深夜の散歩
文字数 816文字
お題 『深夜の散歩で起きた出来事』
距離感
「大学で離れるけど、奈保が他の人と付き合うのは嫌だ! だから俺と付き合って!」
つまり『好き』では無いが他の人と付き合うなと。匠は幼い時から姉弟のように遊んでいた。だから今さら匠ほど気の合うやつもいない。きっと匠もそうなのだろう。
そんな告白とも言えぬ告白で、私たちは付き合うことになった。そして慌ただしく受験が終わり、私たちは清く正しい幼馴染みのままそれぞれの街へと引っ越した。
そして6月24日───
地元神社のお祭りで私たちは再会。この祭りは県外に行った人間が必ず戻ってくる習わしがある。盆正月は家族。そしてこの日は地元住民の日なのだ。
小高い山の神社まで提灯が続く、広場ではブルーシートと日除けシートが貼られ、昼間から地域住民の飲み食いが盛んだ。そして進学組はプチ同窓会として集まるのも恒例。
新生活話で盛り上がり、気付くと0時を過ぎていた。私が帰ると言うと匠も「送る」と立ち上がり、祭りを後に。
田舎なので街灯のある一本道以外は真っ暗。この辺の『送る』は、変質者というより獣から守る感じの田舎あるある。
「奈保、こっち来て!」
匠に手を引かれ脇道に入る。
「え、そっち街灯がないあぜ道じゃん、やだ、蛇いそうだし……」
「いいから!」
いつになく強引。もしかして私たちにも進展が⁉️ 暗闇でキスとか、やだ、さっき焼き鳥食べちゃった、どうしよう、頭の中で妄想が広がる。そして匠の足が止まり、私の鼻先が匠の肩にぶつかった。痛っ、え、ついに! 私は鼓動が早くなり手に汗が滲んだ。顔熱い。
「あれ?いない」
? いない?
「行きに蛍見たんだよ。奈保と見たかったのに今は1匹もいない」
────蛍かよ……
「蛍飛ぶのって7時から9時くらいじゃない?」
「えー、じゃあ来年はその時間に奈保と見たいな」
暗闇だけど匠の笑った顔が想像できる。
来年……
私たちに進展はなさそう、でも、それはそれで居心地いいかな。
距離感
「大学で離れるけど、奈保が他の人と付き合うのは嫌だ! だから俺と付き合って!」
つまり『好き』では無いが他の人と付き合うなと。匠は幼い時から姉弟のように遊んでいた。だから今さら匠ほど気の合うやつもいない。きっと匠もそうなのだろう。
そんな告白とも言えぬ告白で、私たちは付き合うことになった。そして慌ただしく受験が終わり、私たちは清く正しい幼馴染みのままそれぞれの街へと引っ越した。
そして6月24日───
地元神社のお祭りで私たちは再会。この祭りは県外に行った人間が必ず戻ってくる習わしがある。盆正月は家族。そしてこの日は地元住民の日なのだ。
小高い山の神社まで提灯が続く、広場ではブルーシートと日除けシートが貼られ、昼間から地域住民の飲み食いが盛んだ。そして進学組はプチ同窓会として集まるのも恒例。
新生活話で盛り上がり、気付くと0時を過ぎていた。私が帰ると言うと匠も「送る」と立ち上がり、祭りを後に。
田舎なので街灯のある一本道以外は真っ暗。この辺の『送る』は、変質者というより獣から守る感じの田舎あるある。
「奈保、こっち来て!」
匠に手を引かれ脇道に入る。
「え、そっち街灯がないあぜ道じゃん、やだ、蛇いそうだし……」
「いいから!」
いつになく強引。もしかして私たちにも進展が⁉️ 暗闇でキスとか、やだ、さっき焼き鳥食べちゃった、どうしよう、頭の中で妄想が広がる。そして匠の足が止まり、私の鼻先が匠の肩にぶつかった。痛っ、え、ついに! 私は鼓動が早くなり手に汗が滲んだ。顔熱い。
「あれ?いない」
? いない?
「行きに蛍見たんだよ。奈保と見たかったのに今は1匹もいない」
────蛍かよ……
「蛍飛ぶのって7時から9時くらいじゃない?」
「えー、じゃあ来年はその時間に奈保と見たいな」
暗闇だけど匠の笑った顔が想像できる。
来年……
私たちに進展はなさそう、でも、それはそれで居心地いいかな。
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