第4話

文字数 965文字

一年生で履修した科目で印象に残っているのは体育の授業の「山」だ。「山」では夏に三泊四日で連日登山をすることとその前の一週間は体育館で体育の授業をやる、といったカリキュラムだった。一週間の体育ではバトミントンをやったりしたのを覚えているがあとの記憶はおぼろげで体育館で半袖Tシャツに短パンやジャージ姿の男女の学生が混ざってなんかしら運動をしていた、というイメージだ。

 八月に念願の山に行くことになった。初日は長野県の白馬駅に直接集合だったので前日の夜、体育館での授業で仲良くなったグループの男女九人で夜に法政大学の校門の前で待ち合わせて青春十八切符を利用して電車に乗った。途中で立ち食いそばを食べたりと楽しくふざけていたが朝方きちんと目的場所にたどり着いた。

 「山」の授業で初日に上ったのは白馬岳。白馬岳は北アルプス北部の後立山連峰にある標高二千九百三十二メートルの山だ。長野県と富山県とにまたがっているそうだ。山を登っていくと所々に岩の陰からであったり、石のごろごろした間から高山植物の可愛らしい花が咲いていた。とても珍しく感じ、見ているだけで心がほんわか温かくなる気分だった。

 翌日登ったのは唐松岳。同じく北アルプスの後立山連峰にある標高二千六百九十六メートル山で長野県と富山県に県境に位置する。この唐松岳に登った印象は今まで自分が登山した経験でかなりきつく感じたことである。唐松岳から望んだ山岳のパノラマの風景が何年経った今も懐かしく強く力強い印象がある。

 「山」の授業の最終日に登ったのが白馬山大雪渓だ。いちばん楽な登山ではあったが夏でも雪が残っているため傾斜がきつく苦しい登りはスリップに注意しながらアイゼンという靴底に装着する金属の爪をつけた。アイゼンという言葉はどうも和製登山用語らしく、ドイツ語のシュタイクアイゼンに由来するらしい。まあ、そんなに気になるものではないけれど昔スキーをしに行った時に地元の民宿のおじさんが雪道を足に草履みたいなものを付けて履いて歩いていたような記憶が蘇った。

 そんな三泊四日の「山」だったが毎日八時間くらいは費やした登山の後、私は合宿所のテニスコートで夕方皆があきれる中、体力を持てあましている同士でテニスをやっていた。
一年の終わりに成績が出るけれど私の「山」の成績はもちろんAだった。
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