第1話 プロローグ
文字数 1,938文字
『作者よりご訪問者様へ』
私は今年で鬱病発症歴18年です。それもあってか私の思考は普通ではないのかもしれません。強い平和思考を持ち激高的であり、そのくせ悪い行い歴も持ち合わせています(笑)。
在日二世であることも、性格形成の過程で微妙に絡んでいるのかも知れません。
楽観主義と完璧主義が同居しています。――原作は出来上がっておりますが、稚拙ゆえに私の頭の中で常に推敲を重ねている状態です。話は多角的に進みますが、やがて集約していきます。加筆修正で変化を繰り返すと思いますが、懲りずにご訪問のほどよろしくお願い致します。
尚、この物語は現実事象とリンクしています。そのため実在する事件や組織名を連想できる表現が多々ありますが、あくまで『虚実混合』のリアルなフィクションです。
この点をご理解戴き、寛大な心で読み進めていただきますようお願い申し上げます。
SORA天悟
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プロローグ
八月下旬だろう満天の星空は、だれが観ようが呆れかえるほどに果てしなくのびやかに広がっていた。その無窮を映し出す星々は、だれからの報酬も受けることなく地を照らし続ける。――まるで寡黙な農夫を思い出させる悠久の営みは、不思議仕掛けで永久に休むことなく。
この場所は日本、三重と奈良をまたぐ大台ケ原の頂上付近。
煌びやかな虚空との境目らしき黒い山脈はたおやかで、その存在起源は曖昧でしかない。下界は漆黒の世界、ひそやかに鳴く虫たちのメディテーションだろうか――それは意外と賑やかだ。
天上から俯瞰 すれば、ブナ林から遠いガレ石が敷き詰められたあたり。そこに横たわる人の艶めく対 の眼が、とうてい収めきれない宇宙 を映し出ている。眼のぬしはたぶん男であろう、その人は病んでいるようだ。ちっぽけな精神だけではなくて、命そのものが病んでいるのだろう。
岩場のシュラフに収まった男だろう人は、四十歳前後だろうか。いや六十歳以上かも知れない。そそぐ星明りに映し出された半身の躰 は屍人 の色にも見えなくもない。その蒼ざめた顔の輪郭は、いまにも死を無抵抗に迎え入れようとしているかのようだ。まるで給水設備の設置されていない屠畜場 前の雰囲気でもある。
男はどのくらい前から、この日出ヶ岳 に横たわっているのだろうか。
存在のあやふやな呼吸は、死後硬直色で吐かれ見えづらい。いな、もしかしてそれは年月を経たシュラフの色のせいなのかも知れない。ある特別な暗視鏡でなければ、神々にも判別できないだろう深夜である。
その男から少し離れた場所に小さく黄色いテントが認められた。年月で擦 れて蛍光がかったその存在は、遠い国にある砂漠のピラミッドを連想させた。広大で荒々しい敷地内で、けなげなランタンの灯 が辛うじて瞬いて……。
男の眼の中をいったい幾筋の流星が消えていったことだろうか。
永遠の彼方から男を目指し訪れるそれは、奇跡にも近い出逢いだろうに。そこに見知らぬ誰かから託されたメッセージがあったとて、燃え尽きるとも知らず降り注ぐ。するとその男の眼に、特別な感情を含んだ涙が極 ゆっくりと左右に流れ落ちた。それは悲しみ色ではなく、歓喜色でとめどなく溢れ出るものなのかも知れない。
「私のイノチはどこからやってきたのだろう」
ふかい感慨を孕 んではいないが、哲学者の領域を犯しかねない呟きだ。
それがその人間の敬虔 な心から発せられたものならば、その想いはきっと許されることだろう。そんな、この夜の流星群のなかである。
――ひとつ視点の先で光が瞬く。涙によるプリズム作用ではない光――。
瞬時に男の虹彩を擦り抜けたそれは、見知らぬ遠き星座発なのか。
その光で男の魂とも呼ばれる部分が、不意にどよめき復活したかのようだ。男はなにかに取りつかれたようにシュラフのジッパーを下ろし、両手を後ろ手に上半身を起こした。そんな彼のすべて覆いつくすような、前触れのハレーションだった。
次いで月よりも数百倍も煌々と夜空を照らし、事前カウント無視の本体落下がついに始まった。遠き銀河の中心から未曾有 に加速して、ハッキリと躊躇い なく男を目指してやって来る。
(――いったい、何事だ!)
その声にもならない叫びをも覆いつくす、幅のある光のブェールだった。
すでに光の速さを超えたそれは、またたく間に成層圏を突き抜けると薄く何枚かに分裂した。目を開いていられないが、男は眼をそらさない。失明するかも知れないだろうに。やがて男の全身は光に包まれ、完璧に意識が飛んでしまったようだ。いや、死んだのかもしれない。
こうして決められていたような――としか思えない――計測不能な宇宙の真っただ中。深い意味合いを孕んでいるのであろう儀式は、音を伴わず密やかに終わった。
私は今年で鬱病発症歴18年です。それもあってか私の思考は普通ではないのかもしれません。強い平和思考を持ち激高的であり、そのくせ悪い行い歴も持ち合わせています(笑)。
在日二世であることも、性格形成の過程で微妙に絡んでいるのかも知れません。
楽観主義と完璧主義が同居しています。――原作は出来上がっておりますが、稚拙ゆえに私の頭の中で常に推敲を重ねている状態です。話は多角的に進みますが、やがて集約していきます。加筆修正で変化を繰り返すと思いますが、懲りずにご訪問のほどよろしくお願い致します。
尚、この物語は現実事象とリンクしています。そのため実在する事件や組織名を連想できる表現が多々ありますが、あくまで『虚実混合』のリアルなフィクションです。
この点をご理解戴き、寛大な心で読み進めていただきますようお願い申し上げます。
SORA天悟
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プロローグ
八月下旬だろう満天の星空は、だれが観ようが呆れかえるほどに果てしなくのびやかに広がっていた。その無窮を映し出す星々は、だれからの報酬も受けることなく地を照らし続ける。――まるで寡黙な農夫を思い出させる悠久の営みは、不思議仕掛けで永久に休むことなく。
この場所は日本、三重と奈良をまたぐ大台ケ原の頂上付近。
煌びやかな虚空との境目らしき黒い山脈はたおやかで、その存在起源は曖昧でしかない。下界は漆黒の世界、ひそやかに鳴く虫たちのメディテーションだろうか――それは意外と賑やかだ。
天上から
岩場のシュラフに収まった男だろう人は、四十歳前後だろうか。いや六十歳以上かも知れない。そそぐ星明りに映し出された半身の
男はどのくらい前から、この
存在のあやふやな呼吸は、死後硬直色で吐かれ見えづらい。いな、もしかしてそれは年月を経たシュラフの色のせいなのかも知れない。ある特別な暗視鏡でなければ、神々にも判別できないだろう深夜である。
その男から少し離れた場所に小さく黄色いテントが認められた。年月で
男の眼の中をいったい幾筋の流星が消えていったことだろうか。
永遠の彼方から男を目指し訪れるそれは、奇跡にも近い出逢いだろうに。そこに見知らぬ誰かから託されたメッセージがあったとて、燃え尽きるとも知らず降り注ぐ。するとその男の眼に、特別な感情を含んだ涙が
「私のイノチはどこからやってきたのだろう」
ふかい感慨を
それがその人間の
――ひとつ視点の先で光が瞬く。涙によるプリズム作用ではない光――。
瞬時に男の虹彩を擦り抜けたそれは、見知らぬ遠き星座発なのか。
その光で男の魂とも呼ばれる部分が、不意にどよめき復活したかのようだ。男はなにかに取りつかれたようにシュラフのジッパーを下ろし、両手を後ろ手に上半身を起こした。そんな彼のすべて覆いつくすような、前触れのハレーションだった。
次いで月よりも数百倍も煌々と夜空を照らし、事前カウント無視の本体落下がついに始まった。遠き銀河の中心から
(――いったい、何事だ!)
その声にもならない叫びをも覆いつくす、幅のある光のブェールだった。
すでに光の速さを超えたそれは、またたく間に成層圏を突き抜けると薄く何枚かに分裂した。目を開いていられないが、男は眼をそらさない。失明するかも知れないだろうに。やがて男の全身は光に包まれ、完璧に意識が飛んでしまったようだ。いや、死んだのかもしれない。
こうして決められていたような――としか思えない――計測不能な宇宙の真っただ中。深い意味合いを孕んでいるのであろう儀式は、音を伴わず密やかに終わった。