第11話 服部、チヤホヤされる
文字数 1,341文字
「服部君どうぞ座って」
「あ、はい、失礼します」
服部はちょっと落ち着かない風、恥ずかしそうに椅子に座った。
畑中さんがお茶を出すと、
「クリスマスプレゼント用にね、ハットリ製菓でお菓子を寄付してくれるって言うの!」
大家さんは上機嫌。さっきまで怒っていたのに。
「いやそんな、たいしたもんじゃないです、オカキがメインだからクリスマスっぽくは無いし。あっ、なるべくクリスマスっぽくは作ってもらいますけど」
服部が下を向いて話す。声が小さくて早口だな。畑中さんが、畑中スマイルでお礼を言う。この笑顔に老いも若きもイチコロだ。
「みんな喜びます、ありがとうございます」
それを聞いた服部は、恥ずかしそうに笑った。あれ、笑うと片えくぼができて、ちょっと可愛いじゃん。
服部は食堂をキョドキョド見渡して言った。
「みんな、ここで勉強をしているんですか?」
高山さん、成田君、岬、葉月ちゃんと、小学4年生の男の子が自習していた。
「そうよ、学習支援もしているのよ。今は村瀬さんと椎貝さんていう子がメインで勉強を見てあげているの」
「そうなんですか……」
みんな男女問わず、高山さんと成田君を見ると、きまって2度見、3度見する。え、よく見ると美形じゃん、女? 男? どっち? って感じで。
服部は、2人をサラッとしか見なかった。興味無さそう。この男はどうやら、本当に村瀬さんにしか興味がないらしい。村瀬マニア。
そして次の瞬間、服部は非常に気の利いたことを言ったのだ。
「俺は……村瀬さんとは違ってバカなんです、大学も一浪してやっとだったし。……親が買ってきてくれたのに、全然やらなかった問題集なんかが家にいっぱいあるんですよ。もしよかったら、使いますか? 」
私と高山さんが顔を上げ、同時に叫んだ。
「使います!」「是非お願いします!」
「よかった……問題集も喜ぶと思う。たまに思い出して罪悪感あったんだ。蔵にあるはずだから、今度持ってきます」
服部の家には蔵があるのか。私はテンションが上がってしまい、
「汚れていても使い古しでもいいから、全部持ってきて! 全教科お願いします! 高校受験から大学受験まで全部!」
服部に詰め寄った。高山さんもガタッと立ち上がり、
「私、取りに行きます。運びます」
と、これから服部の家に突撃しそうな勢いで言った。
すると服部は慌てて、
「いっぱいあるから、重くて女の子には無理だよ。従業員さんに運んで貰うから大丈夫」
私と高山さんはちょっとドキッとして、お互い顔を見合わせた。 “女の子” ……新鮮な響きだ。
「あらまあ、服部君は紳士的ね」
大家さんの高笑い。
遅ればせながら成田君と岬も「ありがとうございます、手伝うので言ってください」と、みんなで服部を取り囲む形になると、
「あ、すみません、大丈夫です、いえ」
とか落ち着かない様子で、頭を掻きながら謝ったりしていた。
それでハッとして、頭から手を離して膝の上でギュッと手を握りしめたりして、早口だし、陰キャ特有の挙動不審さはバリバリ滲み出ているが、そんなことはどうでもいい。
後日、大家さんも言った。
「まあ、モテる要素は少ないけれど、実家の資本の厚みはそれを補って余りあるわね」
みんなで服部をチヤホヤしていたとき、村瀬さんが食堂に入ってきた。
「あ、はい、失礼します」
服部はちょっと落ち着かない風、恥ずかしそうに椅子に座った。
畑中さんがお茶を出すと、
「クリスマスプレゼント用にね、ハットリ製菓でお菓子を寄付してくれるって言うの!」
大家さんは上機嫌。さっきまで怒っていたのに。
「いやそんな、たいしたもんじゃないです、オカキがメインだからクリスマスっぽくは無いし。あっ、なるべくクリスマスっぽくは作ってもらいますけど」
服部が下を向いて話す。声が小さくて早口だな。畑中さんが、畑中スマイルでお礼を言う。この笑顔に老いも若きもイチコロだ。
「みんな喜びます、ありがとうございます」
それを聞いた服部は、恥ずかしそうに笑った。あれ、笑うと片えくぼができて、ちょっと可愛いじゃん。
服部は食堂をキョドキョド見渡して言った。
「みんな、ここで勉強をしているんですか?」
高山さん、成田君、岬、葉月ちゃんと、小学4年生の男の子が自習していた。
「そうよ、学習支援もしているのよ。今は村瀬さんと椎貝さんていう子がメインで勉強を見てあげているの」
「そうなんですか……」
みんな男女問わず、高山さんと成田君を見ると、きまって2度見、3度見する。え、よく見ると美形じゃん、女? 男? どっち? って感じで。
服部は、2人をサラッとしか見なかった。興味無さそう。この男はどうやら、本当に村瀬さんにしか興味がないらしい。村瀬マニア。
そして次の瞬間、服部は非常に気の利いたことを言ったのだ。
「俺は……村瀬さんとは違ってバカなんです、大学も一浪してやっとだったし。……親が買ってきてくれたのに、全然やらなかった問題集なんかが家にいっぱいあるんですよ。もしよかったら、使いますか? 」
私と高山さんが顔を上げ、同時に叫んだ。
「使います!」「是非お願いします!」
「よかった……問題集も喜ぶと思う。たまに思い出して罪悪感あったんだ。蔵にあるはずだから、今度持ってきます」
服部の家には蔵があるのか。私はテンションが上がってしまい、
「汚れていても使い古しでもいいから、全部持ってきて! 全教科お願いします! 高校受験から大学受験まで全部!」
服部に詰め寄った。高山さんもガタッと立ち上がり、
「私、取りに行きます。運びます」
と、これから服部の家に突撃しそうな勢いで言った。
すると服部は慌てて、
「いっぱいあるから、重くて女の子には無理だよ。従業員さんに運んで貰うから大丈夫」
私と高山さんはちょっとドキッとして、お互い顔を見合わせた。 “女の子” ……新鮮な響きだ。
「あらまあ、服部君は紳士的ね」
大家さんの高笑い。
遅ればせながら成田君と岬も「ありがとうございます、手伝うので言ってください」と、みんなで服部を取り囲む形になると、
「あ、すみません、大丈夫です、いえ」
とか落ち着かない様子で、頭を掻きながら謝ったりしていた。
それでハッとして、頭から手を離して膝の上でギュッと手を握りしめたりして、早口だし、陰キャ特有の挙動不審さはバリバリ滲み出ているが、そんなことはどうでもいい。
後日、大家さんも言った。
「まあ、モテる要素は少ないけれど、実家の資本の厚みはそれを補って余りあるわね」
みんなで服部をチヤホヤしていたとき、村瀬さんが食堂に入ってきた。