第26話

文字数 617文字

――――

「今日は関東地方では雨ですね。北関東では……」

 どこかから天気予報が聞こえる。
 
「おにいちゃんー!!」
「影洋くん! 起きてーー!!」
「ぶっ! むにゃーーーー!!」

 俺の顔面に何か柔らかい物体が二つ当たった。
 いや、枕だ。
 それと、当たったのではなくて、激突した。

「う……うがーー! ここはどこだーーー!!」

 俺は起き出して辺りを見回した。
 女物の洒落た家具や洋服箪笥に、ピンクの柄のテレビ。俺が寝ていたベッドからもいちごの良い匂いがした。  

「やっと、起きた。ああ、良かった」
「おにいちゃん。ずっと、目が覚めなかったんだからね」

 杉崎と我が妹だった。

 それにしても、起こし方が鼻血ものだろう!

 俺は内心、叫んでいた。

 うーん。どういうわけか、多分ここは杉崎の部屋?
 一体?

「影洋くん。駅の近くの道路で倒れていたから」

 うぎっ! 案外世話焼きな!
 メガネを掛けた杉崎はこんなのいつものことよみたいな顔で言っている。

「影洋くん。気にしないでね。私……ハンバーガーの紙袋とかコンビニのビニール袋とかよく拾うから……」
「俺は紙袋だったのか……?」
「おにいちゃん……大丈夫だったんだよね」
「うぎっ! 我が妹よ! あの不気味な影は?」
「ほひ? どっか行ったよー」
「……」

 もしや……俺は青ざめてベッド脇に設置されている目覚まし時計を見た。
「うっぎーーーー!! 明日になってるーーーー!?」

 目覚まし時計は冷酷にも深夜の1時を指していた。
 
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