第43話

文字数 732文字

 ……終わった。

 面接室を出た私は、茫然自失の様になり、ふらふらと会場の外へ出た。

 どうやって自宅に帰ってきたのか覚えていない。

 時計を見てみる。まだ面接から一時間と経っていない。

 ベッドに潜り込んだ私は、今日の起こった出来事について回想にふけっていた。

 ついさっきあった出来事だとはとても思えない。

 面接官の言葉を思い出す。

『……そうですね、未経験とは思えないほど、役に入り込んでいましたよ。早苗さんには、何か演技の素質があるように思います』

 ……えへへ。

(ガブ……素質があるって言われちゃいました。声優の勉強を始めて間もないのに……私、頑張りましたよね)

(ええ、未経験とは思えないって。さすが、早苗ね!)

(筆記試験は完璧だったし大丈夫だと思う。これで学校に行けるのかな……)

(あとは、結果次第ね。やる気重視って言っていたし、早苗ならきっと大丈夫よ)

(うん、でもちょっと不安です……)

 私は空花さんにLINEで今日のことを報告した。

『空花さん、実技試験受けました。審査員によると、素質があるのではとのこと。結果が届くまでは安心できないけれど、一応報告しますね。とても疲れました』

 ……。

 すると空花さんから直ぐに返信が届いた。

『お疲れさまー、早苗さん。そのパターンはもう合格間違いなし。声優学校の試験ってそんなに厳しいものじゃないのさ。安心してね。じゃあまた来週、教会で会おうね』

 少し休もうと思ったけれど、体が疲れていて、なぜか眠ることができなかった。……緊張すると、みんなこんな感じなのかな。

 夕食の時間が来ても、食べる気力も起きず、ずっとベッドに横になっていた。私はとうとう限界が来て疲れたのか、いつの間にか寝てしまっていた。

(お疲れさま……早苗)

 ――。
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