第23話
文字数 1,154文字
「ちょっと、佳奈ちゃん。学校に行ってどうするの⁉」と詩織ちゃん。
「わかんない。わかんないけど、追いかければサオリちゃんに追いつくかもしれないでしょう。もーっ無理。私はね、考えるのは苦手なの!!」
校庭には既にみんなが集まっていました。私と詩織ちゃんが駆け込んでくると、みんなはじっとこちらに目を向けます。その中心に、サオリちゃんがいました。私を見たサオリちゃんがにっとわずかに笑います。ふと横に目を向けると、ミナミちゃんが困ったように首を傾けて、頭をかいています。
「詩織ちゃん、二人いない?」
という誰かの声に、私ははっとしました――サオリちゃんはまだ、自分たちのことをみんなに話していなかったのです。私の手を握る詩織ちゃんは、震えていました。
一体何者なのか、という全員の興味が、詩織ちゃんに注がれます。
詩織ちゃんはすっかり怯えていました。今日が初対面の、大勢の人間に囲まれてしまったようなものです。詩織ちゃんはあきらめたように俯き、固く目を閉じます。
「駄目じゃない、今出てきちゃ」
サオリちゃんはさも慌てているみたいに、そう言いました。みんながざわざわと騒ぎだしました。私は助けを求めるみたいにミナミちゃんと実里ちゃんを見ましたが、ただ目が合うばかりで、何をしようともしません。
「こうなっちゃったらしょうがないよね。詩織。みんなに、説明しなくちゃ。どうして『詩織』が二人いるのか、ちゃんと説明しなくちゃね……」
詩織ちゃんは悔しそうに、私のほうをちらと見ました。
私は考えもなしに飛び込んだことを、後悔していました。サオリちゃんの笑みには、私が突っ走って自分からぼろを出すのだと、もともとわかっていたような含みがありました。
「何を言ってるの?」
詩織ちゃんははっとして、顔をあげました。「私がサオリでしょ。詩織じゃない……」
それは詩織ちゃんの、儚い最後の抵抗でした。
しかしサオリちゃんは決してそれを受け入れません。ただ静かに笑って、「違うでしょ」と言うのです。サオリちゃんの言葉に、詩織ちゃんはまた顔を伏せます。彼女は言葉を続けました。「私がサオリなの。あなたは詩織。そうでしょう?」
サオリちゃんはあくまで、詩織ちゃんの口から入れ替わりのことを話させるつもりでいるのです。詩織ちゃんはうつむいたまま、動かなくなりました。話しかけても揺すっても、反応がありません。早く時間が過ぎるのを、ただ願っていました。
「お前らって、もしかして双子なの?」
男の子の一人がそう言いました。サオリちゃんが「そうなの」とさも観念したみたいに言います。「バレちゃったね、ぜーんぶ……」
みんなが口々に言います。
「バレちゃったってどういうこと?」
「代わりばんこで出て来てたってこと?」
「まじかよ」
「だまされたんだよ俺ら」
「わかんない。わかんないけど、追いかければサオリちゃんに追いつくかもしれないでしょう。もーっ無理。私はね、考えるのは苦手なの!!」
校庭には既にみんなが集まっていました。私と詩織ちゃんが駆け込んでくると、みんなはじっとこちらに目を向けます。その中心に、サオリちゃんがいました。私を見たサオリちゃんがにっとわずかに笑います。ふと横に目を向けると、ミナミちゃんが困ったように首を傾けて、頭をかいています。
「詩織ちゃん、二人いない?」
という誰かの声に、私ははっとしました――サオリちゃんはまだ、自分たちのことをみんなに話していなかったのです。私の手を握る詩織ちゃんは、震えていました。
一体何者なのか、という全員の興味が、詩織ちゃんに注がれます。
詩織ちゃんはすっかり怯えていました。今日が初対面の、大勢の人間に囲まれてしまったようなものです。詩織ちゃんはあきらめたように俯き、固く目を閉じます。
「駄目じゃない、今出てきちゃ」
サオリちゃんはさも慌てているみたいに、そう言いました。みんながざわざわと騒ぎだしました。私は助けを求めるみたいにミナミちゃんと実里ちゃんを見ましたが、ただ目が合うばかりで、何をしようともしません。
「こうなっちゃったらしょうがないよね。詩織。みんなに、説明しなくちゃ。どうして『詩織』が二人いるのか、ちゃんと説明しなくちゃね……」
詩織ちゃんは悔しそうに、私のほうをちらと見ました。
私は考えもなしに飛び込んだことを、後悔していました。サオリちゃんの笑みには、私が突っ走って自分からぼろを出すのだと、もともとわかっていたような含みがありました。
「何を言ってるの?」
詩織ちゃんははっとして、顔をあげました。「私がサオリでしょ。詩織じゃない……」
それは詩織ちゃんの、儚い最後の抵抗でした。
しかしサオリちゃんは決してそれを受け入れません。ただ静かに笑って、「違うでしょ」と言うのです。サオリちゃんの言葉に、詩織ちゃんはまた顔を伏せます。彼女は言葉を続けました。「私がサオリなの。あなたは詩織。そうでしょう?」
サオリちゃんはあくまで、詩織ちゃんの口から入れ替わりのことを話させるつもりでいるのです。詩織ちゃんはうつむいたまま、動かなくなりました。話しかけても揺すっても、反応がありません。早く時間が過ぎるのを、ただ願っていました。
「お前らって、もしかして双子なの?」
男の子の一人がそう言いました。サオリちゃんが「そうなの」とさも観念したみたいに言います。「バレちゃったね、ぜーんぶ……」
みんなが口々に言います。
「バレちゃったってどういうこと?」
「代わりばんこで出て来てたってこと?」
「まじかよ」
「だまされたんだよ俺ら」