第12話

文字数 706文字

 勉強の仕方を一通り教えて貰った後、私は家に帰ってきた。

 教会に行ったおかげだろうか、どうも心が軽い気がする。

(早苗……お疲れ様)

 そんな声が聞こえた気がした。私には霊感でもあるのだろうか、こんなことがよくある。でも、それは気のせいだろうと自分に言い聞かす。霊なんて不確かなもの、信じる訳にはいかなかった。

 教会に行って、現実的になっているのだろうか。久しぶりに外に出て、人と話したからだ。冷静になっている自分がいた。

「雫さん、良い人だったなあ」

 あの牧師夫婦に付いて行けば大丈夫かも知れない。私の人生にこれからの人生に希望が見えてきた。

 また明日、お世話になろう。個室まで貰ったんだ、毎日あの部屋で勉強するのも良いかも知れない。

(早苗、感謝しなくちゃね)

 はい……。私は謎の声につい返事をしてしまっていた。

「今日は、久しぶりに動いて疲れました。ゆっくり休むことにします」

(早苗、お休みなさい)

 ……。

 私は何者なんだろう。どうして今日、教会に導かれたんだろう。まあ、一先ず休むことにします。人生とは一日で終わるものではないのですから。

 次の日から私は教会に通うことにした。

「早苗、行ってらっしゃい、お弁当は持った? 勉強道具を忘れずにね」

 お母さんが、心配してくる。私はもう小さい子供ではないのに。

「大丈夫だから……お母さん、自分のことは自分でやるから」

 お母さんは、そう……と言って、私を送り出してくれる。

 外に出ると、清々しい気持ちになる。駅前まで出て、電車に乗るまでが大変だけれど、そこまで出来れば問題はない。

 私は勇気を出して、足を踏み出した。

 電車に揺られて、桜上水駅に着き、教会へと無事辿り着いた。
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