてたなんだか。あれだけ彩風さんとのイチャイチャを目の前で見せつけられた事にまだ納得してないっての。なのに一人満足そうな顔をして開き直っているし。
 自分は倉本君との事を強く意識しているくせに、私の雪野さんに対する悔しさには全然気づいてくれないまま、私に対する“好き”を頑張ってくれる優希君。こう言うのも男女の差のような気がしなくもない。
「感謝はしているけれど、今日は一日ナシって言ったよ?」
「でも愛美さんから今日一日は長いみたいな事も言ってくれてたし」
 本当に私の事をちゃんと見てくれているんだなって分かる、伝わる。
「じゃあ今度は、恥ずかしいから人の少ない場所で、もう一回優しくして欲しいな」
 だから今度は公園に寄って、私の希望通り優しく口付けをしてもらう。


 結果。今日はなんだかんだ言いながら、朝の通学路と邪魔な女生徒Aはいたけれどお昼も優希君と一緒だったし、今の夕方の帰路と一日を優希君で始めて優希君で締める事が出来た。
 だから家の事もいつもより楽しく出来た。その中でもさらに驚いたのが、慶が今日も自分でお弁当箱を洗っていた事だ。しかも少しずつうまくなっているのか、以前のような洗い残しも見当たらない。
 まあ慶いわく、これくらいは自分でするとの事だけれど、それはそれで何か違和感が付きまとう。何か下心があるのは間違いなさそうだ。もっとも慶の下心とは言ってもお昼代とか、お小遣いの事だろうし、不機嫌な日にはまた口も聞かなくなるんだろうけれど。
 ただどっちにしても明日はテストだから作る余裕は無いと言う事にして、一通りの事を済ませた後、自室へと戻る。

 そして今日は先に咲夜さんに電話をしてしまう。
『どうしたの?』
 ところが咲夜さんの電話口がそっけない気がする。
『元気が無いように聞こえるけれど、何かあったの?』
 ひょっとしたら、放課後蒼ちゃんのと話したのが、咲夜さんまで聞こえていたのかもしれない。
『何もないけど、朝。愛美さん何か言いたそうだったから』
 朝の勘違いの事の方か。
『朝の事、気にしていたのならごめんなさい。二人の事に気付くまでは実祝さんがあれだけ言われていたのに、咲夜さんは何をしているのかなと思っちゃって』
 私の単なる早合点のために、一日中咲夜さんも気を揉んでいたとなると私も反省しないといけない。
『それと。金曜日の健康診断、よろしくね』
 無理矢理巻き込んだのは気が引けたのだけれど、それでも咲夜さんグループに入れておくのもまた、咲夜さんの本意じゃないだろうし、前に咲夜さんが一度口にした私中心のメンバーないしはグループの話。私なりに考えて咲夜さんに声を掛けたつもりだったけれど
『その金曜って、本当にあたしでも良いの?』
 今日の放課後の話もやっぱり聞こえていたのかもしれない。頑なに咲夜さんの事を(きら)う蒼ちゃんの事が気になって仕方がないんだと思う。
『私が咲夜さんと一緒にやりたかったから。じゃ駄目?』
 それでなくても週末の金曜日は、蒼ちゃんが休むと言ってしまっているのに。ただこの事は絶対蒼ちゃんと一緒にしたいと願っている私が言う訳がない。
『ううん。嬉しい。ありがとう愛美さん』
 その私の気持ちが少しずつでも伝わったのか、素直にお礼を言われる。
『ううん。こっちこそ。実祝さんの意図にちゃんと気付いていくれてありがとう』
 だったら些細な事だけれど、ほんの少しでも気を揉む事が無いように、もう一度だけお礼を口にして明日はテスト。
 少しでもテスト勉強をしてからベッドにもぐりこむ事にする。


 今日の学力テストに於いては、いくら範囲が夏休みの分だけだとは言っても、私の夏休みの課題が終わったのは8月16日で、それ以降は夏季講習と習熟度テストの方に力を入れていたから、明日のテストについてはほとんど手つかずと言って良いくらいだった。
 しかも優希君の話を昨日聞いた限りだと、雪野さんと優珠希ちゃんを仲良くさせるだとか、ただの絶壁じゃなくて、断崖もつけないといけないくらいだと言う事が分かっただけだった。
 そんな事も考えながらテスト勉強を咲夜さんとの電話の後でしていたから、中々捗らなかったのか寝るのが遅くなってしまった。
 その上、昨日の放課後の蒼ちゃんの事を思うと、最低でも『健康診断』当日までに、何とか蒼ちゃんときっちり話をしないといけない。
「……寝過ぎた」
 そう思っていた所で、まさかの寝坊。
 ただ寝坊とは言っても普段から時間に余裕を持たせているから遅刻と言う程ではない。ただ蒼ちゃんを待ち伏せする事を考えると明らかにお弁当を作る時間はおろか、朝だって怪しいくらいなだけだ。
 今日から雪野さんとお昼をすると言っているのに、これはこれで幸先が悪すぎる。
 心の中で嘆きながら手早く着替えて、今日は時間がないからと先にリップを引く。

「ごめん慶! 今日は時間が無くてご飯も何もないから適当に食べて行って! その代わり今日の夜は慶の好きな物作ったげるから」
 慶の返事もそこそこに、必要最小限だけを口にした私はそのまま家を飛び出す。こんな場面をお母さんに見られたらお小言を貰うか、お母さんが家に戻るとか言われそうだと思いながら。
 その甲斐もあって、いつもの公園についた時にはまだ蒼ちゃんが家を出る前の時間だった。
 だから蒼ちゃんが家から出て来る前に、改めて公園で出来る身支度を整えてしまう……けれど、あまりにも急ぎ過ぎたためにポーチ自体を持って来るのを忘れてしまったから、ハンドタオル一枚しかなかったけれど。
 改めて簡易的にではあるけれど身支度を整えたところで、蒼ちゃんの姿を見る事が出来たから、
「蒼ちゃん! 一緒に登校しよう」
 駆け寄る。
「――っ! びっくりしたぁ。今日はまたどうしたの?」
 まずは蒼ちゃんの普通の態度に安心する。
「今日は蒼ちゃんと一緒に登校したくて……」
 そして4日の『健康診断』の話がしたい。
「もちろん蒼依は嬉しいけど、その愛ちゃんの様子だと昨日の話? 4日の話?」
 本当にこんな時、相手の考えている事が分かるって言うのはやりにくいと思う。
「蒼ちゃんは私と一緒に何かをするのは嫌?」
「愛ちゃんと二人でするのは、どんな事でも楽しいんだろうなって事くらいは蒼依でも分かるって」
 当然考えている事が分かるって言うのは、お互いの意図が分かるって言う事でもあるのだから、そのやり難さにも拍車がかかる。
「でも蒼ちゃん、クラスメイトとも咲夜さんとも全然喋っていないって嘆いてくれていたよね」 (43話)
 でもそのやり難さは私だけじゃなくて、お互い様だと思うのだ。
「愛ちゃんの言いたい事も分かるけど、それは初学期の時の話の上、中頃の話だから今となっては昔の話だよ」
 だけれど蒼ちゃんは自分の心の持ちようが変わっただけだと言う。
「それに愛ちゃんと一緒に何かをするのは、別に学校に限定しなくてもたくさんあるよね」
 違う。そう言う事じゃないのだ。どう言ったら伝わるのか分からないけれど、それは違う。この伝え方が分からないもどかしさが何とも言えない。
「でも蒼ちゃんがせっかく声を掛けてくれた実祝さんも、心配してしまうんじゃ? 昨日実祝さんの方から、蒼ちゃんが声かけてくれたのなら頑張るって言ってくれたんじゃなかったの?」
 本当は咲夜さんの事も話題に出したかったのだけれど、現状の蒼ちゃんだと余計に態度が硬化しかねないからと口に出す事を避ける。
「それでも先生の求めた人数は満たせるから、蒼依が四日休むことに変わりはないよ」
 こればかりは先生が悪いとは言えないけれど、どうして3~4ってあいまいな言い方をしたのか。その上、蒼ちゃんの事は先生には話さないって決めてしまったのだから、この件に対して文句も言えない。 (93話)
「だからまた何かあったら蒼依にも声かけてね」
 私が言い返せずにいたのを、それで話題終わりと捉えたのか、蒼ちゃんが私の手を取って、以降今日叱る予定の後輩二人の話を中心に登校する事になった。

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