『恋日記』

文字数 1,032文字

 日記

 ある朝目覚めると、私は一冊の本を抱いていた。それは寝る前に読んでいたものではなく、初めて見るもの。

 『恋日記』と書かれたそれは淡い桃色の文庫本?一緒に寝ていたにもかかわらず、パッと見折れや汚れは無い。中は?と数ページめくってみても何ともない。というかなんにも書かれていない、真っ白な本だった。

「ノート?メモ帳?……記憶は無いけど私の部屋にあって、私が持っているのだから、私のだよね」

 私は深くは考えないO型だ。これは大事に使わせてもらおう。

 折角『恋日記』とあるのだから私の恋を書いていこう!と思うのだが、あいにく私の恋は半年間片想い中。書くことといったら待ち伏せして挨拶したり、放課後彼の机にすりすりしたり、休日の行動を覗き見する程度のもの。そんなストーカー紛いの物的証拠は残せない。そんな物残して私に何かあったら親が泣く。

 『恋日記』の紙面を見てしばし考えた。書くことが無いなら、いっそのこと妄想で書いてしまえ。それなら楽しい夢恋日記だ。

 四月六日
 始業式、今日から高校二年生。私と彼は同じクラスになりました。休み時間、私達は廊下ですれちがいます。その時彼が、放課後駐輪場で待ってると耳元でささやくのでした。そして放課後、私達は駐輪場で待ち合わせをして一緒に帰ります。その別れ際、私は彼から告白をされちゃうんですぅぅ~。

 書いてて赤面する。でも、めっちゃくちゃ楽しい。明日は始業式、この日記を思い出してにやけないようにしなくっちゃ。

* * *

「一年の時から気になってた。もし良かったら俺と付き合って欲しい」

 次の日、私は彼から告白された。その日の彼は、日記の通りの行動だった。

* * *

 俺は本を抱いたまま寝ていた。水色の『恋日記』と書かれたものだ。中身は白紙。

 ところがしばらくすると、真っ白な紙面に文字が浮かび上がってきた。

 四月六日
 始業式、今日から俺は高校二年生。今日こそは片想いの彼女に告白する。なんとかして放課後駐輪場で待ち合わせをする。そして一緒に帰って、別れ際に告白だ!これは絶対にうまくいく!

「これは……?」

 とりあえず、俺は何でも信じてしまうオカルト大好きなO型。よし、信じよう。

 そして今に至る。

 『恋日記』の通りに告白はうまくいった。しかし、その『恋日記』、家のどこを探しても無かった。あれは一体何だったのだろう?まぁいい、あまり深く考えないのがO型だ。



 恋するもの同士に現れるという『恋日記』信じるか信じないかはあなた次第……
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