第69話
文字数 904文字
高尾山の頂上に着いた私は、リュックに入っていたポカリスエットを無造作に取り出し、強引に口に入れた。
喉の渇きが止まらない……。山登りをして、体力を使った為なのか、緊張したことが原因しているのか。空になったペットボトルを握りしめ、地面に座り込んでしまった。
胸の鼓動が、波打つかの様に止まらない。様々な声が聞こえ、何か妙な幻も見えている。目の前に映像として映し出されたその光景は、まるで映画を見せられているかの様だった。
私は、まるで夢遊病に掛かったかの様な状態になり、同じ場所をひたすら歩き回った。
何をしているんだろう。これじゃまるで、おかしな人みたい……。早く元の世界に戻りたい。
(早苗、私と居るこの素晴らしい世界のどこが不満なのかい?)
……こんな声に惑わされてたまるか。私は、だんまりを決め込み、不可思議な現象とひたすら対峙をしていた。
(今日の試験はこんなものか……。これじゃあ、合格はとてもあげられないよ、早苗。明日も同じ様に高尾山に登りに来るんだ。今日は日も暮れて来たし、そろそろ帰ろうか)
私はそのあまりにも非情すぎる言葉に、思わず反発を示した。
(明日も……? 冗談を言っているの? こんなこと、一日だって続けたくない)
(それでは、君はずっとこの世界に閉じ込められたまま、二度と抜け出ることは許されないんだ。それでもいいのかい? まあ、私は構わないけどね)
(わ、わかりました)
その言葉に私は抵抗を諦めて、半ば強制的に下山を始めた。
どうやって山を下りて来たのか、全く覚えていない。気がついた時には、電車の中に居た。
何も思うことができない。何も感じない。
ただ、明日も明後日も、この奴隷の様な生活が続くのだろうと、私は絶望に飲み込まれていた。
何も言わずに家に戻ってきた私に、何か様子がおかしいとお母さんの心配する声が聞こえていた様な気がしたが、耳には入らない。ただ、ひたすら眠りの世界に逃げ込もうと必死だった。
少しはよく眠れただろうか。起きたあと、声が居なくなってくれることを願ったが、その願いもむなしく叶うことはなかった。
誰か……誰か助けて。私の必死な訴えを聞く人は誰も居なかった。
喉の渇きが止まらない……。山登りをして、体力を使った為なのか、緊張したことが原因しているのか。空になったペットボトルを握りしめ、地面に座り込んでしまった。
胸の鼓動が、波打つかの様に止まらない。様々な声が聞こえ、何か妙な幻も見えている。目の前に映像として映し出されたその光景は、まるで映画を見せられているかの様だった。
私は、まるで夢遊病に掛かったかの様な状態になり、同じ場所をひたすら歩き回った。
何をしているんだろう。これじゃまるで、おかしな人みたい……。早く元の世界に戻りたい。
(早苗、私と居るこの素晴らしい世界のどこが不満なのかい?)
……こんな声に惑わされてたまるか。私は、だんまりを決め込み、不可思議な現象とひたすら対峙をしていた。
(今日の試験はこんなものか……。これじゃあ、合格はとてもあげられないよ、早苗。明日も同じ様に高尾山に登りに来るんだ。今日は日も暮れて来たし、そろそろ帰ろうか)
私はそのあまりにも非情すぎる言葉に、思わず反発を示した。
(明日も……? 冗談を言っているの? こんなこと、一日だって続けたくない)
(それでは、君はずっとこの世界に閉じ込められたまま、二度と抜け出ることは許されないんだ。それでもいいのかい? まあ、私は構わないけどね)
(わ、わかりました)
その言葉に私は抵抗を諦めて、半ば強制的に下山を始めた。
どうやって山を下りて来たのか、全く覚えていない。気がついた時には、電車の中に居た。
何も思うことができない。何も感じない。
ただ、明日も明後日も、この奴隷の様な生活が続くのだろうと、私は絶望に飲み込まれていた。
何も言わずに家に戻ってきた私に、何か様子がおかしいとお母さんの心配する声が聞こえていた様な気がしたが、耳には入らない。ただ、ひたすら眠りの世界に逃げ込もうと必死だった。
少しはよく眠れただろうか。起きたあと、声が居なくなってくれることを願ったが、その願いもむなしく叶うことはなかった。
誰か……誰か助けて。私の必死な訴えを聞く人は誰も居なかった。