第４２話

　面接室に入る。そこには、女性の面接官が一人で席に座っていた。

「皐月早苗さんですね、お待たせしました。あまり気負わず、気持ちを楽にしてくださいね。実力を見ると言うよりは、やる気があるかどうかを見るだけです。やる気があれば大体は通るので……よろしくお願いします」

　私はその言葉を聞いて、少しだけ安心した。

「はい、お願いします」

　そうして、面接官による質問が始まった。

「早苗さんは、何か演劇の経験などはありますか？」

「いえ、小学生の頃、学芸会をしたくらいです……はい」

「なるほど……。何か趣味などはありますか？」

「ええと、読書です。本を読むことは好きで、小学生の頃からずっと続けています。主に小説なんですけれど、漫画やライトノベルなんかも、最近読むようになりました」

「わかりました。では、手渡された台本に書かれている台詞を朗読してください」

「はい、では読んでいきますね」

　私は深呼吸をした。ゾーンに入るようにして、自分の世界に入り込む。台本を片手に、キャラクターとシンクロするように読んでいく。

「私はハーフエルフなの……。エルフと人間が半々。それってどういう存在なのかわかる？　人間の姿をしているけれど、中身はエルフ……。人には理解されず、愛されない。……でもね、そんな私でもエルフからは愛されるの。エルフには同族意識が強いのかしら。やっぱりね。不思議なもので、ハーフエルフは故郷に帰りたいと願うものなの。ふふ、自分を愛してくれる存在に惹かれてしまうのはどんな生き物でも同じなのかもね」

　……。

「はい、ありがとうございました」

「……そうですね、未経験とは思えないほど、役に入り込んでいましたよ。早苗さんには、何か演技の素質があるように思います。結果通知は、手紙にて郵送致します。それでは今日は、お疲れ様でした」

　そうして現実の世界に戻ってきた。