第25話 ダビデ王の騎士団 KOK

文字数 1,028文字

 すえた獣の匂いが部屋の外へも漏れ出すようになった頃。
 ようやく、待ち望んでいた一団が、朝日と共に到来した。
 三台の車。ダビデ王の騎士団、KOKだ。
 門から庭へと入り、次々と車から降りてくる。
 先頭は、二十代に見えるアジア人女性だ。やけに化粧が濃い。
 以降、黒人、白人、黄色人種と、多種多様な男性が続く。全部で六人の団体だ。
 ベッドの上から騎士団の姿を確認したゲーテは、急いで背広に着替え、銀マントを羽織った。
 巨体のゲーテに力任せに何日間も抱かれ続けたクリスティアーネは、心身ともに憔悴し、死んだように眠っている。
ーー俺は再び出世する。彼女のために。
 ゲーテはクリスティアーネの寝顔にキスをし、研究所の入口まで出迎えに行った。
「お待ちしておりました。第一研究所所長のゲーテです。どうぞ、お入りください」
 中国風の黄色い道着を着た若い女性は、ぶっきらぼうにスマートフォンを突き出した。
「平気じゃ。私はKOK五番隊隊長、リンリン。ここにオーラをたもれ」若く見えるのに、どこか威厳を感じる。ゲーテのように作られた威厳ではない。強さに裏打ちされた余裕からなるものだ。
ーーPカード。本物のKOKだ。
 ゲーテは一目で分かった。
 Pカードとは、KOKが所持している身分証のようなものだ。幹部の口伝で聞いたことがある。他にも様々な機能を持っているらしいが、GRCで所持している錬金術師はいないので、詳細は分からない。
 Pカードの画面には、契約書が映し出されている。文章は簡潔だ。
ーーうん。間違いない。
 ゲーテはスマートフォンに手を当て、オーラを出した。これが依頼者本人だという証拠となる。
 契約が結ばれた。
 リンリンは確認後、大きくうなづいた。
「オッケーじゃ。時間がない。すぐに行こう。話は車の中で聞く」リンリンは、ツインお団子ヘアを揺らしながら、一生懸命、自分の肩掛けカバンにPカードを戻した。
「車ではなく、馬車でしか行けない場所なのですが」ゲーテが説明する。
 KOKの何人かは、嫌な顔をした。だが、お面をつけた黒髪の青年だけは、少年ぽい声を輝かせた。
「やったー。俺、馬車好きなんだー」
「カトゥー。はしゃぎすぎだ」嗜めるのは、フクロウのマスクを被った男だ。英語の発音からすると、少しだけ年長のアジア人らしい。こちらはブリーチで色を抜き、金髪にしている。
「でもさあ。ヤマナカ。馬車だぜ、馬車」
 ゲーテは、このカトゥーという男の無邪気さが、なぜかニーチェとダブって見えた。
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登場人物紹介

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

APC 187cm90kg 赤マント

主人公。正義感溢れる好漢。うちに秘めたる野心の塊。研究者として入団したが、錬金術師としての腕前はCランク止まり。武芸に優れている。体格が良く、人から愛され、尊敬される性格。人身掌握がうまいので、幹部候補生になる。クリスティアーネのことが好き。ニーチェのことを親友だと思っているが、嫉妬心も抱いている。

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ

ADB 179cm 60kg 赤マント

黄金薔薇十字団に買われた捨て子。CRC団長のお気に入り。純真。研究家気質。真理を探究している。ストレスはうちに秘めるタイプ。騙されることが大嫌い。ゲーテだけを親友だと思っている。同期のクリスティアーネに好かれているが、興味ない。

カミーラ

155cm 40kg 吸血鬼と呼ばれる美女。気付いたらリアルにいたタイプ。はぐれアルカディアン。古城に住み着く。

幻想を見させることができるが下手くそ。

顔も体も大人っぽいが、背だけが低い。コンプレックス。いつも13cmのヒールを履いている。

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