化けてやる!2
文字数 1,975文字
待ち合わせ
待ち合わせは10時、で、今は9時半。
俺は駅の東口階段を降りた所で栄太郎を待っている。一応従姉妹は電車に乗ってくる設定だから、栄太郎よりも早く待ち合わせ場所についていなければならなかった。
「よし、栄太郎よりも早くついた。だから、もう来てくれてもいいんだけどな~」
今日は日曜日、駅前は結構人がいる。知り合いには会いたくないから、ツバの大きな麦わら帽子を深めにかぶってきた。それなのにやたらと声をかけられる。「お茶飲みに行かない?」とか「喉渇かない?」とか、そんなに喉が渇いているように見えるのだろうか。それとも熱中症予防の一環なのか。みんなで声を掛け合おう、みたいな。とにかく栄太郎に会うまではそっとしておいて欲しい。
白いレースのワンピースが風になびく、スカートとはずいぶんと涼しいものなんだな。涼しい原因は他にもあるけど。
衣装担当の萌花さんに無理矢理……
あーーーーーーーーーーーーーーー!!
遡ること2時間前────
「ん? んー?」
「え、萌花さん、どうしたんすか?」
「みんなストップ、健二くんをお風呂に入れるわよ」
「「いいっすね!」」
小夜さんとタマさんは理由も聞かずに合意した。なぜ? ちょっとそこは疑問に思ってよ!
俺は引きずられながら風呂場へと連行された。
「え、え、え、ちょっと待って、ああああ!」
途中、憐れみの目の兄貴とすれ違う。
「健二ガンバ!」
「あ、あ、あ、兄貴! 兄貴いぃぃぃ!!」
かろうじてパンツだけは守り抜いたが、それ以外は全部ひん剥かれた。手足には除毛クリーム、ああ、排水溝に流れてゆく俺の友達……
「そして、これ! 健二くん嗅いでみて」
くんくん
甘いフローラル系の……
「ボディソープ♡」
萌花さんニンマリ、笑顔が怖い!
「まさか、あ、あ、ああああああーーー!!」
見られた、洗われた、遊ばれた。そして俺の下着は今、女性用下着 である。
あー、心も体もスースーするぅ。
その後メイクやら小物やらをつけたけど、絶対に鏡を見せてくれない。兄貴も部屋から追い出されてたし、女性陣は『可愛い』しか言わない。何を見ても可愛いという3人、本心なのかイマイチわからん。
「幸一、入っていいよ」
「どれどれ、俺様の可愛い弟はどうなったか……な……」
兄貴、笑いながらドアを開けて、そのまま動きも表情も止まった。
「なんだよ、おい、おかしいか?」
「健二……けんじぃぃぃぃいいいぃぃぃ♡」
手を大きく広げ、駆け寄る兄貴を3人の鉄拳が止めた。轟音と共に床に押さえ込まれる兄。
「何するんだよ、1時間ぶりの兄弟再会ハグを邪魔するなよ」
「幸一、健二くんはあたしらの最高傑作なんだからお触り禁止だよ」
「ちぇーっ、健二ぃ、触れないならせめて、お兄ちゃんって言って~♡」
え、俺どうなってるの? 顔は笑ってないようだから女に見えるんだよな。元々兄貴はブラコン気味だけど、そんなお願いされたことないぞ。俺、自信もっていいのかな?
どれ、試しに……
「お、おにいちゃん」
はにかみながらの上目使い。どうだ?
「「「「うおおおおお、ありがとうございますぅぅ」」」」
兄貴だけじゃなく、小夜さん、タマさん、萌花さんも悶えてる。
ナニコレ、ちょっと楽しいかも♪
そして現在、
4人から褒められてちょっと気分がいい。今なら栄太郎を騙すことも簡単だろう。そんな気がする。栄太郎、早く来ないかな。
「あの、君、北川景 さん?」
この声は栄太郎! そう、あらかじめ従姉妹の名前は北川景と言ってあるのだ。俺は振り返り、返事をしながら栄太郎を見上げた。
半笑いだった栄太郎の顔がひきつり、一歩引いて止まってる。え、何この反応。バレて引かれてる? いやいや、だって4人からこれならバレないって言われたよ。ええい、迷うな! なりきろう北川景に!
「あ、あの……どうしました?」
「あ、ちょっと待って、今触らないで無理無理……」
栄太郎、左手で顔を隠して後ろを向く、そして右手でシッシッ? 何このシッシッ。
人間、無理と言われるとやりたくなるのはナゼだろう。思わず顔がニヤけた。
「気分でも悪いのですか? どうしました? お背中さすりましょうか?」
こんなに動揺してうろたえた栄太郎は初めてだ。楽しい! 面白い! もっとやろう。栄太郎、手が邪魔で顔が見えない。でも、確実に耳が赤い! ええい、この身長差がなければ覗き込めるのに。もどかしい、俺は栄太郎の腕を掴んで、もう一方の手で栄太郎の顔に触れた。
「ほら、やっぱり、熱っぽい……」
一瞬だった。
真っ赤になった栄太郎の顔が見えて、気付いたら抱き締められてた⁉️
「俺と、俺とつきあってくれ! 健二が好きだ」
告白された。
しかも、バレてるーーーーーーー!!!
こうして新しい関係がスタートしたのであった。
おしまい
待ち合わせは10時、で、今は9時半。
俺は駅の東口階段を降りた所で栄太郎を待っている。一応従姉妹は電車に乗ってくる設定だから、栄太郎よりも早く待ち合わせ場所についていなければならなかった。
「よし、栄太郎よりも早くついた。だから、もう来てくれてもいいんだけどな~」
今日は日曜日、駅前は結構人がいる。知り合いには会いたくないから、ツバの大きな麦わら帽子を深めにかぶってきた。それなのにやたらと声をかけられる。「お茶飲みに行かない?」とか「喉渇かない?」とか、そんなに喉が渇いているように見えるのだろうか。それとも熱中症予防の一環なのか。みんなで声を掛け合おう、みたいな。とにかく栄太郎に会うまではそっとしておいて欲しい。
白いレースのワンピースが風になびく、スカートとはずいぶんと涼しいものなんだな。涼しい原因は他にもあるけど。
衣装担当の萌花さんに無理矢理……
あーーーーーーーーーーーーーーー!!
遡ること2時間前────
「ん? んー?」
「え、萌花さん、どうしたんすか?」
「みんなストップ、健二くんをお風呂に入れるわよ」
「「いいっすね!」」
小夜さんとタマさんは理由も聞かずに合意した。なぜ? ちょっとそこは疑問に思ってよ!
俺は引きずられながら風呂場へと連行された。
「え、え、え、ちょっと待って、ああああ!」
途中、憐れみの目の兄貴とすれ違う。
「健二ガンバ!」
「あ、あ、あ、兄貴! 兄貴いぃぃぃ!!」
かろうじてパンツだけは守り抜いたが、それ以外は全部ひん剥かれた。手足には除毛クリーム、ああ、排水溝に流れてゆく俺の友達……
「そして、これ! 健二くん嗅いでみて」
くんくん
甘いフローラル系の……
「ボディソープ♡」
萌花さんニンマリ、笑顔が怖い!
「まさか、あ、あ、ああああああーーー!!」
見られた、洗われた、遊ばれた。そして俺の下着は今、
あー、心も体もスースーするぅ。
その後メイクやら小物やらをつけたけど、絶対に鏡を見せてくれない。兄貴も部屋から追い出されてたし、女性陣は『可愛い』しか言わない。何を見ても可愛いという3人、本心なのかイマイチわからん。
「幸一、入っていいよ」
「どれどれ、俺様の可愛い弟はどうなったか……な……」
兄貴、笑いながらドアを開けて、そのまま動きも表情も止まった。
「なんだよ、おい、おかしいか?」
「健二……けんじぃぃぃぃいいいぃぃぃ♡」
手を大きく広げ、駆け寄る兄貴を3人の鉄拳が止めた。轟音と共に床に押さえ込まれる兄。
「何するんだよ、1時間ぶりの兄弟再会ハグを邪魔するなよ」
「幸一、健二くんはあたしらの最高傑作なんだからお触り禁止だよ」
「ちぇーっ、健二ぃ、触れないならせめて、お兄ちゃんって言って~♡」
え、俺どうなってるの? 顔は笑ってないようだから女に見えるんだよな。元々兄貴はブラコン気味だけど、そんなお願いされたことないぞ。俺、自信もっていいのかな?
どれ、試しに……
「お、おにいちゃん」
はにかみながらの上目使い。どうだ?
「「「「うおおおおお、ありがとうございますぅぅ」」」」
兄貴だけじゃなく、小夜さん、タマさん、萌花さんも悶えてる。
ナニコレ、ちょっと楽しいかも♪
そして現在、
4人から褒められてちょっと気分がいい。今なら栄太郎を騙すことも簡単だろう。そんな気がする。栄太郎、早く来ないかな。
「あの、君、
この声は栄太郎! そう、あらかじめ従姉妹の名前は北川景と言ってあるのだ。俺は振り返り、返事をしながら栄太郎を見上げた。
半笑いだった栄太郎の顔がひきつり、一歩引いて止まってる。え、何この反応。バレて引かれてる? いやいや、だって4人からこれならバレないって言われたよ。ええい、迷うな! なりきろう北川景に!
わたしは女優よ
ぉぉぉ!「あ、あの……どうしました?」
「あ、ちょっと待って、今触らないで無理無理……」
栄太郎、左手で顔を隠して後ろを向く、そして右手でシッシッ? 何このシッシッ。
人間、無理と言われるとやりたくなるのはナゼだろう。思わず顔がニヤけた。
「気分でも悪いのですか? どうしました? お背中さすりましょうか?」
こんなに動揺してうろたえた栄太郎は初めてだ。楽しい! 面白い! もっとやろう。栄太郎、手が邪魔で顔が見えない。でも、確実に耳が赤い! ええい、この身長差がなければ覗き込めるのに。もどかしい、俺は栄太郎の腕を掴んで、もう一方の手で栄太郎の顔に触れた。
「ほら、やっぱり、熱っぽい……」
一瞬だった。
真っ赤になった栄太郎の顔が見えて、気付いたら抱き締められてた⁉️
「俺と、俺とつきあってくれ! 健二が好きだ」
告白された。
しかも、バレてるーーーーーーー!!!
こうして新しい関係がスタートしたのであった。
おしまい
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)
(ログインが必要です)