10個のプレゼント

文字数 1,037文字

 あっちもこっちも男だらけ

 2065年、世界中を襲った謎のウイルス。それにより女性の大半が死亡、そしてその年以降に生まれた子供は、何故か女性遺伝子が劣勢となり、男児ばかりが生まれていた。現在、女児が生まれる確率は1000人に1人。

 これは女性にとって天国なのか地獄なのか……


 * * *


「地獄だ……」


 私はA県でただ1人の出産適齢期女性と認定された『最重要保護人物』である。

 政府より支給された防犯完備住居に家族で保護されている。母も『重要保護人物』ではあるが、結婚により『最』が取り除かれ、ボディーガード付きでなら外出が許されている。しかし、この『最』があることによって、私は家族以外に誰1人として会ったことがない。


 もちろん画面上でなら毎日観ている。

 学業も習い事も全てこれで教えてもらった。

 18歳の誕生日を迎え、私が成人になると、政府の方から結婚の話を出された。画面に何人もの男の姿が映し出される。経歴、年齢、家系図、年収、うんざりだった。


「どうしても選ばなきゃいけないの?」


 部屋に来ていた兄に愚痴る毎日。


「仕方ないだろ、今の世の中じゃ、女性の結婚は義務だ!」


「そーかもしんないけど、どうやって選べばいいのよぉ」


「……なら、いい方法がある」


 そう言って教えてくれたのが『10個のプレゼント』だった。私は早速全国に呼び掛けた。


「私が欲しければ10個のプレゼントを用意しなさい。その内ひとつでも私が気に入れば結婚してあげるわ!」


 この発言はすぐに速報でも流れ、緊急警報まで鳴り出した。反応も凄かった。日本全国から我先にと10個のプレゼントを紹介し始め、それ専用の番組まで作られて盛り上がった。

『お金』『ビル』『温泉』『豪邸』

 ありとあらゆる高級品から、

『まごころ』『愛』『よつ葉のクローバー』

 と、素朴でほっこりするものまで。

 でも、私の欲しいものはない。


 そして何日か過ぎたある日、兄の友達だと言う青年が現れた。


「私のプレゼント、それは…………」





 私は彼と結婚した。

 彼の用意したプレゼントは今、私と腕をくんで笑っている。

『妹』『友達』『家族』『姉』『兄弟』『姉妹』『親戚』『親友』『幸せ』

 全てが当てはまるもの。

 彼の妹は私の妹になり、友達になり、そして親友となった。そしてその後姉にも。

 ふふ。これ、兄が仕組んだこと。

 兄は私の唯一の理解者。

 私は昔から「友達が欲しい」と言っていた。

 兄は私の願いを叶えつつ、ちゃっかり自分のお嫁さんまでゲットしてしまったのだ。
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