第14話

文字数 927文字

 ……。

(わ、私の名前……?)

 私の心にそっと語りかける、その存在は、静かに答えてくれた。

(私の名前は……ガブ)

(ガブ……? あなたは一体? 私に何の様なのですか?)

 私はこの身に起きた出来事が現実のこととは思われなかった。夢でも見ているのではないだろうか。

(あなたをずっと待っていたの。そうね、天使だとでも思っておけば大丈夫よ)

 天使? 天使が私に語りかけて来たというのだろうか。この教会は天使が守っていると言うの?

(でも、私は天使に語りかけられる程、信仰深くはありません。何かの間違いではないのでしょうか?)

 その天使は答えにくそうにしていたが、そのことを教えてくれた。

(えっとね、今の時代はね……仕方ないの)

 今の時代は仕方ない? 一体何のことだろうか。私が質問したいのを察して、その天使は静かに答える。

(この世界はね、もう滅びてしまうのよ)

 えっ!? 怖い……人類が絶滅してしまうという意味でしょうか。それは一体どうして?

(この世が滅びるとはどういうことですか? つまり、私も消えてしまうのでしょうか)

(それは、後で教えてあげるね、いきなり全部を教えられても混乱するだけだから)

 既に混乱しているけど……でも。

(はい、いつか教えてくださいね)

 だけど天使と話せる様になるなんて……聖書の中でしか読んだことのない存在だったけれど、実在していたのね。確か、ガブっていう名前だった……ガブ。不思議な名前。でも何だか懐かしい。あ、もしかして、楽園というものがやってくるの?

(後、一年で……)

 あっ。

(心の中が分かるのですね、でもちょっとプライバシーがないです)

 その天使……ガブは微笑んで、それもそうよね……と頷いた。

(大丈夫、私はあなたが子供の頃から見てきているのよ)

(心の中もお見通しって訳なんですね)

(当たり! 家族だと思ってくれればいいから)

(そう、ガブ。でもいきなり話しかけたりしないでね、びっくりしてしまうから。でも、ありがとう。私なんかに秘密を教えてくれて)

(ふふ、分かったわ)

 とても、不思議な体験をした。私は今日のことは一生忘れないだろう。ガブとはこれからもずっと一緒なのだろうか。

 だけど……。

 私は決して一人ぼっちではなかったんだ。
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