待ち合わせの階段(ミコとあっくん2)
文字数 1,740文字
「母さん、ありがとう。じゃ、帰りよろしく」
「よろしくって、昼に来ればいいの?」
「いや、そのぉ……そのぐらいだと思うけど、反省会とかあるかもしんないから、終わったら連絡するよ」
剣道着を着こんだ五分刈りの青年。適当に言葉を繋ぎながら、後部座席の防具袋をたすき掛けにし、竹刀袋を肩に掛けた。
「じゃ、行ってきます」
「……まったく、武道館だとこれだもんね。篤紀 のお目当ては反省会じゃないだろうが……」
母親は呆れた口調でそう言うと車に乗り込んだ。
* * *
「篤紀!おはよ」
「ん、あぁ、おはよう」
篤紀と同じ高校名が入った道着の青年が声をかけた。駐車場から武道館へと向かう交差点、車が1台去ってまた1台、なかなか渡れない。足踏みをし、交差点にイラつきを隠せない篤紀。
「どうした?腹でも痛いのか?荷物持つか?」
「いや、悪いな光幸 、大丈夫だ。ちょっと急いでるだけだから気にしないでくれ……」
そう言い終わるや否や、篤紀は車の途切れた交差点を走った。
「あ、おい、篤紀?」
篤紀の姿は既に武道館の敷地内へと消えた。
篤紀は迷わず真正面の武道館を目指した。大きく反り返えり重厚感を感じさせる武道館の屋根と20段を越える石段が篤紀を出迎える。その石段の先に武道館の入り口がある。しかし、篤紀の目的は入り口ではない。石段の中腹にある踊場であった。遠目でもわかる小さな人影。篤紀はそれに向かって全速力で走った。
防具を担いでの一段飛ばしはキツイ!しかし、1秒でも早くその場に着きたい。早く会いたい、俺の天使に!
「あっくん!おはよー」
踊り場からミコが顔を出した。肩まで延びたサラサラの黒髪、落ちそうなくらい大きな瞳。透明感のある白い肌、鈴を転がしたような声、ああ、ミコーーーーー!!
階段下を覗き込むミコは今日も最高に可愛い!!
「そんなに走って大丈夫?」
ミコは小学2年生の俺の従妹だ。家も近所で生まれた時からよく知っている。目に入れても痛くないほど可愛い!でも、気持ち悪いだろ?8個も上の従兄が小2にメロメロなんて。だからなるべくミコの前では普通を装っている。あー、でも嬉しい、武道館で練習試合がある時だけは、叔父さん(高校剣道部顧問)ミコを連れてきてくれるんだよな~。
「いつも鍛えてるからな、こんなの平気」
そうは言ったけど、実は息切れを誤魔化すのがやっと。ミコの前で息切れなんか出来るか!年寄りだとは思われたくないからな。俺は景色を見るふりをして、静かに大量の空気を吸い込んだ。
「叔父さんは?」
「もう中入ってるよ。ミコはあっくんに会いたかったから、待ってた。ここね、あっくんが来るとすぐに見えていいんだよ」
知ってるよ。いつもここで待っててくれるの。ここは俺達の待ち合わせ場所だもんな♡なんて言ったら引かれるだろう。これは絶対に言えない。
下から人の声がする、光幸と3人のおまけが階段下にたどり着いていた。
「あ、篤紀いたー!何なんだよ先に行きやがって……」
光幸、二段飛ばしで直ぐに目の前にやってきた。息が切れていない。ちょっとジェラシー。
「あれ?この子もしかして、関屋先生の娘さん?」
「あ、あぁ。従妹のミコだ」
光幸の登場にちょっと臆したミコは、俺の後ろにピタリとくっついた。光幸に感謝だな!
「ミコ、お兄ちゃんに挨拶は?」
「こんにちは……」
俺の袴を掴みながらオズオズと前に出るミコ。最高です!!
「ミコちゃん、こんにちは!お兄ちゃんは光幸って言うんだ、よろしくね。ミコちゃん可愛いなぁ」
そう言って光幸はミコの頭を撫でた。
触れてはいけない逆鱗にお前は触れた。
ドサッ!
ガンッ!
俺は防具と竹刀の袋をその場に置いて、ミコを抱き上げた。
「へ?篤紀これは?」
「光幸が持っていけ、ミコに触れた罰だ」
「え?何で罰なんだよー、おいー」
ミコは俺が守る。いつかミコに好きな人が出来るまで俺が絶対に悪い虫から守るからな!
立ち去る篤紀の肩越しに嬉しそうなミコの顔。石段を上がりながら、思わずミコは叫んだ。
「光幸お兄ちゃん、ありがとう!」
「ミコ!光幸にお礼なんかいりません!」
「……ミコちゃん、可愛いなぁ」
踊り場に残された荷物持ち光幸と3人のおまけ。篤紀の気持ちとは裏腹に、ミコのファンは増えたのであった。
「よろしくって、昼に来ればいいの?」
「いや、そのぉ……そのぐらいだと思うけど、反省会とかあるかもしんないから、終わったら連絡するよ」
剣道着を着こんだ五分刈りの青年。適当に言葉を繋ぎながら、後部座席の防具袋をたすき掛けにし、竹刀袋を肩に掛けた。
「じゃ、行ってきます」
「……まったく、武道館だとこれだもんね。
母親は呆れた口調でそう言うと車に乗り込んだ。
* * *
「篤紀!おはよ」
「ん、あぁ、おはよう」
篤紀と同じ高校名が入った道着の青年が声をかけた。駐車場から武道館へと向かう交差点、車が1台去ってまた1台、なかなか渡れない。足踏みをし、交差点にイラつきを隠せない篤紀。
「どうした?腹でも痛いのか?荷物持つか?」
「いや、悪いな
そう言い終わるや否や、篤紀は車の途切れた交差点を走った。
「あ、おい、篤紀?」
篤紀の姿は既に武道館の敷地内へと消えた。
篤紀は迷わず真正面の武道館を目指した。大きく反り返えり重厚感を感じさせる武道館の屋根と20段を越える石段が篤紀を出迎える。その石段の先に武道館の入り口がある。しかし、篤紀の目的は入り口ではない。石段の中腹にある踊場であった。遠目でもわかる小さな人影。篤紀はそれに向かって全速力で走った。
防具を担いでの一段飛ばしはキツイ!しかし、1秒でも早くその場に着きたい。早く会いたい、俺の天使に!
「あっくん!おはよー」
踊り場からミコが顔を出した。肩まで延びたサラサラの黒髪、落ちそうなくらい大きな瞳。透明感のある白い肌、鈴を転がしたような声、ああ、ミコーーーーー!!
階段下を覗き込むミコは今日も最高に可愛い!!
「そんなに走って大丈夫?」
ミコは小学2年生の俺の従妹だ。家も近所で生まれた時からよく知っている。目に入れても痛くないほど可愛い!でも、気持ち悪いだろ?8個も上の従兄が小2にメロメロなんて。だからなるべくミコの前では普通を装っている。あー、でも嬉しい、武道館で練習試合がある時だけは、叔父さん(高校剣道部顧問)ミコを連れてきてくれるんだよな~。
「いつも鍛えてるからな、こんなの平気」
そうは言ったけど、実は息切れを誤魔化すのがやっと。ミコの前で息切れなんか出来るか!年寄りだとは思われたくないからな。俺は景色を見るふりをして、静かに大量の空気を吸い込んだ。
「叔父さんは?」
「もう中入ってるよ。ミコはあっくんに会いたかったから、待ってた。ここね、あっくんが来るとすぐに見えていいんだよ」
知ってるよ。いつもここで待っててくれるの。ここは俺達の待ち合わせ場所だもんな♡なんて言ったら引かれるだろう。これは絶対に言えない。
下から人の声がする、光幸と3人のおまけが階段下にたどり着いていた。
「あ、篤紀いたー!何なんだよ先に行きやがって……」
光幸、二段飛ばしで直ぐに目の前にやってきた。息が切れていない。ちょっとジェラシー。
「あれ?この子もしかして、関屋先生の娘さん?」
「あ、あぁ。従妹のミコだ」
光幸の登場にちょっと臆したミコは、俺の後ろにピタリとくっついた。光幸に感謝だな!
「ミコ、お兄ちゃんに挨拶は?」
「こんにちは……」
俺の袴を掴みながらオズオズと前に出るミコ。最高です!!
「ミコちゃん、こんにちは!お兄ちゃんは光幸って言うんだ、よろしくね。ミコちゃん可愛いなぁ」
そう言って光幸はミコの頭を撫でた。
触れてはいけない逆鱗にお前は触れた。
ドサッ!
ガンッ!
俺は防具と竹刀の袋をその場に置いて、ミコを抱き上げた。
「へ?篤紀これは?」
「光幸が持っていけ、ミコに触れた罰だ」
「え?何で罰なんだよー、おいー」
ミコは俺が守る。いつかミコに好きな人が出来るまで俺が絶対に悪い虫から守るからな!
立ち去る篤紀の肩越しに嬉しそうなミコの顔。石段を上がりながら、思わずミコは叫んだ。
「光幸お兄ちゃん、ありがとう!」
「ミコ!光幸にお礼なんかいりません!」
「……ミコちゃん、可愛いなぁ」
踊り場に残された荷物持ち光幸と3人のおまけ。篤紀の気持ちとは裏腹に、ミコのファンは増えたのであった。
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