恋する山田と無自覚タラシの高橋さん2

文字数 878文字

 策士策に溺れる

────オレは山田、元陰キャ。

 中学時代のオレは、
 『真面目』『頑な』『融通が利かない』
 そんな自分をリセットする為、高校(ここ)に来た。知り合いがいない田舎の学校。全ては陽キャになるために。

 『真面目さ』が功を奏し、髪型、服装、流行、しゃべり方、間の取り方まで研究。3ヶ月目の現在、自他ともに認める『リア充』の完成。
 そう、オレは幸せ……
 ──────────でもなかった。



 気にくわないヤツがいる。

 『高橋いのり』

 真面目を素でいく学級委員。ついたアダナは『インチョー』。実はオレがつけた。こいつは中学時代の自分を彷彿とさせるからだ。

 『同族嫌悪』

 腹が立つ。だから中学時代嫌だったアダナをつけた。オレはずっと『生活インチョー』と呼ばれていた。

「インチョーではない、委員長だ!」

 何度注意しても、笑って「インチョー」と言うアホな奴等。だから高橋も同じ目にと思った。しかしアダナを嫌がる素振りがない。まさか気に入っている? 

 高橋の真面目キャラ、崩してみたい。あいつの慌てふためく姿を見たら、きっとこのモヤモヤした気分が晴れるはずだ。



 そう思い続けたある日、チャンスは訪れた。
 黒板にある日直の名前、そこにユージが相合い傘を書き込んだのだ。

『山田△高橋』
 
 ユージ、やることはガキだがよくやった。あの鉄仮面女、どんな反応を見せるか見物だ。

 あいつ、黒板消しに手をかけた。
 おいおい、ただ消されてはつまらないぞ。

「インチョー、消しちゃうの?」

 あいつは振り向きオレを睨んだ。ここで顔を真っ赤にして泣くなら助けてやっても……

「ちがうよ」

 そう言って、あいつは赤いチョークで相合い傘にハートを乗せた。見事な一筆書。
 !! 
 なんだよそれ……
 なんだよそれーーーーーー!!!

 心臓が跳ね上がり動悸が激しい、変な汗が流れる。しかもその時のチョークの音が耳から離れない。リプレイされるアイツのすました顔、流れるように淡々と次の準備をする姿も。
 なんでだよ! 何なんだよ!!







 ────────あれから、
 なぜかあいつが目に入る。
 もといあいつしか目に入らない。

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