恋する山田と無自覚タラシの高橋さん3
文字数 768文字
眼鏡(インチョー)
移動教室の途中で右目に痛みを感じた。
「痛っ」
刺すような痛み……これは、おそらくまつ毛。
眼鏡を外し、まばたきをしながら軽くこする。やはりヤツが指に付いた。その後痛みはない。良かった、これなら目を洗う必要はないな。
授業の時間が迫っていて、今の私に余裕はなかった。手洗い場に寄れば授業に遅れる。移動教室は東校舎の3階端。担当教師はゴリラ磯崎。遅れればネチネチイヤミをひと月は言われる。それだけは絶対に避けたかった。
眼鏡をしなくても前方に人がいるのはわかる。そしてそれは進行を妨げ、あろうことか私の顔を覗き込んできた。
「あれ? インチョー眼鏡取ってる。ちょっと見せて、もっとよく見せてよ♡」
この声は山田だ。タイミングが悪かった。最近なぜか山田に絡まれる。別に悪さをするわけでは無いが、ちょっとしつこい。
「いや、ちょっと目にゴミが入っただけで、もう取れたし……」
言いながら眼鏡をかけると、眼鏡が消えた。
「だーかーらー、眼鏡取った顔見せて♡って言ったの~」
出~た~な~、山田のおねだり星人。
シ・ツ・コ・イ・ン・ダ・ヨ!
次の瞬間、私の持ち物は宙を舞った。
眼鏡を取り上げたであろう奴の右の手を左手で掴み自分の方へと引き寄せ、その勢いのまま山田を教室側の壁へと押し込んだ。隙あらば逃げようとする山田の顔スレスレを右手で壁どん、威嚇完了、確保。
「逃がさないよ」
「……か、返す、返すから暴力反対!!」
「暴力? 顔見せろと言ったのは山田じゃないか、ほら、たんまりと見るがいい」
眼鏡を持つ山田の右手が左右に揺れている。まるで白旗のように。その様子が少し可笑しくて私は右手を壁から離し山田を解放した。
無事眼鏡を回収したが、レンズが指紋で見えやしない。結局手洗い場に寄ることになった。
授業に遅れたことは言うまでもない。
移動教室の途中で右目に痛みを感じた。
「痛っ」
刺すような痛み……これは、おそらくまつ毛。
眼鏡を外し、まばたきをしながら軽くこする。やはりヤツが指に付いた。その後痛みはない。良かった、これなら目を洗う必要はないな。
授業の時間が迫っていて、今の私に余裕はなかった。手洗い場に寄れば授業に遅れる。移動教室は東校舎の3階端。担当教師はゴリラ磯崎。遅れればネチネチイヤミをひと月は言われる。それだけは絶対に避けたかった。
眼鏡をしなくても前方に人がいるのはわかる。そしてそれは進行を妨げ、あろうことか私の顔を覗き込んできた。
「あれ? インチョー眼鏡取ってる。ちょっと見せて、もっとよく見せてよ♡」
この声は山田だ。タイミングが悪かった。最近なぜか山田に絡まれる。別に悪さをするわけでは無いが、ちょっとしつこい。
「いや、ちょっと目にゴミが入っただけで、もう取れたし……」
言いながら眼鏡をかけると、眼鏡が消えた。
「だーかーらー、眼鏡取った顔見せて♡って言ったの~」
出~た~な~、山田のおねだり星人。
シ・ツ・コ・イ・ン・ダ・ヨ!
次の瞬間、私の持ち物は宙を舞った。
眼鏡を取り上げたであろう奴の右の手を左手で掴み自分の方へと引き寄せ、その勢いのまま山田を教室側の壁へと押し込んだ。隙あらば逃げようとする山田の顔スレスレを右手で壁どん、威嚇完了、確保。
「逃がさないよ」
「……か、返す、返すから暴力反対!!」
「暴力? 顔見せろと言ったのは山田じゃないか、ほら、たんまりと見るがいい」
眼鏡を持つ山田の右手が左右に揺れている。まるで白旗のように。その様子が少し可笑しくて私は右手を壁から離し山田を解放した。
無事眼鏡を回収したが、レンズが指紋で見えやしない。結局手洗い場に寄ることになった。
授業に遅れたことは言うまでもない。
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