第4話
文字数 918文字
「どうしてみんなは、朝に引っ越してくるって思ったの?」
私が、ふと感じた疑問を口にした途端、実里ちゃんが目を丸くして固まりました。ミナミちゃんは携帯電話から顔をあげて、目頭をおさえて大きくため息をつきました。
「誰よ。朝に引っ越してくるって言った奴は……」
「誰だろう。いつの間にかそんな話になってたような……」
「まったく、アンタもおかしいと思いなさいよ」
ミナミちゃんは実里ちゃんを責めるようにじろりと見ました。実里ちゃんはびくっと体を震わせます。
「伝言ゲームね。ばかばかしい! 私はもう帰るから!」
ぷいっと踵を返して、ミナミちゃんは帰っていきます。
実里ちゃんは顔を青くしていました。私はともかくそんな実里ちゃんを励ましたくて、服を引っ張ったり、元気出してよと言ったりしましたが、効果がありません。
そのとき、クラスメイトの誰かが「あっ!」と声をあげました。通りの角から、真っ黒な車がこっちに近づいてきます。ぴかぴかに光る黒です。中にはサングラスをかけたヤバい人が乗っているにちがいないと、きっと誰もが思ったことでしょう。まるで爆弾でも落とされたように、みんなは大慌てで道をあけました。誰かにぶつかって転んだり、人を押しのけたり、パニックです。道路に溢れかえる私たちに向けて、けたたましくクラクションが鳴り響きます。運転席の窓がひらいて、中にいた男性が私たちを怒鳴りつけました。
「邪魔邪魔!! どけどけ!!」
その声に脅かされて、わーっと声をあげてみんな逃げていきます。実里ちゃんは腰を抜かして、その場にへたりこんでしまいました。手を引く私に「動けない!」と実里ちゃんが目を潤ませました。そのあいだに運転席から男の人が下りて来て、私たちの目の前に立ちふさがったのです。
実里ちゃんはすっかり怯えてしまって、「ごめんなさい」と何度もなんども繰り返しました。しゃがんでいるせいもあるでしょうが、その男性はとても背が高く見え、威圧感がありました。このあたりにいた子たちはみんなもう遠くに逃げてしまい、一番近くにいても三本先の電信柱のうしろにいます。私たちを注意しに来た大人たちも男性の出方をうかがうように、口出しもせず、じっとしていました。
私が、ふと感じた疑問を口にした途端、実里ちゃんが目を丸くして固まりました。ミナミちゃんは携帯電話から顔をあげて、目頭をおさえて大きくため息をつきました。
「誰よ。朝に引っ越してくるって言った奴は……」
「誰だろう。いつの間にかそんな話になってたような……」
「まったく、アンタもおかしいと思いなさいよ」
ミナミちゃんは実里ちゃんを責めるようにじろりと見ました。実里ちゃんはびくっと体を震わせます。
「伝言ゲームね。ばかばかしい! 私はもう帰るから!」
ぷいっと踵を返して、ミナミちゃんは帰っていきます。
実里ちゃんは顔を青くしていました。私はともかくそんな実里ちゃんを励ましたくて、服を引っ張ったり、元気出してよと言ったりしましたが、効果がありません。
そのとき、クラスメイトの誰かが「あっ!」と声をあげました。通りの角から、真っ黒な車がこっちに近づいてきます。ぴかぴかに光る黒です。中にはサングラスをかけたヤバい人が乗っているにちがいないと、きっと誰もが思ったことでしょう。まるで爆弾でも落とされたように、みんなは大慌てで道をあけました。誰かにぶつかって転んだり、人を押しのけたり、パニックです。道路に溢れかえる私たちに向けて、けたたましくクラクションが鳴り響きます。運転席の窓がひらいて、中にいた男性が私たちを怒鳴りつけました。
「邪魔邪魔!! どけどけ!!」
その声に脅かされて、わーっと声をあげてみんな逃げていきます。実里ちゃんは腰を抜かして、その場にへたりこんでしまいました。手を引く私に「動けない!」と実里ちゃんが目を潤ませました。そのあいだに運転席から男の人が下りて来て、私たちの目の前に立ちふさがったのです。
実里ちゃんはすっかり怯えてしまって、「ごめんなさい」と何度もなんども繰り返しました。しゃがんでいるせいもあるでしょうが、その男性はとても背が高く見え、威圧感がありました。このあたりにいた子たちはみんなもう遠くに逃げてしまい、一番近くにいても三本先の電信柱のうしろにいます。私たちを注意しに来た大人たちも男性の出方をうかがうように、口出しもせず、じっとしていました。