第5話 経緯
文字数 1,243文字
今回の女吸血鬼捕獲作戦は、失敗が許されない依頼だった。けれども同時に、大きな出世の糸口になる。
どうしても出世したいゲーテは、どんなに不思議な出来事が起こるとしても、絶対に達成させるというやる気と自信があった。そして同時に、もし失敗しても、全ての幹部を言いくるめられる自信もあった。
依頼を正式に受諾して、幹部会から戻る。
もちろん、ニーチェは今日も実験中だ。ゲーテはクリスティアーネに「ニーチェが休憩する時に、会議室に来るよう伝えてくれ」と頼んだ。後は会議室で一人、作戦を考え続ける。
四時間後、ニーチェはようやくやって来た。サンドイッチを食べている。忙しそうだ。
クリスティアーネも同席しようとしていたが、「錬金術師同士の話だ」と言って席を外させる。同期なので、左遷させられないように自分の秘書にしたが、彼女は噂話が好きすぎる。大事な場には置いておけない。
ゲーテはニーチェに、ことの経緯を説明した。
ニーチェは肩をすくめた。
「それは、本当に彼の城なのかい? 祖先の霊だ掃除だというのなら、事前に調査会社を入れればいい。夜じゃなくて昼に行けばいい。僕の予想では、ただの貴族のお戯れに過ぎないね。まだ実験したいんだ。行っていいかい?」おためごかしが嫌いなニーチェは、冷ややかに言い放った。
「まぁ待てよ。話はこれからなんだ」ゲーテは、その後に起きた不可思議な出来事についても話した。ゲーテは錬金術に秀でていない分、話術に優れている。どう話せばニーチェが食いつくかをよく勉強している。
初めは興味のなさそうだったニーチェ。だが、その目が色づいていく。彼の好きなファンタジー、Fやアルカディアンの話をふんだんに織り交ぜたからだ。
「……という訳だ。協力してくれないか?」
「面白そうだな。行ってみるのも悪くない」
こうして、部屋の外で聞き耳を立てていたクリティアーネも同伴し、第一研究所の中から約二十人で隊を組み、今回の依頼に挑むことになった。
現場に到着すると、すぐにニーチェが辺りを散策した。残された跡から現実を知ることができるようだ。
ニーチェはたっぷり三日をかけ、古城には何かが潜んでいることを突き止めた。そしてやはり、ジュゼッペは、ただ、ここを空き城と勘違いし、女と遊び仲間たちを連れて入っただけのようだった。
こうして一通り分析したニーチェは、女吸血鬼と対峙すべく、古城の中へと説得に行っていたのだ。
「やったな」
ゲーテとニーチェは見つめ合い、ハイタッチをした。
「彼女はカミーラという。丁重に扱ってくれ」ニーチェは、カミーラを前に誘導した。ゲーテはうなづき、団員に声をかける。
「客人として、第一研究所までご案内しろ」
ニーチェはその言葉を聞き、初めて本当の笑顔を見せた。
カミーラは喋らない。ただ、不安そうな顔をしながら、ニーチェを見つめている。
「大丈夫だよ。ゲーテは僕の、唯一信頼できる友達なんだ」
ニーチェは、馬車に乗せられるカミーラに対し、優しい笑みと言葉を投げかけていた。
どうしても出世したいゲーテは、どんなに不思議な出来事が起こるとしても、絶対に達成させるというやる気と自信があった。そして同時に、もし失敗しても、全ての幹部を言いくるめられる自信もあった。
依頼を正式に受諾して、幹部会から戻る。
もちろん、ニーチェは今日も実験中だ。ゲーテはクリスティアーネに「ニーチェが休憩する時に、会議室に来るよう伝えてくれ」と頼んだ。後は会議室で一人、作戦を考え続ける。
四時間後、ニーチェはようやくやって来た。サンドイッチを食べている。忙しそうだ。
クリスティアーネも同席しようとしていたが、「錬金術師同士の話だ」と言って席を外させる。同期なので、左遷させられないように自分の秘書にしたが、彼女は噂話が好きすぎる。大事な場には置いておけない。
ゲーテはニーチェに、ことの経緯を説明した。
ニーチェは肩をすくめた。
「それは、本当に彼の城なのかい? 祖先の霊だ掃除だというのなら、事前に調査会社を入れればいい。夜じゃなくて昼に行けばいい。僕の予想では、ただの貴族のお戯れに過ぎないね。まだ実験したいんだ。行っていいかい?」おためごかしが嫌いなニーチェは、冷ややかに言い放った。
「まぁ待てよ。話はこれからなんだ」ゲーテは、その後に起きた不可思議な出来事についても話した。ゲーテは錬金術に秀でていない分、話術に優れている。どう話せばニーチェが食いつくかをよく勉強している。
初めは興味のなさそうだったニーチェ。だが、その目が色づいていく。彼の好きなファンタジー、Fやアルカディアンの話をふんだんに織り交ぜたからだ。
「……という訳だ。協力してくれないか?」
「面白そうだな。行ってみるのも悪くない」
こうして、部屋の外で聞き耳を立てていたクリティアーネも同伴し、第一研究所の中から約二十人で隊を組み、今回の依頼に挑むことになった。
現場に到着すると、すぐにニーチェが辺りを散策した。残された跡から現実を知ることができるようだ。
ニーチェはたっぷり三日をかけ、古城には何かが潜んでいることを突き止めた。そしてやはり、ジュゼッペは、ただ、ここを空き城と勘違いし、女と遊び仲間たちを連れて入っただけのようだった。
こうして一通り分析したニーチェは、女吸血鬼と対峙すべく、古城の中へと説得に行っていたのだ。
「やったな」
ゲーテとニーチェは見つめ合い、ハイタッチをした。
「彼女はカミーラという。丁重に扱ってくれ」ニーチェは、カミーラを前に誘導した。ゲーテはうなづき、団員に声をかける。
「客人として、第一研究所までご案内しろ」
ニーチェはその言葉を聞き、初めて本当の笑顔を見せた。
カミーラは喋らない。ただ、不安そうな顔をしながら、ニーチェを見つめている。
「大丈夫だよ。ゲーテは僕の、唯一信頼できる友達なんだ」
ニーチェは、馬車に乗せられるカミーラに対し、優しい笑みと言葉を投げかけていた。