第17話

文字数 804文字

 男子の一人がみんなに背中を押されて、詩織ちゃんに近づきます。まるで危険なロボットの性能をテストするみたいに、おそるおそるといった具合に、かちかちに固まった詩織ちゃんを一通り眺めます。

「動かないぞ」
「なんだこれは」

 マネキンを相手にしているみたいに無遠慮に、男どもは詩織ちゃんに群がりました。

「ちょっと胸触ってみろよ」
「そんなことできっかよ!」
「へー、照れてやんの」
「お前やれ」
「いや、お前が……」

 私はとにかく言葉を探していました。説明を、説明を……。いつもなら言葉よりも先に手が出るのですが、それだけ混乱していたということだと思います。

 そこへミナミちゃんが前に出てきて、言いました。

「そのロボットを人間に変えましょうか」

 私は目を丸くしました。えっ、そんなことできるの。
 みんなも私とおんなじ顔をしてミナミちゃんのほうに注目します。彼女は詩織ちゃんのほうへ歩み寄って、周りに群がる男子を全員下がらせました。そして「後ろを向いてください」と指示します。みんなはすなおに後ろを向きました。

「いいと言ったら振り返ってください。人間になってますよ」

 私も思わず後ろを向いたのですが、ミナミちゃんは「バカ」と小さく言って、私と詩織ちゃんに携帯電話を見せます。そこには、数枚の写真がありました。驚いたことに、今日この場に集まった「新しい人」と、詩織ちゃんがいっしょに写っていたのです!
 つまり、ほんとうは初対面じゃなかった、ということでしょうか。
 
 詩織ちゃんの表情がぱっと明るくなりました。

 ミナミちゃんは「よし」と言って、みんなに伝えます。

「こっち向いていいよ!」

 みんなが振り返った時、そこにはびっと手をあげた、笑顔の詩織ちゃんが立っていました。

「眞見詩織です。はじめましての人はよろしくね!」

 よかった、と私は安心します。
 しかし横にいるミナミちゃんは、露骨にうっとうしそうに詩織ちゃんをにらんでいました。
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