恋する山田と無自覚タラシの高橋さん6

文字数 466文字

 忘れ物

 山田はよく忘れ物をする。
 隣の席なので必然的に私が対応するのだが、

「インチョー、消しゴム貸して」

「シャー芯貸して」

「宿題見せて」

「お弁当のおかず分けて」

 意外と図々しい。

 なのになぜか教科書となると遠慮をする。席をくっ付け真ん中に置いてもあまり見ようとしない。

『もっと近づけ』

 ジェスチャーで伝えても手をふり愛想笑い。人の物を借りておいて見ないとは何事か。山田の椅子を引き寄せた。教室に擦れる音が響く。

『あ! いい、いい!』

 山田慌てて席を戻し手と首をふる。反応が小動物のようで面白い。あまりに逃げるので楽しくなってきた。山田の肩に腕を回し、自席に引き寄せホールド!! これなら逃げられまい。
 山田必死に腕を外そうとする。外れるわけがなかろう。仕留めたり!←すでに狩猟本能

 しばらくすると大人しくなった。ほどけないとあきらめたか。少しふるえているようだ……もしかして泣かせた?
 山田の長い前髪で表情がわからない。そっと髪をかき分け山田の顔を覗き込む。髪に触れ驚く山田、震えながら潤んだ瞳で見上げてくる。


 やば、ハムスター♡
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