第17話

文字数 1,000文字

 ある時結婚をする前に高校時代に私が美術の授業で制作した油絵や立体作品のようなものを彼に見せたら、彼がとってもびっくりしてその作品を褒めてくれた。このことが発端でアートの世界に目覚めた。結婚して何かしら必要なことが多くて区役所に行っていた際にチラシやパンフレットなどがぎっしり収まっている棚に「アーツ千代田3331」のポコラートVol.2の全国公募のチラシを見つけた。私は生まれて初めて今まで自分とは無関係だと思っていたアートの世界に挑戦してみようという気になった。

 ポコラートvol.2の全国公募のテーマは「障害のある×ない人×アーティストが、自由な表現の場を目指してつくる全国公募」だった。ポコラート、アルファベットで書くとPOCORART、擁するに名称で付けたものでplace of “Core +Relation ART”を意味する。重なる部分があるけれど「障害のある人・ない人・アーティストが、核心の部分で相互に影響し合う場」という意味あいらしい。主旨は既成概念にとらわれない純粋な表現力と先鋭なまなざしを抱き、豊かな人間性と新しいアートの領域を感じさせるものの価値を評価して、さらに純粋に作品が持つエネルギーとの??出会いの場?≠?つくりたい、というものらしかった。そして一人五作品まで応募でき、応募料はとらなかった。

 私はとりあえず締め切りの時期が押し迫っていたこともあって自分が十七歳のときの発病前と後の作品を五点選んで、規定に従って応募作品の写真を撮って送った。

 結果、私は五作品応募したうち二作品が入選した。その二作品はひとつは主人が感心してくれたお皿の表面を削って描いた想像画の作品ともうひとつは病気の発症前から後の提出日までに描きあげた高校最後の作品の自画像だった。二〇一一年十二月三日から十二月二十五日までアーツ千代田3331の一階メインギャラリーで展示されることになったのだ。審査員はアートの業界で世界的に注目を浴びている四人だった。代表はご自身がアーティストであり、東京藝術大学准教授でアーツ千代田3331の統括ディレクターを務める中村政人氏だ。審査員のコメントが四人から掲載されたが中村政人氏のコメントにはこう書かれていた。

 「応募作品を審査していくことは、見えざる「純粋性」に露光され、邪心をえぐり取られるような経験であった。大学の入試作品を見ることとは真逆である。
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