第24話 大山さんの後継者
文字数 1,403文字
一年後、高山さんは泉工医大理工学部に合格した。先生からは周防大学も勧められたらしいが。
部活のみんなで相談し合い、揺れる気持ちを抑え冒険せずにみんなで安全策をとったらしい。園芸部は全員合格したと言っていた。
「他のみんなは、バタバタ落ちていた。予想以上の惨劇だった。特にネットの情報に踊らされて、泉工医大をバカにしていた人達」
高山さんの真顔は怖い。美人だから迫力がある。
これが受験のリアルというものなのか。
私は高山さんの言葉が頭にあったので、大学は第一志望の北斗大から少し下げて東京繊維工業大学を受験し合格した。村瀬さんは、
「嬉しい、自分の分身が合格したみたい」
と喜んで、お祝いにスニーカーをプレゼントしてくれた。
私は今、東京で好きな勉強にどっぷり浸かり忙しい毎日を送っている。
たまに地元を思い出すと、不思議な気持ちになる。
あれは現実にあった出来事だったのだろうか。
私の小中高時代を思い出すと、おとぎ話や民話が混在したかのように感じるのだ。
だいたいあんな出来たての美味い飯を、タダで食っていたなんて信じられない!
長時間居座って勉強させてもらえて、あまつさえ勉強を教えてくれる優しいお姉さん達がいた。
実家が太くて泣き虫なお兄さんがやって来て、なんやかんや応援してくれた。
自分のことを後回しにする、神様みたいなお爺さんがいた。
大山さん、まだ元気でいるのだろうか。一度、風邪をこじらせ肺炎になったんだ。もうあんまり無理はしないで欲しい。
そして東京でも見ないような中性的な美男美女もいた。
神社の宮司さんが玉手箱を持ってきたこともあった。
夕暮れ時の付喪神たちのまばらな行進や、ふくら雀、ベンチに常駐する幽霊と同じように、それらの思い出は現実離れしているように思えてくる。
そんな感覚に囚われたとき、岬のツイートが流れてきた。
俺はレペゼン泉水
種原山は逢魔が時
まがい物でも宝物
俺ら石にも力を授けた
この世に間借りした
同じ空の下のマイメン
今もドアは開くかい?
調子はどう?
そうだった、あれは全部現実。
徹夜で実験が続いてトリップしていたみたいだ。現に私の足元のスニーカーは村瀬さんからの入学祝いだし。
それに私は卒業したら、ハットリ製菓の関連法人、株式会社ハットリに就職して、司と婚約する約束。実は。
司ってば、泣き虫は変わらないけど、段々落ち着いて頼りになってきたんだ。
勉強ばかりで一般常識に乏しい私が危なっかしくて、自分がしっかりしなければという覚悟ができたんだって。一般常識に乏しいのはお互い様だよ。
泉水市と東京は遠いけど、付近までリニアモーターカーが開通した。
それに勉強していればあっという間だ。私はどんな場所でも本意気で勉強できる。葬儀屋の駐車場で宿題をしていた経験があるから、電車の中は快適だ。
夏休みに帰省したとき、たんぽぽ食堂の大家さんと田所さんにも報告した。
「あら、超玉の輿じゃない! やったわね、おめでとう」
大家さんの言葉を受けて、田所さんがいぶかしそうに言った。
「逆だよ、治ちゃん。恩恵を受けるのはハットリグループの方さ」
その話をしていたとき、大山さんと椎貝さんが一緒に帰って来た。
椎貝さんはすっかり大山さんの後継者みたいになっていて、私は心の底からホッとして涙がこぼれた。
司の涙もろさが私にも伝染してしまったみたいだ。村瀬さんが言っていたテレゴニー説、あながちバカにできないな。
部活のみんなで相談し合い、揺れる気持ちを抑え冒険せずにみんなで安全策をとったらしい。園芸部は全員合格したと言っていた。
「他のみんなは、バタバタ落ちていた。予想以上の惨劇だった。特にネットの情報に踊らされて、泉工医大をバカにしていた人達」
高山さんの真顔は怖い。美人だから迫力がある。
これが受験のリアルというものなのか。
私は高山さんの言葉が頭にあったので、大学は第一志望の北斗大から少し下げて東京繊維工業大学を受験し合格した。村瀬さんは、
「嬉しい、自分の分身が合格したみたい」
と喜んで、お祝いにスニーカーをプレゼントしてくれた。
私は今、東京で好きな勉強にどっぷり浸かり忙しい毎日を送っている。
たまに地元を思い出すと、不思議な気持ちになる。
あれは現実にあった出来事だったのだろうか。
私の小中高時代を思い出すと、おとぎ話や民話が混在したかのように感じるのだ。
だいたいあんな出来たての美味い飯を、タダで食っていたなんて信じられない!
長時間居座って勉強させてもらえて、あまつさえ勉強を教えてくれる優しいお姉さん達がいた。
実家が太くて泣き虫なお兄さんがやって来て、なんやかんや応援してくれた。
自分のことを後回しにする、神様みたいなお爺さんがいた。
大山さん、まだ元気でいるのだろうか。一度、風邪をこじらせ肺炎になったんだ。もうあんまり無理はしないで欲しい。
そして東京でも見ないような中性的な美男美女もいた。
神社の宮司さんが玉手箱を持ってきたこともあった。
夕暮れ時の付喪神たちのまばらな行進や、ふくら雀、ベンチに常駐する幽霊と同じように、それらの思い出は現実離れしているように思えてくる。
そんな感覚に囚われたとき、岬のツイートが流れてきた。
俺はレペゼン泉水
種原山は逢魔が時
まがい物でも宝物
俺ら石にも力を授けた
この世に間借りした
同じ空の下のマイメン
今もドアは開くかい?
調子はどう?
そうだった、あれは全部現実。
徹夜で実験が続いてトリップしていたみたいだ。現に私の足元のスニーカーは村瀬さんからの入学祝いだし。
それに私は卒業したら、ハットリ製菓の関連法人、株式会社ハットリに就職して、司と婚約する約束。実は。
司ってば、泣き虫は変わらないけど、段々落ち着いて頼りになってきたんだ。
勉強ばかりで一般常識に乏しい私が危なっかしくて、自分がしっかりしなければという覚悟ができたんだって。一般常識に乏しいのはお互い様だよ。
泉水市と東京は遠いけど、付近までリニアモーターカーが開通した。
それに勉強していればあっという間だ。私はどんな場所でも本意気で勉強できる。葬儀屋の駐車場で宿題をしていた経験があるから、電車の中は快適だ。
夏休みに帰省したとき、たんぽぽ食堂の大家さんと田所さんにも報告した。
「あら、超玉の輿じゃない! やったわね、おめでとう」
大家さんの言葉を受けて、田所さんがいぶかしそうに言った。
「逆だよ、治ちゃん。恩恵を受けるのはハットリグループの方さ」
その話をしていたとき、大山さんと椎貝さんが一緒に帰って来た。
椎貝さんはすっかり大山さんの後継者みたいになっていて、私は心の底からホッとして涙がこぼれた。
司の涙もろさが私にも伝染してしまったみたいだ。村瀬さんが言っていたテレゴニー説、あながちバカにできないな。