第14話

文字数 1,769文字

 幸いに登山道具一式の中には折り畳み傘とレインウェアがある。
 大雨の中で時折稲光が辺りを覆う。
 俺たちはずぶ濡れになって、書統学校まで走って来ると、下校途中の公平が恵さんの屋敷へと走っていた。大方、また親父さんと喧嘩でもしたのだろう。

「なあ、公平ー! また親父さんと喧嘩かー?」
「ああー、進路なんてそんな急に決められないぜー。それより、杉崎を負ぶっているけど、なんかあったんかー」
「ああ……後で話すよー」
「おにいちゃーーん! 空が!!」
「うぎっ!!」
 
 走りながら公平と話していると、暗黒の大空に広大な稲妻が迸った。
 と、突然。
 俺たちの目の前が強烈に発光した。
 そこから女神様が現れた。

「影洋! もう仲間を見つけたのですね! 良かった……もうすぐこの世界も終わりを告げます。早く影の王国を打ち倒すのです!」

 それだけ言うと、女神様は忽然と消えた。

「な、なんだ? 今の?」
「ええい、恵さんの屋敷に行ったら全てを話す!!」
「おにいちゃん! 私も戦うよ!!」 

 四人で恵さんの屋敷の領域へと入る。
 
 後は……。

 芝生。
 芝生。
 芝生。

 ……到着。

 ふう、杉崎を背負っているからかかなり疲れたぜ!

「おかえりなさいませー」
「おかえりなさいませ!」
「恵お嬢様は二階にいらしております。影洋さまと光さま。ご夕食は8時になります。公平さまはいつもの物置でよろしいでしょうか?」

 出迎えの使用人たちが一斉に頭を下げる。
 いつも思うんだけど、どこら辺から俺たちに気が付くんだろう?

「ああー、疲れたーーー!!」 
「おにいちゃん! 杉崎さんが起き出しそう! 早く二階へ!」
「ありがとなー! 物置の整理頼んだ!」

 公平が地下へと向かうと、俺は骨董品が多く飾られた二階の踊り場まで杉崎を背負って階段を上がる。すると、杉崎が急に目覚めたようだ。

「あれ? 私の家? ここって?」
「うんにゃ! ここは恵さんの屋敷だ。お前、気を失ったからここまで背負ってきたんだぜ。なにせ、お前ん家がわからなかったからなあ。さすがに少し疲れたぜー」
「おにいちゃんー。二階へ早く行こうよー。登山道具一式が重いよー」
「了解! 光は登山道具一式をそこへ置いて先に行っていてくれ! 後で持ってってやる!」
「え、ちょっと!? 私を負ぶったまま!?」

 俺は杉崎を背負ったまま登山道具一式を片手に持ち、二階の貸してもらっている自分たちの部屋へと向かった。
 そういえば、おじいちゃんとおばあちゃんの部屋って? 一体? どこ?

 うぎっ! 扉を開けると、案の定。おじいちゃんとおばあちゃんが湯飲み片手にテレビを観ていた……。

 虎倉街はいつの間にか夜だが朝になっていたようで、テレビには、あの時の小春という気象予報士がでている天気予報だった。

「今日はここ比水公園にいますよー。うーん、空模様からして時々、大傘ですねー。最低気温は5℃で最高気温は10℃です。湿度は……。皆さんそういうことで頭上に注意してヘルメットを忘れずにしてくださいねー。後は……最近……影との……バランスが、時々崩れかかっていま……ので、世界に均衡を心がけましょう……」

 今度は小春という気象予報士は、比水公園の噴水のところで一人で喋っている。
 うぎっ!
 大傘だって!?
 そして、なんだか不気味だぞ!?
 
「今週は天気は不安定な地面に覆われていますね。ということで、換気を良くすると過ごしやすくなりますねー。以上、天気予報でした。では、また!」

「小春さん。ありがとうございました。それでは皆さん今日は大傘と影の活動に注意しましょう。次は経済です」

 ニュースキャスターの人も大真面目に話している。

 はあ?
 不安定な地面!?
 おかしいだろ?

「ふーん。今日は地震と影の活動が活発ねー。大変そうねー」

 なん??
 杉崎も普通に言ってるし。

「おにいちゃん。今日はヘルメットを被っていようよ」

 うぎっ!
 わ、我が妹までーーー!! 

 今日はヘルメットを恵さんから借りよう……。
 
 徹夜明けなので、杉崎は恵さんの屋敷で泊まることになった。俺も一眠りすることしにした。
 
 おじいちゃんもおばあちゃんもこれが影の世界では普通の事だと言っていた。
 でも、やっぱりおかしいだろ?
 そういえば、表の世界では、いや、影の王国ではどうなってるんだ?
 
 地震や大傘の逆って? 
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