第6話
文字数 2,072文字
学校から少しだけ歩くと、そこは大豪邸の芝生の中だった。鬱蒼とした芝生だらけの庭には、芝生以外もあるのだろうけど、俺には芝生以外は見えていない。
芝生。
芝生。
芝生。
「あ、そっちは池があるから。ていうか、気をつけてね。家かなり広いからどこかで怪我をしても、すぐにはわからないの。あっちは薔薇の園」
「うぎっ。了解」
黒ギャルの恵さんが笑顔で、こんなのいつものことよ。と、いう感じで話していた。だが、俺と光はジャングルに迷い込んだ探検隊の気分だった。
「おにいちゃん。すっごい友達持ってるね……」
「いや、友達というよりクラスの憧れだった人。俺にとっては、特別なスーパークラスメイトだ。光。そっちの方には薔薇の園があるらしいから近づかない方がいい。薔薇の棘が刺さると痛いぞ」
「ほい。おにいちゃん」
恵さんが、やっと開けた芝生から突如現れた屋敷を指差した。
「あんたたちの部屋は、多分二階。一階は、応接室やら台所やらあるから」
「おう! ホントありがとな!」
「ありがとうございます!」
俺は改めて黒ギャル化した恵さんを見てみると、こう思った。現実世界の恵さんは、今どうしているのだろう?
屋敷の大扉を開けると、そこには使用人たちの種々雑多な頭があった。かなりの数の使用人は、みんな両脇にどいてお辞儀をしていた。壁面には絵画や骨董品などが飾ってあって、どれも高級感を醸し出している。
大きなステンドグラスの窓が四方を囲んでいた。
「おかえりなさいませーー!!」
「おかえりなさいませ!! 夕食、お風呂は既にできています!」
「おかえりなさいませ! お荷物をお持ちいたしましょう!」
「ただいま~」
「お邪魔しまーす」
「……お邪魔します」
使用人たちはまだかしこまっていて、その中央を恵さんが少し気怠るげに歩いて行って、大理石の階段を上っていった。俺と光はそそくさと恵さんについていった。
踊り場にもどう見ても高価そうな種々雑多な骨董品が飾ってある。
「光よ。何も壊すなよ……」
「ほい。でも、おにいちゃんこそだよ! この前、家の花瓶割ったでしょう!」
丁度、凄い部屋数の廊下の突き当たりに、ことさら大きな部屋が二つ用意されてあった。
「お客様用?」
恵さんがお客様用のプレートがある扉を気怠げに開ける。
「好きに使って。お風呂は一階と自室にも付いてあるから」
「……ありがとな」
「ほい! ありがとうございます!」
「それじゃ、私は自分の部屋にいるから」
恵さんが自室に戻ると、俺はあることを思い出した。
「あ! 町内会! 明日は避難訓練があったんだ!!」
―ー―――
フカフカ、フカフカ、フカフカ……。
チュン、チュン、チュチュン。
「ほひいちゃん! ほひいちゃん! 起きて!!」
微睡みから目が覚める。
妹の光がパンを頬張りながら、俺を起こしていた。昨日の夕食は豪勢だったな。フォアグラなんて初めて見たし、食べたっけ。
「おっはよー……うん?」
そういえば、昨日は光が別々の部屋は嫌だといい。結局、同室で寝ることになった。天蓋付きのベッドがおあつらえ向きに二つあったので、そこで爆睡したんだった。
正直、疲れていた。
まだ、現実感がまったくない。
辺りを見回しても……。
至る所に置かれた高級そうな壺に、黄色い花が活けてある。大きい部屋の片隅に大型テレビがある。どこかしら清涼感溢れる花の香りがするんだ。
そのテレビには、また天気予報が流れていた。
「今日は世界各地で……の祭りが……ありますね。いやはや、ここは影の世界ですからね。仕方がないんですよねえ。では、皆さん避難訓練は忘れずに。それでは今日の天気です。今日は時々、傘が降るでしょう」
小春という気象予報士はやはり平然としていた。
「うぎっ! 傘ーーー!! 雨の間違いだろう!!」
「おにいちゃーーん! それより遅刻だよーーー!」
部屋の中央の柱時計を見ると、午前9時!!
「恵さんはどうしたーー!!」
「ほえ、だって今日は日曜だから学校は休みだって……」
「……」
妹よ。それなら起こすな!!
内心叫んだが、そういえば、今日は町内会があるんだった。これも我が妹のお蔭だ! 早く支度して行かないと!
「光。支度を急ぐぞ!」
「ほい! 早く支度しないと! 学校の先生に怒られるからね! おにいちゃん! なんか天気予報では今日は傘が降るって言っていたみたい。影の世界では日常なのかな?」
「いや、そこから違う! 今日は学校休みで傘なんて降らない! 町内会があるんだ! 妹よ! ヘルメットを恵さんから借りよう!」
「ほえ?」
天蓋付のベットからさっそく降りだして、少し支度にバタバタすると一階へ向かった。昨日は二階ではなくて、一階で夕食を取ったんだ。俺の隣のおじさんなんて(恵の父親)、クリュグという高そうな酒をグイグイ飲むし。昨日の夕食は、楽しかったな。
そして、今は朝食の時間は過ぎてしまったから、縦長のテーブルにはなにものっていない。メイド姿の人からパンとヘルメット? を渡された。さあ、恵さんにお礼を言って急いで町内会へ行かないと。
芝生。
芝生。
芝生。
「あ、そっちは池があるから。ていうか、気をつけてね。家かなり広いからどこかで怪我をしても、すぐにはわからないの。あっちは薔薇の園」
「うぎっ。了解」
黒ギャルの恵さんが笑顔で、こんなのいつものことよ。と、いう感じで話していた。だが、俺と光はジャングルに迷い込んだ探検隊の気分だった。
「おにいちゃん。すっごい友達持ってるね……」
「いや、友達というよりクラスの憧れだった人。俺にとっては、特別なスーパークラスメイトだ。光。そっちの方には薔薇の園があるらしいから近づかない方がいい。薔薇の棘が刺さると痛いぞ」
「ほい。おにいちゃん」
恵さんが、やっと開けた芝生から突如現れた屋敷を指差した。
「あんたたちの部屋は、多分二階。一階は、応接室やら台所やらあるから」
「おう! ホントありがとな!」
「ありがとうございます!」
俺は改めて黒ギャル化した恵さんを見てみると、こう思った。現実世界の恵さんは、今どうしているのだろう?
屋敷の大扉を開けると、そこには使用人たちの種々雑多な頭があった。かなりの数の使用人は、みんな両脇にどいてお辞儀をしていた。壁面には絵画や骨董品などが飾ってあって、どれも高級感を醸し出している。
大きなステンドグラスの窓が四方を囲んでいた。
「おかえりなさいませーー!!」
「おかえりなさいませ!! 夕食、お風呂は既にできています!」
「おかえりなさいませ! お荷物をお持ちいたしましょう!」
「ただいま~」
「お邪魔しまーす」
「……お邪魔します」
使用人たちはまだかしこまっていて、その中央を恵さんが少し気怠るげに歩いて行って、大理石の階段を上っていった。俺と光はそそくさと恵さんについていった。
踊り場にもどう見ても高価そうな種々雑多な骨董品が飾ってある。
「光よ。何も壊すなよ……」
「ほい。でも、おにいちゃんこそだよ! この前、家の花瓶割ったでしょう!」
丁度、凄い部屋数の廊下の突き当たりに、ことさら大きな部屋が二つ用意されてあった。
「お客様用?」
恵さんがお客様用のプレートがある扉を気怠げに開ける。
「好きに使って。お風呂は一階と自室にも付いてあるから」
「……ありがとな」
「ほい! ありがとうございます!」
「それじゃ、私は自分の部屋にいるから」
恵さんが自室に戻ると、俺はあることを思い出した。
「あ! 町内会! 明日は避難訓練があったんだ!!」
―ー―――
フカフカ、フカフカ、フカフカ……。
チュン、チュン、チュチュン。
「ほひいちゃん! ほひいちゃん! 起きて!!」
微睡みから目が覚める。
妹の光がパンを頬張りながら、俺を起こしていた。昨日の夕食は豪勢だったな。フォアグラなんて初めて見たし、食べたっけ。
「おっはよー……うん?」
そういえば、昨日は光が別々の部屋は嫌だといい。結局、同室で寝ることになった。天蓋付きのベッドがおあつらえ向きに二つあったので、そこで爆睡したんだった。
正直、疲れていた。
まだ、現実感がまったくない。
辺りを見回しても……。
至る所に置かれた高級そうな壺に、黄色い花が活けてある。大きい部屋の片隅に大型テレビがある。どこかしら清涼感溢れる花の香りがするんだ。
そのテレビには、また天気予報が流れていた。
「今日は世界各地で……の祭りが……ありますね。いやはや、ここは影の世界ですからね。仕方がないんですよねえ。では、皆さん避難訓練は忘れずに。それでは今日の天気です。今日は時々、傘が降るでしょう」
小春という気象予報士はやはり平然としていた。
「うぎっ! 傘ーーー!! 雨の間違いだろう!!」
「おにいちゃーーん! それより遅刻だよーーー!」
部屋の中央の柱時計を見ると、午前9時!!
「恵さんはどうしたーー!!」
「ほえ、だって今日は日曜だから学校は休みだって……」
「……」
妹よ。それなら起こすな!!
内心叫んだが、そういえば、今日は町内会があるんだった。これも我が妹のお蔭だ! 早く支度して行かないと!
「光。支度を急ぐぞ!」
「ほい! 早く支度しないと! 学校の先生に怒られるからね! おにいちゃん! なんか天気予報では今日は傘が降るって言っていたみたい。影の世界では日常なのかな?」
「いや、そこから違う! 今日は学校休みで傘なんて降らない! 町内会があるんだ! 妹よ! ヘルメットを恵さんから借りよう!」
「ほえ?」
天蓋付のベットからさっそく降りだして、少し支度にバタバタすると一階へ向かった。昨日は二階ではなくて、一階で夕食を取ったんだ。俺の隣のおじさんなんて(恵の父親)、クリュグという高そうな酒をグイグイ飲むし。昨日の夕食は、楽しかったな。
そして、今は朝食の時間は過ぎてしまったから、縦長のテーブルにはなにものっていない。メイド姿の人からパンとヘルメット? を渡された。さあ、恵さんにお礼を言って急いで町内会へ行かないと。