第8話

文字数 590文字

 そうか……。

 私、ずっとこの男の子との約束を守っていたんだ。

 外には敵が一杯いるから、それを案じていたんだね。

 全く……心配性なんだから。

 ……あれ?

 寝ぼけているのかな。

 いけない……こんなことじゃ。

 でも、敵が来るって一体なんのことだったんだろう。

 敵って誰のことだったんだろう。

 お昼、食べてこようかな。

 私はリビングまで、降りていくことにした。

 一階に降りると、昼食の準備がしてあった。

 すると久しぶりに、お母さんが話しかけてきた。

「早苗、お話があるんだけれど、聞いてくれる?」

「何? お母さん」

「早苗って、教会に行ってみる気はない?」

 え、教会……? とは何のことでしょう。一体お母さんが何を言っているのかが、分からない。

「教会ってキリスト教の?」

「そう、この間、牧師さんがね、早苗が不登校だって聞いて、お祈りしてくれるって言うの。学校で勉強できないなら、教会でしてみるつもりはないかって。牧師さんの奥さんが、家庭教師の仕事をやっているらしくてね。早苗に教えてあげたいんだって」

「え……、勉強ですか?」

「そう、早苗が好きな国語が得意でね。お金もいらないんだって。だから、教会に行ってくれたら、お母さん、安心するんだけどな」

「少し……考えさせてください」

 私はその場で答えを出すことができずに、一旦保留にしてしまった。

 だけれど、その日の昼食は少しだけ美味しい味がした。
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