第36話

文字数 616文字

「まず、準備体操をします。声優は体資本でストレッチが何より大事です」

「はい、空花先生!」

 私は、空花さんの真似をしながら、腕を上下左右に屈伸し、ぶらぶらと手首を揺らした。

 これが、ぶらぶら体操……。話には聞いたことがあったけれど、やってみると結構面白い。

 続けて、柔軟をして、体を柔らかくする。

 か、体が固い……当然ですね。

「続けて腹式呼吸をします」

 私は、大きく深呼吸をして、すーっと息を吐く。お腹に手をあてて、ちょっと無理矢理にお腹を凹ませながら吐く。

 ゆっくりと鼻から空気を取り入れた。

 コツとしては、コーヒーや紅茶の匂いを嗅ぐようなイメージらしい。息を吐き切り、凹んだお腹に自然と息が戻ってくる。

 結構大変だ……。引きこもってたことでの筋力の少なさに、私は唖然とした。

「表情を動かして行きます!」

「はい!」

「簡単に言うとにらめっこをします!」

 ……。

 か、帰らせて貰おうかな……と私はリアクションを取るのだが、空花さんは私の手を握って離さなかった。

「帰さない……」

 なんで、そんなことを……。空花さん曰く、喜怒哀楽が大事らしく、それをすることで、表情が豊かになるらしい。

 えーーー。

「にらめっこしましょ! あっぷっぷ!」

 私は無理矢理、顔をぎこちなく動かした。

「まだまだ! 早苗さん、これから慣れるまでこれを何度もやるよ!」

「はい、あっぷっぷ」

 周りから見たら、余りにも恥ずかしいこのやり取りに、私はただ赤面するだけだった。
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