第18話

文字数 1,038文字

 
 詩織ちゃんがみんなに挨拶できたあとのことです。

 私たちは公園で遊ぶみんなから離れて、輪になって話していました。ミナミちゃんは明らかに機嫌が悪そうでした。
 私はなにが起こるか不安だったので、友達の実里ちゃんを頼りにして話し合いに参加してもらいました。だからその場には私と実里ちゃん、詩織ちゃん、ミナミちゃんの四人がいました。

「あの合成写真はね、昨日お兄ちゃんに作ってもらったの。おにい、こういうの好きだし」

 とミナミちゃんが明かします。

「合成写真だったの!」私は驚いて言いました。
「あの、ありがとね。ほんとに助かった」と詩織ちゃん。

 ミナミちゃんは「バカ」と詩織ちゃんを睨みました。

「あんたね、いつまでこんなことを続けるつもりなの?」
「えっ……」詩織ちゃんがびくっと震えます。
「だれかと会うたびに人を煩わせるつもり? どんだけ甘えてんのよ。いい加減覚悟決めろっつうの」

「ちょっと待って」と私は言います。ミナミちゃんをなだめるように、詩織ちゃんとの間に入りました。「あのね、これには事情があるの。サオリちゃんとは喧嘩をして、それで詩織ちゃんは初対面でもがんばらなきゃいけなくて……」
「バカは黙ってなさいよ!」

 ミナミちゃんは怒り心頭です。私はすごすごとあとずさりして、黙るしかありませんでした。
 助けを求めてちらりと実里ちゃんを見ると、実里ちゃんは困ったような顔をしていました。しかし、すぐに覚悟を決めて、控えめに、けれど毅然として、ミナミちゃんに立ち向かっていきます。

「あの、私にはよく事情がわからないんだけど、そんな風に怒鳴りつけたって詩織ちゃんが怯えるだけだよ。もうやめなよ、ミナミちゃん……」
「事情がわかんないなら口を挟んでこないでよ」
「かりかり怒ってる人より、事情がわからない人のほうがましだと思うけど……」

 いま思い出しても、この実里ちゃんの返事はかなり挑発的でした。実里ちゃん本人にはあまりその自覚はなかったかもしれません。その悪意のなさが良かったのか、ミナミちゃんは何か言い返そうとして、しかし結局、矛をおさめたのです。

 私はすぐ、実里ちゃんにこれまでの経緯を説明しました。詩織ちゃんは人見知りがひどく、双子で入れ替わってしのいでいたこと、そして、もうそのワザが使えなくなってしまったこと……。実里ちゃんはフムと言って、哲学者みたいに額に手をあててちょっと考え込みました。

「まず訊きたいんだけど、そもそもミナミちゃんはどうしてこんな合成写真を用意していたの?」
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