第37話

文字数 805文字

 空花さんに、にらめっこで、散々な目に遭わされた私は、リップロールというものに挑戦した。

 唇を閉じて、全身の力を抜き、息を吹きかけるようにして震わせる。

 ブルルルル。

 口がアヒル口になるのが、ちょっと恥ずかしいけれど、結構楽しい。

 私は空花さんと一緒に唇を振動させる。

 この「リップロール」が上手にできれば、声帯や表情筋をリラックスさせる効果や、高音が出やすくなる効果が期待できるのだとか。 次に早口言葉をやってみた。

「生麦、生米、生卵……青巻紙、赤巻紙、黄巻紙……隣の客は、よく柿食う客だ……赤パジャマ、黄パジャマ、茶パジャマ」

「大事なのは、ゆっくりでもいいからしっかりと発音して言葉にすること。早苗さん、焦らずにね」

「は、はい!」

 慣れない早口言葉を、精一杯頑張った。今度は運動だ。代々木公園をジョギングで一周するらしい。ジャージを準備していなかった私は、今度から持って来た方がいいと、空花さんに勧められた。

 ちょっとハードだが、ペースはゆっくり目でいいとのこと。自分のペースでやるのが一番だよと言われる。

 よーい、ドン! と掛け声を合図に私は走り出す。代々木公園の景色を確認しながら、一歩一歩、脚を前に出す。

 肺活量に自信の無かった私は、少し心配になったが、空花さんと一緒だと不思議と自然に上手く走れていた。

 代々木公園の1.2㎞のコースが無事に終わり、私は地面に倒れ込んだ。

 汗がだらだらと流れて、吸ったり吐いたりする息が止まらない。こ、こんなに大変だなんて……。

「はい、休憩します。次はいよいよ朗読だよ。一通り終わったから、もう好きなだけ休んでよし!」

「あ、ありがとうございます。思ったよりも大変ですね」

「一週間に一度、今までの運動ができればいいね。早苗さん、無理しないで、しんどかったら言ってね」

 辛いのは最初だけだ。慣れたらきっと楽になってくるはず。私は大丈夫ですと伝えて、地面に座り続けていた。
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