第15話

文字数 594文字

 そして、私は家に帰って来た。ガブという天使と一緒に。

「あ、早苗。どうだった?」

 お母さんが心配そうな表情でこちらを見つめてくる。私は、今日起きた出来事が大きすぎたのか、しばらく無言になってしまった。

「早苗?」

 大丈夫、大丈夫なの、お母さん。

「うん、ちゃんと上手く出来たよ。勉強も教えて貰ってね。遅れも取り戻せそう……お母さんありがとう」

「そう、早苗……良かった」

 お母さんは軽く涙ぐんでいた。そんな心配しなくてもいいのに。私は何とも言えない表情になってしまっていた。

「お母さん、今日はお腹空いてないから、ご飯はいらない」

 私は、二階の自分の部屋へと向かった。

 勉強は確かに、遅れを取り戻せそうだった。でも、それより私は、ガブという天使と出会えた事が何よりも大きなことに感じていた。これが運命の出会いという奴なのでしょうか。

 ……。

(早苗、これからは私がずっと一緒にいるけれど平気? 困ったことがあったら遠慮せずに何でも私に言ってね)

 あ、また声が聞こえる。そうか、これが当たり前なんだ。

(はい、感謝します。ガブ……)

 私は人生の分岐点に今日出会ったのだろう。でも、私はガブの正体に対して、疑問を覚えていた。本当にこの存在は天使なの? ただ、なぜか安心する気持ちに包まれる感覚は間違いなく本物なのだろう。でもどうして、私だけにこの様なことが起こったのだろうか。

 この地上の世界で私だけに。
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