第22話

文字数 1,058文字

 翌朝のことです。窓ががんがんと鳴っているので何事かと思って開けてみると、そこに詩織ちゃんが立っていました。顔を真っ青にして「サオリがいない!」と叫ぶのです。

「なんとか話そうと思って、さっき部屋に行ったらドアにこれが挟んであって」

 詩織ちゃんに渡された紙を見て、私はびっくりしてしまいました。そして昨日、サオリちゃんが言っていた「私に考えがある」という言葉を思い出したのです。
 そこにはこう書いてありました———みんなにバラしてやる、と。

 私はすぐにミナミちゃんに連絡しようとしました。

 しかしどれだけ探しても、電話番号の書いたメモが見当たりません。いや、そういえば、と気が付きました。ミナミちゃんは私に携帯番号を教えるのを嫌がって、どれだけねだっても結局叶わなかったのでした。「あんたに教えるとうるさいんだよ」それがミナミちゃんの言い分でした。きっと、なにかあるたびに電話がかかってくると思ったのでしょう。詩織ちゃんの携帯電話はサオリちゃんに持っていかれてしまったようでしたし、私はいったいどうしたらよいのやら、頭がくらくらしました。

「ミナミちゃんに番号自体は教えてもらったんでしょ。なら覚えてないの?」と私。パニックです。
「アドレス帳に登録してるのに、覚えてるわけないじゃない!」と詩織ちゃん。
「そういうものなの⁉」私は携帯電話を持っていません。

 どうしようどうしようと部屋を駆け回るうち、その騒ぎを聞きつけてお母さんが部屋に飛び込んできました。そして窓の向こうの屋根に立っている詩織ちゃんを見て「ええっ」とびっくりした声を出します。「誰よ、その窓の子は!! なんでそんな……!!

「お母さん!! ミナミちゃんの携帯番号知ってる⁉」
「知るかぁ!!」お母さんがこっちに近づいてきます。

 怒られる気配を感じた私は窓を乗り越えて、詩織ちゃんの手を引いて飛び降りました。詩織ちゃんの悲鳴と、それからお母さんの悲鳴が聞こえますが、私は気にしません。屋根から飛び降りることぐらい、私からすれば日常茶飯事です——いや、みんなにとっては違うかもしれませんが、ともかく、私にはそうなんです!

 やわらかい土の上に着地し、玄関ですばやく靴を履きます。ほとんど腰を抜かしている詩織ちゃんの手を引っ張りました。学校に向かって走り出します。「このバカぁ!!」お母さんの悲鳴にも似た声が町内に響き渡ります。

「飛び降りるな!! 昼ごはんはどうするんだ!! 散らかしたら片付けろ!! 事情を説明しろ!! 帰ってきたら覚えてなさいよ、佳奈―っ!!
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