第8話

文字数 902文字

 学校のグラウンドには、昨日の朝みたいな人だかりができていました。私が手を振ると、だーっと人の塊が近づいてきます。「隣にいるのが眞見さん?」と興味津々です。あっという間に詩織ちゃんは取り囲まれて、私は弾き出されてしまいました。

 しばらくすると詩織ちゃんを囲む輪のなかから実里ちゃんが出てきました。

「すごく明るい子だね、詩織ちゃんって」

 実里ちゃんの言う通り、詩織ちゃんはまるで古い友人に会ったときのようにみんなと接しています。握手をし、肩を叩いたり、一人一人と携帯で写真を撮ったり。

「そういえば佳奈ちゃん。あの問題は解決したの? ほら、姉妹で同じ年齢だっていう」
「うーん、それがよくわからなくて。今日会えるかと思ったんだけど、詩織ちゃん一人しか家から出てこなかったんだよね」

「なんの話をしてるの?」

 そこへ突然、ミナミちゃんが現れました。今日もまた携帯をいじっています。私はミナミちゃんに誕生日が同じだという謎について話をしました。ミナミちゃんは「別に不思議でもなんでもない」と一蹴します。「きっと、双子よ」

「双子か、なるほど……」実里ちゃんはちょっと悔しそうです。

「それに、もしかしたらこれはドッキリなのかも。アンタの話じゃあ、今朝、一人しか出てこなかったんでしょう——ほら、これを見て」

 ミナミちゃんは携帯電話の画面を私たちに見せました。それはアドレス帳で、『眞見』と登録してありました。ミナミちゃんが指差したのは、そのメールアドレスの部分です。

  shiori_saori@…… 

「見てごらん、多分これは姉妹の共通のアドレスよ。つまりどっち宛てに届いてもいいようになってるってこと。きっとあの子は詩織じゃなくてサオリのほうで、私たちをひっかけてるのよ。双子がやりそうなことだわ」

 唖然としている私と実里ちゃんを置いて、ミナミちゃんは颯爽と立ち去っていきます。事件を解決したあとの名探偵のようです。私と実里ちゃんは顔を見合わせました。

「驚いた。まさかドッキリだとは」と言う私に、実里ちゃんは注意しました。

「いや、さすがに考えすぎじゃないかな……。思い込んじゃあダメだよ」

 さすが実里ちゃんは冷静です。
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